第20話
「じー…………」
レオルさんの視線の圧に僕はビャッコを抱え背中を向ける。
「じー……………………」
圧が強い……!
「まぁ別にいいさ。ウィル君が二匹目のゴッドクラスを持っていても驚きもしないけどね!」
……バレてらっしゃる。
黙ったままでいるのを諦めた僕はレオルさんに向き直る。
「なんで――」
「なんでわかったかって? うーん。内緒!」
「内緒って……」
「だってウィル君も黙っていたから、そのお返し!」
へへっと笑いながらレオルさんは答える。僕は思わず苦笑いした。
その時、腕に抱えていたビャッコが抜けだしレオルさんのもとまで近づき上目遣いで見つめ始める。
そんなビャッコの頭をレオルさん優しく撫でた後立ち上がった。
「うんじゃ俺は行くわ。バイバイ!」
レオルさんは別れの言葉を言うと手に持っていた緑色の転移結晶を使いいなくなる。
「なんか、どっと疲れた……一旦ログアウトするか」
「ガウ!」
ビャッコを戻したあと転移結晶を使い街に戻りログアウトした。
「兄貴ただいま~」
夏樹の声に僕は目を覚ました。ベットで横になっていたらいつの間にか寝ていたようだ。
外を見ると朝明けか夕暮れなのか判別しづらい空模様。時計に視線を向けると五時と表示されていた。
ログアウトしてから三、四時間は寝ていたのか。
ベットから起き上がり廊下に出る。
「兄貴いたんだ。返事ないから出かけてると思っていた」
「お帰り~。夕飯食べたか?」
「まだ! 兄貴も?」
「これから。用意しておくから着替えてきて」
「はーい」
夏樹は階段を駆け上がっていく。
着替え終わった夏樹と夕飯を食べ、少し休憩したあと僕は話しを切り出す。
「夏樹話しあるんだけど」
「ん? なに?」
僕は今日の事を夏樹に話す。それにオーガの事とビャッコに起きた一時覚醒の事も話した。
「なるほど……ちょっとまってて」
そう言い夏樹は部屋に戻っていく。
僕は夏樹が戻るまでソファーに座り待つことにした。
「兄貴お待たせ。友達に聞いたんだけどオーガの事しか分からなかったよ」
夏樹は僕の隣に座りスマホを見せる。
「兄貴が遭遇したオーガはフィールドボスって言う超低確率で湧く敵モンスターなんだのって」
「へぇーそんないるんだ」
スマホには色んなはぐれボスと呼ばれる敵モンスター画像が載っていた。
クラゲや蛇、熊、虎など様々な姿をしている。勿論その中にはオーガもいた。
「ちょうどその日に湧く予定だったみたいだよ。兄貴はそれに巻き込まれただけ。遭遇したのは運が悪かったと思うけど無事倒せたし、その素材で大金も手に入ったし結果オーライ!」
あ、となにかを思い出した夏樹は続ける。
「兄貴、素材っていくらで出品したの?」
「いくらで出せばいいのか分からなかったから一つ百万で出したけど」
「あー、その中に魔石なかった?」
「魔石? あ、あったかも……それがどうしたの?」
「その魔石、なんか特殊な武器を作る時に必要なものらしくって大体、一つ数千万で取引されているみたいだよ」
「す、数千万!? マジで!?」
驚いている僕に夏樹は続ける。
「ちなみにはぐれボスの素材は全て高く売れるみたいだね。百万は安かった」
「あー通りで出品した瞬間売れた訳だったんだ」
「少し勿体無いけど、まぁ大金も手に入ったし必要な素材揃えちゃうぜ兄貴!」
「了解。そんじゃログインしますか」
「おう!」
僕と夏樹はそれぞれの部屋に戻りログインしマーケットに向かった。




