第33話
連休九日目。朝飯を早々に食べ終え僕と夏樹はログインをし馬車乗合所に向かった。
早朝だからか乗合所はほとんど人がいなかった。
夏樹は乗車券を買いに行くと受付カウンターに向かう。僕は椅子に座り待つことにした。
すると直ぐに夏樹が戻ってくる。
「兄貴、護衛の依頼として受ければタダなんだけどそっちでもいい?」
「お金には余裕あるけど……護衛の依頼受けてみるのもいいかもな。いいよ受けて」
「了解! 申請してくる!」
夏樹は駆け足で受付カウンターに向かった。
僕は夏樹が戻ってくるまでの時間どの召喚獣にするか悩む。何故悩むかと言うと馬車はフィールドを通る為、馬車の中にいようともフィールド扱い。よって一匹までしか出せないからだ。
さて、どの子にするかな。スザクとゲンブはダンジョンで活躍したから今回はお休み。そうするとビャッコかセイリュウになるけど、セイリュウとはほとんど一緒に戦ったことないし今回はセイリュウにしよう。
「来い、セイリュウ!」
召喚をするとセイリュウは左腕に絡まってくる。僕がセイリュウの顎を優しく撫でると嬉しそうに尻尾を左右に揺らしている。
「ただいま兄貴。お、今回はセイリュウか。よろしくな」
「ギャア!」
セイリュウと戯れ時間を潰していると受付嬢に呼ばれ、今回乗車する馬車に案内された。
「今回、護衛の依頼の馬車がこちらになります。あちらの麦わら帽子をかぶっているのが御者の――」
「ウラヌさん?」
受付嬢の言葉を遮り、僕は見覚えのある後ろ姿に名前を呼ぶ。
「ん? おお、坊主か! 今回の護衛はお前なのか?」
「はい、よろしくお願いします」
「おう、頼んだぞ! そっちの坊主は誰だ?」
ウラヌさんは僕の隣にいる夏樹を見る。
「弟のナツキです」
「ナツキです。よろしくお願いします、えっと、ウラヌさん」
「おう! 兄貴よりも頼もしそうな面をしているな。任せたぞ! がっはっは!」
「えっ! ウラヌさんそれ酷くないですか?!」
ウラヌさんは大笑いしながら御者台に向かう。すると次々にNPCの人達が馬車に乗り込んでくる。僕と夏樹、ウラヌさんも含め大人七人に子供三人の計十人になる。
配置を夏樹と相談して前方を夏樹に、後方は僕が警戒することになった。
「出発するぞ!」
ウラヌさんの掛け声で馬車は動き出す。馬車は長い白い橋を越えフィールドへ。
僕がゆっくりと流れる景色を見ていると、女の子がこちらをじっと見ているのに気が付く。
「おじさん、その子な~に?」
「おじさんって……」
僕は地味にショックを受けるが顔に出ないように答えた。
「この子はセイリュウって言って僕の召喚獣なんだ」
「ギャア」
「わあ! しゃべった! かわいい! さわってもいい?」
キラキラした目で尋ねてくる女の子に僕は言う。
「いいけど、優しくね?」
「うん!」
女の子は優しくセイリュウを触る。
「つめたくて気持ちいい!」
「ギャア」
セイリュウは僕の腕から離れ、女の子の周りを飛び回る。
「俺もさわりたい!」
「僕も!」
すると、眺めていた兄弟も駆け寄り一緒に遊び始める。
おかげで子供達の楽しそうな声が馬車内に響く。僕を含めた大人たちは優しい眼差しで見守っていた。
馬車は順調に進み昼前には新エリアに入った。それに合わせて僕のマップが拡大した。
マップ埋めしたいけど今は護衛中だしまた今度にしよう。
先程まではしゃいでいた子供達は疲れセイリュウと一緒に僕の周りで固まって寝てしまった。
そんな子供たちを起こさないように女性の方が小声で話しかけてくる。
「あの、冒険者さん。娘と遊んで頂きありがとうございました」
「こちらこそセイリュウと遊んでくれてありがとうございました」
「冒険者さんはどちらまで?」
「《亡者の墓場》って言うダンジョンに行く予定です」
「まぁ! あんな危険なところに……気を付けてくださいね?」
そんな話をしていると前方の夏樹が僕を呼ぶ。子供達をそれぞれの親に任せて向かった。
「どうした?」
「前方に敵。護衛中に稀に出現する盗賊だよ」
そう言われ僕も遠くにいる敵を目を凝らして見ると統一感のない見た目に剣やナイフ、槍など様々な武器を持った人達が見えた。




