第39話
「兄貴そろそろ行こうぜ」
「そうだな」
大分休んで疲れが取れた僕と夏樹は立ち上がり、リィアを連れて三階層に向けて足を進める。
そして、三階層に着くなりまた大量の敵モンスターに襲られた。
「兄貴! キリがない!」
敵モンスターと対峙している夏樹が叫ぶ。
「わかっているけど……っ、ファイアーダンス!」
「きゃっ!」
迫りくる敵モンスターに範囲魔法を使い対応するがその際に生まれた爆風でリィアが吹き飛ばされそうになる。僕はリィアを抱きかかえ防いだ。
「ごめんリィア。怪我なかったか?」
「ちょっとこわかったけど……へいき!」
そう答えるリィアだが手は震えていた。僕は優しく手を握り言う。
「辛いと思うけどあと少しだけ頑張って、な?」
「うん! ……っお兄さん後ろ!?」
リィアに言われ僕は後ろを振り向くと大鎌を持った敵モンスターが振り下ろそうとしていた。僕は咄嗟にリィアを守る。
「チューーーーン!!!」
スザクの体から薄赤い光を発すると地面から炎を纏っている鎖が現れ、大鎌を振り下ろそうとしていた敵モンスターを地面に縛る。それだけで終らず鎖はどんどん増えていき大量にいた敵モンスターは全て壁に縛られた。
「チュン!」
スザクは僕の右肩に止まり器用に翼を折り曲げ腰辺りに添えてドヤ顔する。
「スザクすっご……ってそんことよりも兄貴! リィア! 無事!?」
僕はステータスをみてHPが減っていないことを確認。リィアもダメージなくて一安心だ。
「こっちは大丈夫、今のうちに進もう!」
「了解!」
敵モンスターが壁に縛られているなんともシュールな光景の道を進んでいく。
「こ、こわい……」
いくら縛られていて攻撃が来ないとわかっていても子供には怖いよな。
僕は優しく言う。
「大丈夫。絶対に攻撃してこないから」
「う、うん……」
リィアの握っている手に力が入り僕は握り返した。
道なりに進んでいき遭遇する敵モンスターをスザクは次々に壁に縛っていく。おかげで戦闘はしなくて済み無事にボス部屋まで辿り着けた。
「リィア、僕から離れないで」
「うん……!」
ゆっくり進んでいくと松明から赤紫色の火が灯り始める。部屋の中央には祭壇のようなモノが設置されていて、そこには黒いローブを纏いフードを被ぶり、変な仮面で顔を隠している何者かがいた。
急いで鑑定すると名前の横にダンジョンボスと表記されていた。こいつがダンジョンボスか。レベルは33。僕のレベルは今は34だ。僕より低いが油断はしない。こいつを倒してリィアと一緒にダンジョンを出る!
「よく来たな! 勇者よ! 我がこのダンジョンボス、メフィストである! 我が用意した敵モンスターを薙ぎ倒しここまで来れたことを褒めてやる。だが、お前達の命運もここまでだ! いざ、死闘を――」
「フレイムソード!」
メフィストが言い切る前に僕はフレイムソードを唱え、十本の炎の剣を飛ばす。だが、メフィストには一本当たらなかった。
「おっと、危ない。我が話している時に攻撃をするとは、卑怯な手を。それでも勇者か!」
「勇者じゃないから! ファイアーボール!」
五十センチ程ある火球をメフィストに放つ。
「そんな単調な攻撃、我に聞くとでも思ったか!」
メフィストは右手を伸ばし真っ向から火球を受け止めようとする。
僕はチャンスだと思いレベル30で使えるようになったファイアーコントロールでファイアーボールを四つに分裂させ全弾メフィストに命中させる。メフィストは爆炎に包まれHPは三分の一ぐらい削れた。
新しく使えるようになったコントロール系魔法は発動中の魔法を自在に分裂させたり、巨大にし範囲を広げたり、小さくすることで速度を上げたり、軌道を変えるとこ出来る魔法だ。ただ、魔法自体の威力が上がらないのだが、それでも不意をつければいいと思う。
「ぶははは! 我を驚かせるとは大した者だ! さすが勇者だ! なら我も、本気と行こう……」
メフィストの仮面の目が赤く光りだすとメフィストの体が大きくなりローブを引き裂き紫色の体が露わになった。そして蹄を持つ獣の足に変わり、仮面は外れ角が生えたヤギのような容姿、そうまるで、典型な悪魔のよう姿に変わったのだ。
「さぁ! 死闘の続きと行こうか、勇者よ!」




