第23話
連休七日目。朝飯をそうそうに終わらせ僕と夏樹はレベル16から行けるダンジョン《珊瑚の歌声》に向う。このダンジョンは三階層しかない初心者向けのダンジョンだ。次のダンジョンはレベル25から。それまではここでレベル上げだ。
長い橋を渡り海沿いに歩いて行くと洞窟が見えてくる。あれかな?
「兄貴、あれがダンジョンの入り口だよ」
入り口に近づくと中から風が吹き歌声のように聞こえる。なるほど、ダンジョン名の通りだ。
「兄貴、今回誰にするの?」
「召喚獣? そーだな……」
ダンジョン内もフィールド扱いらしく召喚獣は一匹までしか召喚出来ない。
洞窟内が狭いならスザクは飛行しづらい。ビャッコだと地形に干渉して天井が崩れるのまずい。セイリュウかゲンブになるけど、二人だけだし守りを固めた方がいいかな。
「来い、ゲンブ!」
「カ~メ」
召喚されたゲンブは定位置の頭に移動してくる。
「ゲンブにしたんだ」
「二人だし、守り固めた方がいいかなって」
「そだね。じゃあ初ダンジョンレッツゴー!」
「おーう」
「カメメ~」
僕達は洞窟内に進む。
洞窟内は意外と広く所々に珊瑚が群生していた。それに珊瑚はどういう仕組みなのか光っていて洞窟内は意外と明るく視界には困らなかった。
「兄貴、敵来るよ」
先頭を歩いてる夏樹が振り向いて伝えてくる。
するとすぐに敵が視界に入り、そこには半透明な体を持ち触手をひらひらとさせ宙を泳ぐに近づいてくる三体のクラゲ型の敵モンスターの群れだ。
急いで鑑定すると名はドンナークヴァレ。レベルは18と少し高い。
「あれって、クラゲで合ってる?」
「電気クラゲだよ兄貴。あの触手から電気を流して痺れさせたところを群れで襲う敵モンスターだから触手には気を付けて」
「了解。なら一体ずつだな。ウォーターウォール!」
地面から水が湧き上げ天井まで伸び三体のドンナークヴァレが分断された。
「おお、ナイス兄貴! あとは任せて!」
夏樹はあたふたしているドンナークヴァレに一瞬で近づいて一太刀を浴びせる。切られたドンナークヴァレはドロップアイテムを残し消える。
僕は倒されたの確認して水壁を解除する。夏樹は刀を鞘にしまい、溜めた後刀を抜いて斬撃を飛ばすスキル【飛燕】を使いドンナークヴァレは真っ二つに。ちなみに相手との間合いを詰めるスキルは【縮地】だそうだ。
残り一体を僕の魔法で仕留め最初の戦闘は終わった。
「兄貴レベル上がったぜ!」
「おめでとう」
たった三体だけど格上の敵モンスターだからか夏樹のレベルが直ぐに上がったのかと思ったが聞いてみたらあと少しで上がっていたようだ。
僕の方にも経験値は入るがそんな多くはなかった。まぁ夏樹のレベル上げをしていれば自然と上がるからいいか。
そして僕達は遭遇する敵モンスターを倒しながら奥に進んでいく。おかげで僕は21で夏樹は18まで上がった。
「行き止まり?」
道を一本一本確認ししながら進み一番奥に辿り着くが次の階層に続く道はなかった。
「兄貴こっち」
夏樹に目線を向けると光る珊瑚の足元を漁っていた。
近づいて夏樹に尋ねた。
「何してんの?」
「うーんと……お、あった。これ探してた」
夏樹が探していたのはボタンのようなモノだ。そのボタンを押すと壁に新たなボタンが現れた。
「これ押せば開くんだけど……」
―――GRAAAAAAA!!
その時、上の方から獣の雄叫びが聞こえそいつは落ちてきた。
黄色い皮膚に黒い斑点が点々し鋭い牙を剥き出し鋭い目をしている豹みたいな動物だ。
鑑定するとレベルは20。名はミストレオパルド。
夏樹は刀を抜き前に出る。
「あいつは中ボスだから気を付けて」
その時、急に霧が発生しどんどん濃くなっていく。目の前にいる夏樹の姿がだんだんと見えなくなるほどに。僕は思わず手を伸ばし夏樹の腕を掴む。
「兄貴?」
「あ、ごめん……その……消えちゃうと、思って……」
「兄貴……俺は消えないから絶対に。それよりもこの霧をどうにかしないと」
警戒しながら夏樹は尋ねてくる。
霧を吹き飛ばせれば……一旦ゲンブを戻してセイリュウを出すか
そう思っていたらゲンブの体が青く薄い光りを発すると、霧はゲンブの目の前で集まり出し霧がだんだんと晴れていく。そして集まった霧は水球になりゲンブが飲み込んだ。
「ゲップ……カ~メ」
僕と夏樹は口を開け呆然し、ミストレオパルドもなにが起こったのかわからず動揺していた。




