第18話
マーケットから立ち去った僕は噴水広場まで戻って空いているベンチに座ることした。
聞いているだけで涼しく感じる噴水の音。人々の他愛のない会話に耳を傾けていると心が落ち着いていく。
そして、もう一度所持金を見るといくつもゼロが連なっている現実を再確認した。僕は深い溜息をつく。
夏樹にどう説明しようか。
説明も何もありのまま話すしかないないけど、そうなると必然的にオーガのことも話さないといけなくなるけど。夏樹になら話してもいいかな。
それになんでレベルカンストの敵モンスターが低レベル帯の場所にいたのかわかるかもしれない。
そうと決まれば夏樹がログインしたら全部を話そう!
ちょっと心が軽くなったことだしレベル上げしてレベル20にしよう。
長い橋を渡り陸地に着いた僕は森の奥に向かう。
森の奥に行くにつれ敵モンスターのレベル帯も上がる。丁度いいところでレベル上げだ。
しばらく歩いていると群れている鼠型の敵モンスター、ハングリーマウスを見つける。
周りを見渡し他のプレイヤーがいないことを確認して召喚する。
「来い、ビャッコ!」
「ガオ!」
召喚されたビャッコは僕の足元まで来て甘えてくる。
ビャッコの頭を撫でながらハングリーマウスを見据える。
ざっと見た感じ十体以上いる。周りには誰もいないし、範囲魔法使ってみるか。
とその前にビャッコを召喚して変化したスキルを確認しないと。
スキルを確認した結果、範囲距離が二倍近く延びていた。
このゲームって自分で放った魔法にダメージあったっけ?
あったら間違いなく巻き込まれるけど……試してみるか。
中心にいるハングリーマウスに狙いを定め。
「ストーンスパイク!」
地面から無数の棘が出現していく。棘はものすごい勢いで広がり僕の方へ向かってくる。腕でガードしながら僕は目を瞑った。
瞼を開けると凄い光景が広がっていた。
棘は地面を掘り返し地形は変わり、範囲内あった木々は地面に倒れていたり、穴が開いたりとボロボロ。
ハングリーマウスの群れもいなくなりドロップアイテムだけが残った。
HPを見ると減ってはいなかった。自身で放った魔法にはダメージがないのか。
ドロップアイテムを回収していると地面からビャッコが現れた。
「なんで地面から?」
「ガウ?」
こっちに顔を向けているビャッコの口元にはハングリーマウスが咥えられていた。
ビャッコは顎に力を咥えハングリーマウスに止めを刺してドロップアイテムに変わる。
そのおかげでレベルが上がった。
「お、レベルが上がった。ありがとうビャッコ」
「ガウ!」
ビャッコの汚れた顔を拭き抱き上げる。優しく頭を撫でるとビャッコは嬉しい表情する。
新しく覚えた魔法を確認しようとドタバタと沢山の足音が聞こえてくる。僕は急いで木陰に隠れた。
「なんだこの現状は?!」
「誰だよこんなところで土属性の上級魔法撃った奴は……」
「それは後回しだ。今はこの一帯を調べるぞ!」
「了解!」
気になる話が聞こえたが今は離れるのが賢明だな。
音を立てずゆっくりと立ち上がり去っていく。
後ろを気にしながら歩いていると池に辿り着いた。太陽の光が反射して神秘的な雰囲気を醸し出している。
近くにあった大きい木の根本に腰掛け景色を眺めた。ビャッコは池に近づき水遊びを始めた。
「あんま深いところ行くなよー」
「ガウ!」
新しく覚えた魔法でも確認しようとした時、遠くで金属と金属が激しくぶつかり合っている音が聞こえる。
誰かが戦っているかな?
直ぐに終わるだろうと思っていたがなかなか終わらず気になった僕は音の出所に向かうことにした。




