第40話
「さぁ! 死闘の続きと行こうか、勇者よ!」
「だから! 勇者じゃないって!」
僕は反論しながら火球を今度は大量の野球玉サイズにし放つ。
「ほう。面白いことをする勇者だな!」
透明な壁に遮られ火球は届かなかった。
「ふむ。その赤い鳥は……ゴッドクラスの召喚獣か! 流石は勇者だ! ぶははは!」
僕は口を閉ざし睨みつける。
「無言は肯定の証だぞ? 勇者よ」
ニヤリとメフィストは笑う。
その時、隙を見つけて夏樹が切り掛かる。だが、メフィストは夏樹の一撃を真剣白刃取りする。
「その刀……なかなかの業物とみた! 面白い、面白いぞ勇者共!」
メフィストはそのまま夏樹をぶん投げる。夏樹は足から着地して僕の所に戻ってくる。
「さぁ! 勇者共、もっと我を楽しませろ!」
メフィストは複雑なポーズをしている。
「兄貴、あいつすっごいやりづらい!」
「あはは……。そうだ、夏樹。ここのダンジョン以降のダンジョンボスってあんな感じなのか?」
「兄貴、今だから言うけど、今まで見た攻略動画みてもあんなに喋るのはいないから」
そんな会話しているとメフィストは複雑なポーズをしながら尋ねる。
「来ないなら我から行くぞ勇者?」
「待って!」
僕は動き出しそうになるメフィストを止める。
「ん? なんだ勇者? 命乞いか?」
「違う。聞きたいことがあって」
「我にか? 我が素直に言うとでも思っているのか?」
何故喋れるのか解ればよかったのだが、やっぱりだめか。
「普通なら言う気はないが……今の我は気分がいい。一つだけなら答えてやってもいいぞ? ただし、我の事なら我を倒おさないと言わぬぞ?」
目の前から姿が消える。
「まずは一人目」
後ろから声が聞こえ夏樹が吹き飛ばされた。
「夏樹っ!」
「他人を心配する余裕があるのか? 勇者よ」
大きな拳が僕に迫る。
「他人じゃない! 大事な弟だ!」
炎の剣を作り出し拳を防ぐ。続けてスザクも炎の剣を作り出し追撃する。
メフィストは後ろに飛びながら追撃を躱す。
僕は夏樹のHPを見ると三分の一減っていた。一撃重すぎだろう。
「ゴッドクラスの召喚獣は厄介だな、勇者よ!」
吹き飛ばされた夏樹はようやく立ち上がりメフィストに駆け出した。
「兄貴ーー! 俺に魔法を掛けてーー!!」
僕は火属性の付与魔法を掛けた後、攻撃力が上がるファイアーアップに効果は弱くなるがないよりはあった方がいいと思い防御力が上がるストーンアップに、敏捷力が上がるウィンドアップも掛ける。
おかげで僕のMPは四分の三になってしまった。
「サンキュー兄貴! 【剣舞】!」
夏樹はジャイアントマミーを倒した時に使ったスキルを使いメフィストに迫る。
「面白い……! 受けてたとう!!」
夏樹の黒い炎を纏う刀とメフィストの強靭な腕から繰り出される拳の激しい戦いが繰り広げられた。
僕はその隙に消費したMPを直ぐ回復させるために事前に買っていたHMPポーションを使って全回復させる。
夏樹はメフィストの攻撃をギリギリ躱したり、受け流したりしてダメージを最小限にしている一方。メフィストはダメージなんかお構いなく攻撃している。状況的にまだ夏樹の方が優位だが、長期戦になったら不利だな。
そろそろ付与魔法の終了時間になる僕は掛け直した。
その時メフィストがこちらを見た気がした。
「あちらの勇者の方が厄介のようだな。来い、眷属たちよ!」
赤い目のした鼠や蝙蝠、狼が急に現れ僕に向かってくる。
僕は範囲魔法を使って対処するがキリがない。夏樹も疲れてきたのか受けるダメージが多くなる。
その時レベルが上がる音が聞こえた。これでレベル35、あの魔法が使える。
僕はスザクに視線を向ける。
「スザク、行くよ!」
「チュン!」
「フレイムロック!」
スザクと共にレベル35で使える火属性の拘束系魔法フレイムロックを唱えた。すると、地面から大量の炎を纏う鎖が出現し次々とメフィストが召喚した眷属を拘束する。そして、鎖はメフィストの所まで迫り拘束した。
「これで終わりだ!!」
夏樹の刀はメフィストの首を捉え跳ね飛ばしようやくメフィストのHPはゼロになった。
「見事だ、勇者よ……」
跳ね飛ばした首は姿が変わる前に戻り何故か仮面も元通りにだったが清々しい表情をしていた。
メフィストが倒されたことで眷属も消え、盛大なファンファーレが鳴り響いた。




