第22話
アイリスさんを追いかけるためアルナさんと共に三階に向かう。
三階は中央に廊下があり左右に二部屋ずつある。
「奥の右側の部屋がアイリスの部屋だよ」
そう説明され部屋の前まで行き、アルナさんは扉をノックする。
「アイリスいるんでしょう?」
尋ねるも部屋からはなんも返事が返ってこない。
「アイリス~出てきてよ~。ウィルお願い」
僕は頷き扉の前に立つ。
「アイリスさん、僕です。スザクの事は本当に気にしてませんから。寧ろ僕の方こそ嘘をついてすみませんでした」
頭を下げ謝罪をする。すると扉がゆっくり開く。
「なんでウィリアムさんが謝るんですか……悪いのは私で……私のせいでウィリアムさんに迷惑かけてしまって……」
僕は頭を上げるとアイリスさんは悲しげな瞳をしていた。
「そこまで迷惑じゃ……いや、ギルドでの勧誘凄くて困惑したけど、それがきっかけで色んな人とも交流……会話? 出来たのは感謝していますよアイリスさん」
「えっ……感謝……?」
僕は頬を掻きなが答えた。
「僕、今は大分ましになったけど昔から人と関わるのは苦手で……オンラインだけど一人で遊べればいいかなって思っていたんです。だからきっかけはどうあれアイリスさんには感謝してるんですよ」
「……」
アイリスさんは何も言ってくれない。失敗したかな?
「ウィル。アテムアが呼んでるから行こう」
「え、でも」
「いいから!」
アルナさんに手を引っ張られエレベーターに乗る。エレベーターの扉が閉まる前に立ったままでいるアイリスさんに言う。
「アイリスさん! 今度パーティー組みましょうね!」
言い終わると同時に扉は閉まりエレベーターは動き出す。
「アルナさん、さっきの」
あれでよかったのか聞こうとアルナさんを見るとニマニマしていた。
「ウィル、今の台詞クサかったよ」
「あはは……そう思います? でも本当の事なんで……」
「そっか」
エレベーターはいつの間に地下に着き扉が開く。
「お、ようやく来たな」
「兄貴! 見てこれ! めっちゃかっこいい!」
夏樹は侍が来てそうな甲冑を身に纏っていた。
色は漆黒に金色のラインが入っており、夏樹が持っている刀に合う。
「あれ、頭部はないの?」
「頭部も付けているけど設定で表示しないようにしてるだけ。それよりもどう? かっこよくない?」
「かっこいいよ」
「マジで! やった! ありがとうございますアテムアさん!」
「お、おう」
夏樹の勢いに押され若干引くアテムアさん。
夏樹はそんなことに気づかず今度はアルナさんに自慢している。
「ほれ、これはお前のだ」
そう言われ手渡されたのは夏樹と同じく漆黒のローブ。広げて見ると所々に金色の刺繍が施されていた。
「ウィル似合うじゃん!」
「そ、そうですか?」
「兄貴似合ってるよ!」
「あ、ありがとう」
二人から褒められむず痒くなった。
アテムアさんはふむふむと頷いている。
「アテムアさんありがとうございます」
「なに、これぐらい朝飯前だ。それに色を決めたのは弟君だ。まさか一万程の染色アイテムを持ってくるとは予想外だ」
必要な素材にはそんなものには載ってなかった。
僕が夏樹を見ると視線を逸らした。
「夏樹、どういうことか説明してくれる?」
「えっと、その……」
「怒らないから説明して」
「うぅ……兄貴と昔のようにお揃いにしたくってお金も余裕があったから高いの買った……」
夏樹は小声で理由を言う。
「それであの時素材買うの任せて言ったのか」
「うん……」
僕は溜息をついて呆れながら言う。
「言ってくれればよかったのに……次から言って」
「わかった」
夏樹との話が終わるとアルナさんが夏樹に近づく。
「弟君ってブラコン?」
「なっ!? ブラコンじゃねーから! 兄貴の事は尊敬してるし、憧れだけどブラコンじゃねぇーし!」
「ほうほーう。そういうのをブラコンって――危な!」
「その口塞ぐから逃げるなーー!!」
「やーだね! 捕まえれるものなら捕まえてみな!」
二人とも子供か!
二人のやりとり見ているとアテムアさんに尋ねられた。
「いつダンジョンに行くんだ?」
「そうですね、明日にでも行ってみようかと」
「そうか、気を付けて行って来い」
「はい」
《蜜柑の園》のハウジングを後にし噴水広場まで戻り僕と夏樹はログアウトした。
いよいよ初ダンジョンだ。頑張ろっと。




