第2話
水面には白髪に黒のメッシュが入った髪型。そして獣の耳。顔のパーツは幼さ満載。
キャラメイクした時の面影が一切ない。……なんで?
訳が分からなくなった僕はすぐさまログアウトした。
ヘッドギアを外し公式サイトを開き、マイページにとぶ。
マイページにはゲームにログインせずに容姿を見ることが出来る機能があり念のために確認すると、キャラメイクした時のキャラが表示されていた。どういうこと? 表示バグなのかな?
とりあえず僕はスマホでマイページのキャラの写真を撮り、その後ゲームにログインして自キャラをスクショした。
二枚の画像を添付して、詳細を載せたメールを運営に送る。よし、あとは返事を待つだけだ。
……待っているも勿体無いし、進めるかな。
再びログインした僕はマップ埋めのために街中を散策を始めた。ゲームの中なのに海外に行ってる気分で散策も中々楽しめた。
マップも大体埋まり僕は武器――召喚士を目指す場合は魔導書になる――を手に入れるためにギルドに向かうことにしたんだが迷子になってしまった。ここ何処?
マップを見ながら進んでいたのに何処かで道を間違えて裏道に来てしまったようだ。プレイヤーでもNPCでも誰でもいいから誰かいませんか?!
「どうしたんじゃ坊主? そんなところで蹲って」
願いが通じたのか麦わら帽子をかぶったおじさんが声を掛けくれた。感極まった僕は涙目でおじさんに抱き着いた。
「よかったあぁぁ……! やっと人に出会えたああ……!」
「ど、どうしたんじゃ?!」
「ぐす……実は迷子になってましって……」
「プレイヤーなのに迷子になったのか?」
おじさんの言い方に僕はおじさんの頭上に表示されている名前を見ると白文字だった。
このゲームではプレイヤーは緑色。NPCは白色。敵モンスターは赤色で表示される。
「ちゃんとマップを見たのか?」
「見たんですけど……似てる建物が多くて……あのギルドにはどうやって行けばいいんでしょうか?」
「ギルドはこの道……いや、教えるのは面倒じゃ。こっちじゃ」
「はい!」
おじさんの案内で無事に裏道を抜けた。
「裏道出れれば行けるじゃろ?」
おじさんに言われギルドまでの道順を確認。いまの道を真っ直ぐ行けばいいみたいだ。
「はい、大丈夫です! ありがとうございました! えっと……」
「儂はウラヌだ。……プレイヤーなら儂らNPCの名前ぐらいわかるはずなんだが?」
おじさんは頭上を指す。僕は正直答える。
「はい……でも、なんか、それは違うんというか。ちゃんと自己紹介しないといけなんと思うんです。って僕も言ってませんでしたね。僕の名前はウィリアムです。ここまでありがとうございましたウラヌさん」
ウラヌさんに頭を下げお礼を述べた。すると、ウラヌさんが豪快に笑った。
「がっはっは!! 変わったプレイヤーじゃな! じゃ儂は帰るわ。もう二度と迷子になるんじゃないぞ?」
ウラヌさんは手を振りながら裏道に戻っていく。僕は再度頭を下げる。
ウラヌさんと別れギルドに迷うことなく到着。ギルドの扉を開け中に入ると沢山のプレイヤーで溢れていた。
長い列に並び、しばらくするとやっと順番が来た。
「ファルトリアギルドへようこそ! 本日はどのようなご用件でしょうか?」
綺麗な受付嬢に一瞬見惚れてしまったが気を取り直して答える。
「えっと、武器をお願いします」
「畏まりました。では、こちらへ」
受付嬢の後ろをついて行き一つの部屋に案内された。中に入ると部屋の中央にサッカーボール並みの大きさの水晶とただのテーブルが置かれていた。
「その水晶になりたいジョブがあれば思い描き、無ければそのまま触れてみてください」
「はい」
なりたいジョブは召喚士。確か武器は魔導書だっけ?
よし! 召喚士!召喚士!召喚士!召喚士!
水晶に触れると光を放ち輝きだす。そして、テーブルの上には金色のコーナー金具がついた漆黒の魔導書が置かれていた。
手に取ってよく見ると、真ん中には六芒星の魔法陣と端にはよくわからない絵が描かれていた。
中を開くと何も書かれていない。全て白紙だった。
「おめでとうございます。これであなたは召喚士見習いに取得しました」
「え? 見習い?」
受付嬢は説明してくれた。
武器を手に入れるとまずは見習いからになるそうだ。プレイヤーレベルをカンスト――現在の上限は五十――まで上げることでジョブクエストが現れる。それをクリアすれば見習いが外れ正式に召喚士となれるようだ。
更にカンストしてから武器に熟練度が追加され、熟練度もカンストすれば上位ジョブになれるクエストが発生するそうだ。
てっきりすぐ成れると思っていた。
「公式サイトに載ってますよ?」
受付嬢は心を読んだかのようなこと言ってくる。……しっかり目を通せばよかった!
僕は話題を逸らすため受付嬢に尋ねる。
「……あの、ここで召喚獣と契約をしても大丈夫ですか?」
「はい、この部屋の中でしたなら構いません。では、私はこれで。終わりましたら一声受付に伝えてください」
「わかりました。ありがとうございます」
受付嬢は一礼して部屋を出ていく。
よし、早速召喚するかな。ちなみに召喚獣は百種類以上の中からランダムで召喚される。なにが出るのか楽しみだ! 欲を言えばもふもふか鳥系の召喚獣がいいなあ。
さて、どうやって召喚してたっかけな~確か。
「来い、召喚獣よ!」