第31話
答えようとするが僕は女性の睨みに尻込みしてしまう。
「俺たちはアルナさんの知り合いで、今日会う約束をしています」
「アルナの知り合い? 本当か?」
「はい」
夏樹が答えた後女性は僕を見る。僕は上下に頭を動かし頷く。
すると女性は笑みをこぼす。
「そうか……睨んですまなかった。私は《蜜柑の園》クランリーダー、アレイヤだ」
「俺はナツキで、こっちが兄貴の」
「ウィリアム、です」
「兄? 弟ではなく?」
「はい、こう見えても俺の兄貴です」
アレイヤさんは僕の前まで来てしゃがみじっと見た後何故か頭を撫でられた。
「あ、あの……アレイヤさん……?」
「はっ! すまない、つい……」
ついってなんだ……
ごほんっと咳払いをしアレイヤさんは立ち上がる。
「アルナに用があるんだったな。入ってくれ」
「はい!」
アレイヤさんの後を夏樹が追い先にハウジングに入っていく。
僕はと言うとアレイヤさんに撫でられ頬を赤くしていた。
初めてあった女性に頭を撫でられたら誰だってなるって。
「兄貴? どしたの?」
扉から顔を覗かせて夏樹が尋ねてくる。
「な、なんでもない。今行く」
頭を振って深呼吸してから僕もハウジングに入る。
「アルナを呼んでくるから二人はゆっくりしていてくれ」
アレイヤさんは部屋にいるアルナさんを呼びにエレベーターに乗っていく、その間僕と夏樹は一階のふかふかのソファーに座って待つことにした。
飲み物に口を付けている時に夏樹が尋ねてくる。
「さっき兄貴照れていたでしょう?」
「ぶっ!?」
不意打ちの質問に口にいれていた飲み物を盛大に吹き出してしまった。
「ごほっ! ごほっ! な、なに言ってんだよ!? 照れてないから!」
「兄貴吹き出しすぎ」
「え?」
夏樹に言われ辺りが悲惨な事になっているの気がつき顔を青ざめる。
「夏樹が変なこと言うから!」
「ほらほら、早く拭かないと」
夏樹はインベントリからタオルを出し僕に渡す。
僕と夏樹は黙々と拭いて行く。
僕はちらっと夏樹の背中を見て呟く。
「夏樹、なんか怒ってる?」
拭いてる夏樹の手が止まる。
「……なんで?」
「なんでって……なんとなくだけど、さ」
「それよりも、拭き終わった?」
「え、うん。終わったけど」
「じゃタオル返して」
タオルを返すと夏樹はインベントリにしまう。その時、エレベーターが一階に着く音がし扉が開くとアレイヤさんとアルナさんと……アテムアさんにアイリスさん? なんで? 一緒に降りてきたメンバーに僕は驚く。
「ウィルに弟君お待たせ!」
「こんばんわアルナさん。それに皆さんもお揃いでこんばんわ」
「こんばんわ!」
僕と夏樹は挨拶をする。
「おう、お二人さん防具の調子はどうだい?」
「問題ないです。アテムアさんの防具がなかったら流石にあいつの攻撃は耐えれませんでした」
「あいつ? お前たちが行ったダンジョンだとあの防具ではほとんどダメージは食らわないはずなんだがどういうことだい?」
「あ……それも含めてお話が」
「変なボスモンスターのことも?」
「そうです」
僕はあの時のことを思い出しながら説明した。
説明が終わると場は静寂に包まれ最初に口を開いたのはアレイヤさんだ。
「ボスモンスターの件より私はウィリアムの一時覚醒の件が気になる。条件は分かっているのか?」
僕は頭を横に振る。それを見てたアルナさんが言う。
「多分だけど、ウィルのMPは全部消費のHPはレッドゾーンは条件だと思うけど、それだけじゃない気がする……」
「フーディアに聞くのが手っ取り早いが言うはずがないな」
「確かに!」
アレイヤさんの言葉にアルナさんは即答する。
それよりも、とアルナさんは続ける。
「クリアしたんだよね?」
「クリアした時に流れるファンファーレがあったんで一応は」
僕の代わりに夏樹がこたえた。
「おお! ならダンジョンクリアだね! おめでとう二人とも!」
アルナさんは僕と夏樹の肩に腕を回し祝ってくれた。
「ありがとうございますアルナさん」
「あざーっす!」
「あ、そうだ! アレイヤ! 祝勝会してもいい?」
腕を組んでいたアレイヤさんが答える。
「ああ、構わないさ」
「やった! アイリス料理するから手伝って!」
「えぇ!?」
アルナさんはアイリスさんの手を引っ張って階段で二階に行く。
「準備出来たら呼んでくれ」
そう言いアテムアさんはエレベーターに乗り地下へ行く。
一階には僕と夏樹、アレイヤさんだけになった。
そして、アレイヤさんと会話して時間を潰しているとアイリスさんに呼ばれ二階に行き、祝勝会が始まった。




