第27話
三階層の奥に進んで行くが敵モンスターには一切出会わなかった。そして、異様なまでに静かだった。
そんな中を警戒しながら進んで行くやがてかなり広い空間に出る。その中央には上空を見つめながら悦に浸っている人型の敵モンスターが立っていた。
あいつが夏樹を……
僕は鑑定した。
名はクイーンクヴァレ。レベルは30と。……レベル30!? このダンジョンは16から24までと夏樹から聞いている。なのに30って……
「チュン」
クイーンクヴァレを鑑定しているとスザクは上を見るように鳴く。
天井を見上げるとそこには何人ものプレイヤーが捕まっていた。その中に夏樹もいた。無事の姿を見て僕は安堵した。
直ぐに助けるからもう少し待っててくれ。
再び視線を戻すとクイーンクヴァレはこっちを見て歪に笑い手招きをしている。どうやらバレているようだ。覚悟決めてクイーンクヴァレの前に出た。
「夏樹を返してもらうよ」
クイーンクヴァレは頭を傾けるだけで動こうとしない。ならこちらから攻めるだけだ。
「ファイアーボール!」
五十センチほどの大きさの火の玉が凄い速さに飛んで行くがクイーンクヴァレは触手を壁にし防ぐ。
やはり防がれたか……なら作戦変更だ。
「ファイアーアップ……からのフレイムソード!」
火力を上げてからレベル20で使えるようになったフレイムソードを唱える。
僕の左右に炎で作られた長剣が五本ずつ生成された。
「行け!」
合計十本の炎の長剣がクイーンクヴァレに向けて飛翔する。
クイーンクヴァレは同じく触手の壁を作り防ごうとするが炎の長剣は触れた物を溶かす様に斬り裂いた。
そのまま炎の長剣はクイーンクヴァレに向かうが今度は水の壁で防がれた。
不意打ちによりクイーンクヴァレから笑みが消え敵意を剥き出してくる。
レベル20で覚えたフレイムソードには溶かす様に斬り裂く効果は元々ない。スザクを召喚している為に変わったのだ。
不意打ちは出来たが触手の次は水の壁か。厄介だな。
「チュン!」
背後に回ったスザクがフレイムソードを放つ。だが、クイーンクヴァレは水の壁で簡単に防ぐ。
防戦していたクイーンクヴァレは触手を動かし僕とスザクを攻撃してくる。
四方八方からの触手に僕は範囲魔法のファイアーダンスを使い迎撃。スザクは避けながら僕の所まで戻ってきた。
「スザク、やるよ!」
「チュン!」
「フレイムソード! ファイアーダンス!」
僕は魔法を二つ同時に使う。十本の炎の長剣が宙を舞う様に次々に触手を斬り裂いていく。
スザクは僕の魔法を操りどんどんと広がり空間全てが炎に包まれた。
炎が収まり天井で捕まったいたプレイヤー達は拘束が解け地面に寝転がっている。
周囲を確認するもクイーンクヴァレの姿が見当たらない。やったか? いや、隠れているのかもしれないな。
周囲を警戒しつつHPが減っているプレイヤーにHPポーションを掛ける。半分切ったMPを回復する為ポーションを飲む。
「うぅ……兄貴? ここ、は……」
ようやく意識を取り戻した夏樹に僕は駆け寄る。
「夏樹! 良かった……! 平気か?」
「え、うん。平気だけど……兄貴ここ何処なの? あの人達は?」
夏樹にこれまでの経緯を説明した。
「そんなことがあったんだ……兄貴一旦戻ろう。これかなりヤバいって! ってうわぁ!」
「地震……?」
ゴゴゴと立てないぐらいに地面が揺れ始め、床が次々と崩れていく。
そして、特大な触手が二本が生えたと思ったら次に現れたの特大の苔生したクラゲの頭部だった。クイーンクヴァレが巨大化したようだ
「なんだあれは!」
「ば、化け物……!」
「逃げろおおお!」
気を失っていたプレイヤー達も次々と目覚め逃げ出し始める。
「兄貴! 俺たちも逃げよう!」
「夏樹は逃げて、あいつは僕が倒す」
「はあ!? なんで、勝てっこないって! 逃げようよ兄貴!」
夏樹は必死に逃げようと言うが僕は首を横に振った。
「弟が拐われたんだぞ? それも僕の前で。未だに怒りが収まってないんだ。ただの憂さ晴らし。だから夏樹は逃げて」
それに、と僕は続ける。
「スザクも居るし問題ない」
「チュン!」
肩に止まっているスザクが鳴く。
「兄貴……兄貴が残るなら俺も残る。で一緒にあいつを倒そう!」
「わかったよ。無茶だけはしないで」
「兄貴こそ!」
巨大化したクイーンクヴァレを見据えて僕と夏樹は武器を構えた。




