第38話
ようやく落ち着きを取り戻した女の子にスザクを不安を少しでも取り除くためと護衛として付かせることにした。
スザクは女の子の周りにを飛んだり、小さい体をこすりつけたりして女の子を喜ばせようとする。そのおかげで女の子はようやく笑顔を見せてくれた。僕と夏樹は安堵した。
女の子をスザクに任せ僕と夏樹はランダムイベントの内容を確認する。
えっと……クリア条件は、女の子リィアを連れてダンジョンボスを倒し脱出すること。この子を守りながら三階層まで行ってダンジョンボスを倒すのか。
難しいなあと思いつつ最後まで目を通すと下の方に失敗条件が記載されていた。それを読んで僕は絶句した。
失敗条件は女の子リィアの死亡となっていたからだ。
僕は小声で夏樹に尋ねる。
「夏樹、このゲームだとNPCが亡くなったらどうなるんだ?」
夏樹は女の子をちらっと見てからゆっくりと口を開く。
「……死亡扱いになって、もうこのゲームに出てこなくなるんだ」
「なんだ、それ……酷すぎるよ……」
僕は静かに拳を握りしめた。
「兄貴、俺達なら出来るよ。やろう!」
「おう!」
僕と夏樹は女の子リィアを絶対守ると誓いを立てる。
そして、僕達は夏樹を先頭にし、僕の隣にリィア、スザクはリィアの肩に止まり元の通路に戻った。
二階層の奥部屋に向けて進んでいるのだが、やたらと敵モンスターと遭遇した。
一匹一匹は強くないが数が多く、たまに挟み撃ちにあったりもした。
まぁおかげで僕と夏樹のレベルはかなり上がった。
そして、リィアを守りながらようやく奥部屋に到着。息を軽く整え進むと部屋の松明に光が灯り、中央にドーンっと全身を包帯グルグルで巻かれている三メートルぐらいの中ボスが待ち構えていた。
中ボスを鑑定すると名前はジャイアントマミー。レベルは31。
現在僕のレベルは31。夏樹は28まで上がっている。リィアを守りながらになるがレベル差もそこまでない。僕と夏樹はお互いに顔見て頷き、行動を移した。
夏樹は時計回りに駆け出すと、ジャイアントマミーの目は夏樹を追っていた。
その隙に僕はファイアーウォールを唱え天井まで伸びる火の壁を作り出す。
ジャイアントマミーは火に触れたくないのか少しずつ下がっていく。
今回僕の役割はリィアを守ることと道中で使い過ぎたMPを回復させて一気に魔法をぶっ放して倒すことだ。その為に時間稼ぎに火の壁を使ったんだが効果はあったようだ。ジャイアントマミーはこちらに近づこうとしないのだ。
その間に夏樹はジャイアントマミーの後ろに回り鞘から刀を抜き構える。
「兄貴、魔法を!」
「わかった!」
ジャイアントマミーは夏樹の声で振り向くが、それと同時に僕の付与魔法とバフ魔法を掛けた。
「決める……!」
夏樹は駆け出すとジャイアントマミーは地面からゾンビを次々に召喚して夏樹の進行を防ごうとする。
だけど、夏樹は召喚されたゾンビを黒い炎を散らせながら切っていく。そして、切るたびに夏樹の速度は上げっていきジャイアントマミーとの距離はあっという間に縮んだ。
ジャイアントマミーは夏樹を拘束するために両手から包帯を伸ばすが、夏樹はそれごと断ち切り、勢いそのままでジャイアントマミーも横に真っ二つになった。だが、ジャイアントマミーのHPはまだ残っていた。
ジャイアントマミーの体が塵状になり元の体に戻ろうと再生し始めた。
「兄貴!」
「わかってる! ファイアーダンス!」
僕は範囲魔法を唱え塵状のジャイアントマミーを燃やし尽くしようやくジャイアントマミーのHPは無くなった。
部屋全体が明るくなり三階層に行く石階段が現れる。だけど、道中の敵モンスターの大群とジャイアントマミーの連戦でヘトヘトになった僕と夏樹は床に腰を下ろした。
「疲れた……」
「同じく……兄貴、中ボスの部屋なら敵モンスター湧かないから少し休もうぜ……」
「そうしようか……」
もう安全だと思い遠くにいるリィアを呼ぶと駆け寄ってくる。
「怪我とかしてない?」
「うん!」
リィアの満面の笑顔に癒され少し疲れが取れた気がした。




