第30話
連休八日目。あの後色々していたら寝てしまいログインすることはなかった。
そして今日は旅行から両親が帰ってくる日。帰ってくるなリ母親の突然の提案で食事しに行くことになり、帰宅したのは結局夜になってしまった。自室に戻りログインした。
「兄貴やっと来たー」
先にログインしていた夏樹の顔が目の前にあった。なんか近い。
「夏樹、顔近い……」
夏樹の顔を手で退かせ体を起こしてからベットの端に腰掛けた。
「なかなか来ないから見てただけ」
「見てたって……落書きしようとしたんじゃないのか?」
「し、してないよ?」
夏樹の目が逸れて何かを隠した。僕はジト目で見る。
「そ、そんなことより兄貴、四匹召喚して! 遊びたい!」
「……まぁいいけど」
召喚獣達を順番に召喚していく。召喚するとそれぞれの定位置につく。
「皆、夏樹が遊びたいって」
「ガウ!」
「チュン!」
ビャッコとスザクはいち早く夏樹の元へ行く。セイリュウはゆっくりと向かいゲンブは頭の上から動かない。
夏樹と三匹の召喚獣はじゃれ合い始める。僕はそんな様子を見ながら持ち物を確認していると、通知が点滅しているのを目に入り押してみるとアルナさんからの通知が何十件も溜まっていた。
「アルナさんとの連絡途中だった、な……」
怒ってんだろうな。どうしよう。連絡したくない。
僕はため息をついた。
「どしたの兄貴?」
ビャッコを膝上にスザクを頭に乗せセイリュウは首周りに巻き付いている姿の夏樹が尋ねる。
「ん……あの時さアルナさんと連絡してたんだけど、途中でスザクが背中に乗せて飛び立ったじゃん?」
「あーその後連絡してないから通知がいっぱいあったと?」
「あ、うん。そういうこと」
夏樹の理解力が高くて一瞬戸惑ってしまった。
「それで連絡しようか迷ってんでしょ? 早く連絡しなよ~うわあ! セイリュウ擽ったい! 服の中に入るな!」
「ギャア」
僕はもう一度ため息をつき、アルナさんに連絡した。
『アルナさん、こんばんわ……』
『ウィル! よかった! 連絡が途切れたから心配だったよ~』
『すみません……』
『いいっていいって。無事なら気にしないよ~。あ、そうだ。二人が行ったダンジョンのその後のこと聞いた?』
『いえ、なんも聞いてないです』
『あの後ね、変なボスモンスターの討伐パーティーが奥部屋まで行ったらさ、赤くて大きい鳥が飛び立ったんだって。で、ボスモンスターも既に倒されていてね、目撃情報を聞きながらその鳥の行方を探しているさしいね。白い獣の件もあって辺り構わず聞き込みしているらしいよ』
すいません、どっちも僕ですっと内心で謝る。
『あのダンジョン自体はどうなりました?』
『ダンジョンは元に戻っているらしいよ』
天井をぶち抜いて直っていなかったっらと思っていたがアルナさんの言葉で安堵した。
『まぁこの話はこれぐらいにして、あんな騒ぎがあったけど結局ダンジョンはクリア出来たの?』
『それが……そのことで話があって……今会えますか?』
『平気だよ! アイテム、送るからハウジングまで来て!』
『わかりました』
連絡を終わらせると直ぐに緑色の転移結晶のアイテムが届く。
「話すことに決めたの兄貴?」
「う、うん。そうだけど……夏樹察し良すぎじゃないか?」
「兄貴の表情見てればわかるさ」
しれっと言い切る夏樹に少し引いた。普通分かんないと思うけどな……
僕はベットから立ち上がりアイテムを手に持つ。
「アルナさんの所行ってくるけど夏樹はどうする?」
「俺もついて行く兄貴」
「了解。んじゃ行きますか」
「おう!」
宿屋を後にし直ぐ緑色の転移結晶のアイテムを使い、景色が暗転し目の前には《蜜柑の園》のハウジングが目の間に。
庭を通り玄関前で立ち止まった。
「兄貴大丈夫だから」
肩にそっと手を置いて夏樹は励ましてくれた。
「ありがと夏樹」
扉のノブを掴み開けようとした時後ろから声を掛けられた。
「お前達、そこで何をしている!」
そこには青のラインが入った銀色の鎧を着ている明るめな茶髪ロングヘアーの美人の女性が、こちらを睨んで立っていた。




