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バグから始まるVRMMO活動記  作者: 紙紙紙
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第41話

「ぶはは! 見事だ、勇者よ! 約束通り我の事を話してやろう!」


 どういう仕組みなのか体と切り離されてもメフィストの頭部は喋っている。

 若干ホラーだよね……

 そう思いながらメフィストの言葉の続き待つ。


「…………………………」


「…………………………」


 メフィストは口を開いては閉じを繰り返す。どうしたんだろう?


「さっさと話せよ!」


 無言の間に耐えきれなくなった夏樹が突っ込む。


「我としても約束は守りたいのだが、口が開けないのだ! ぶははは!」


 制限が掛けられていたのか、通りでなかなか喋らない訳だ。


「あ……そうですか。じゃあ大丈夫です……」


「お、よいのか? すまぬな、ぶはは!」


 メフィストの笑いを聞いているともうどうでも良くなった。早くリィアを送って行こう。


「夏樹、リィア帰ろう」


「了解ー」


「うん!」


 僕達はクリア時に現れる転移陣に向かって歩き出す。


「待て、勇者よ!」


 すると、頭部がないメフィストの体が僕達を引き留める。

 なんか赤い液体が切断部から流れていた。


「あの、なんか液体が……」


「ん? あ~あ、それは勇者が来る前に飲んでいたトマトジュースだ。勇者が頭部を跳ね飛ばしたおかげで漏れてしまったか、ぶはは!」


 僕はそっとリィアの目を手で覆いグロイシーンを見せないように隠す。


「で、僕達を引き留めてまだ何かあるんですか?」


 メフィストの体は頭部に駆け寄り、持ち上げて首に乗せる。コキコキと首を鳴らしてちゃんとくっついているの確認してからメフィストは振り返る。

 もう何から突っ込めばいいのかわからなくなった僕は全てスルーした。


「我を倒した報酬を渡していないと思ってな」


 メフィストは指をパチンっと鳴らすと金色の宝箱が現れた。

 このゲームで初めて見る宝箱に僕は少しワクワクし手を伸ばす。

 その時、宝箱をみた夏樹が呟く。


「宝箱……しかも、金色……カンスト以降に行けるダンジョンでしか出ないはずじゃ……」


「え、そうなの?」


 開けようとした手が止まる。

 メフィストは夏樹の肩に腕を回す。


「まあ、今は良いではないか」


「馴れ馴れしいわ! てか、なんで倒したのに消滅してないんだよ!」


「それも言えぬのだ、勇者よ!」


「ほとんどじゃねーか! はぁ……もう疲れた。兄貴、中身貰ってもう帰ろう」


「う、うん」


 ぎぃーっと音を立て金色の宝箱を開けると中には金色の文字が刻まれたシルバーのリングとブレスレット、シンプルなデザインのピアスが二つ入っていた。

 メフィストが一つ一つ説明する。


「そのリングはMPを持続回復する効果がある。ブレスレットは回避率が上昇する効果だ。ピアスの方は同じピアスを付けている者の所に転移できる代物だ」


 その説明を聞いて僕はブレスレットとピアス一つを夏樹に渡す。

 僕はリングを右手の人差し指に、ピアスを右耳付ける。

 夏樹は右腕にブレスレットを付け、ピアスは左耳に付けた。


「兄貴、お揃い」


「そうだな」


「お兄さんたち、カッコいい!」 


 リィアが褒めてくれた。少し恥ずかしい。

 僕はリィアの頭を撫でた。


「喜んでくれたか勇者よ! 我はそろそろ帰るとしよう。楽しかったぞ勇者!」


 そう言いメフィストは体を蝙蝠に変え飛んでいく。

 お前の帰る場所ここじゃね?と思ってが口には出さなかった。


「帰ろっか」


「おう!」


 転移陣に乗って僕達はダンジョンの外に出た。

 雲一つない青空の下、僕は大きく伸びをする。新鮮な空気を取り込み村に向けて足を進めた。


「リィアっ!?」


「お母さーんぁぁぁ!」


 村に着くとリィアの母親が入り口近くにいて、母親の姿を見た瞬間リィアは母親のもとまで駆け出した。親娘は抱き合い涙を流し合っていた。

 その時、僕の目の前にウィンドウ画面が現れ、そこには『ランダムクエストクリア!』と記載されていた。報酬は宿屋を半額で泊まれる券とリィア親子の好感度上昇だった。

 夏樹に好感度のことを尋ねると、好感度を一定数上げることで特別なイベントがあるらしい。NPCの数だけあるらしく面倒くさいと時間が掛かるとのことでやっていないそうだ。



「娘を助けて頂きありがとうございました。なんとお礼すれば」

 

 母親が頭を下げお礼を言う。


「いえいえ。これも冒険者の仕事ですし気にしないで下さい。それじゃ僕達はこれで」


 インベントリから転移結晶のアイテムを取り出すとリィアが抱き着いてきた。


「お兄さん、また会える?」


 僕はリィアを頭を撫でながら言う。


「いつになるかは分からないけど僕の方から会いに行くよ。それまでいい子にしているんだよ?」


 僕は小指を出す。


「うん!」


 僕はリィアと指切りをした。その後、親娘と別れ僕と夏樹は街に戻りログアウトする。

 そして久しぶり徹夜したもんだからヘッドギアを外した瞬間、睡魔に襲われ僕はそのまま眠りに就いた。



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