第150話
「すっげぇーなお前のハウジング! ミルクもそう思うだろう!」
「うんうん!」
屋敷を見上げる同僚のブラオとミルクさん。
無事にクイーンクヴァレを突破してダンジョン攻略を終え、解散になる流れが、何故か同僚にハウジングが見たいと言われミルクさんもその意見に賛成して一緒に屋敷まで連れてきた。
「そんなところで立ってないで入ったら」
そう言って僕は先に扉を開けて屋敷に入る。
僕の後から続けて二人が入ってくる。
「……あんま凝ったことしてないんだな」
エントランスは特に弄ってないのを突っ込まれる。
「広すぎて自室にしか家具とか置いて無いよ」
「どんだけ部屋あるんだよ!」
「んー途中で数えるの止めたから正確な数は分かんないけど、二十以上はあるよ」
「……ちなみに使ってる部屋はいくつなんだよ?」
僕と夏樹とアカネさんの部屋とアテムアさんの工房として貸している部屋しか使っていないはず。
「四部屋かな。部屋使うなら貸すよ? クランに入らなくても貸せる方法はあるからさ」
「マジで! うーん、どうせならクランに入りたいけど……」
「入る? うちのクランまだ三人しかいないしいいけど」
「え、じゃあ入るは。ミルクはどうする?」
「わ、私?」
急に話を振られ慌てるミルクさんは僕に目線を送る。
「えっと、私なんかが入ってもいいのでしょうか?」
「僕は構いませんよ。ただ……今はちょっと待ってほしいです」
「ルキちゃんがいないこととなんか関係あるのか?」
鋭い指摘に僕は同僚にジト目を送る。
「そうだよ。三連休で連れ戻すからそれまで……」
「了解。それじゃ俺達は帰るわ」
「そうですね。あ、ウィリアムさん。フレンド交換お願いしてもいいですか?」
ミルクさんとフレンド交換し二人は帰っていった。
僕は自室に行き見回す。やっぱりルキがいないと静かだな。
そろそろログアウトしようかな。
ログアウトのボタンに手を掛けようとした時視界の端に光る球が入る。
立ち上がりテラスに出るとそこにはペペが飛んでいた。
「ペペ? どうしたんだこんな夜に? また女王になにかあったのか?」
ペペは首を横に振る。
『ううん。女王様は何ともないよ。あのね、ウィル。私もルキちゃんを助けに行きたいの。だから私と契約して』
優しくペペの頭を僕は撫でた。
「ありがとうペペ、気持ちは嬉しいよ。でも、大丈夫。ルキは絶対に取り返すから」
ペペは僕を見つめる。
『……私が妖精の花園に帰れなくなっちゃうから契約しないの?』
「うん……」
妖精はプレイヤーと契約をすると妖精の花園に帰れなくなってしまう。せっかく女王の下で御手伝い係として頑張っているのにそんなペペを僕は縛りたくなった。
『ウィルよ、そのことなら問題ない』
突然、女王の声が頭に響いてくる。
『右腕を出すのだウィルよ。ペペよ』
『はい』
右腕を差し出すと、ペペが触れた瞬間に右腕に所々に色とりどりの花弁が付いた蔦で出来たブレスレットが現れた。
『これはね、妖精と一時的に契約出来るようになる代物なの。女王様から頂いたの……これがあればルキちゃんを助けた後契約解除して貰えば私は妖精の花園に帰れるんだよ。だから、私と契約してウィル』
「とても危険な場所に行くんだよ? それでも行くのかい?」
『うん!』
ペペは真剣な表情をしている。本気のようだな。
「わかった。……ペシェ僕と契約して」
僕が真名を呼ぶと魔法陣が現れ、僕とペシェは光に包まれた。
「これで終わりなのかな?」
光が収まり体を見回しても特に変化がなかった。
『ステータス見てみて』
そう言われステータスを確認すると、HPとMP自動回復のスキルが付与されていた。MPの回復量がメフィストを倒した時に手に入れたリングよりも効果が上で、どうやら効果は重複すよるみたいだ。
『本当はもっと凄いけど一時的だからこれだけなんだ』
「そうなんだ。それでも助かるよペシェ。一緒にルキを助け出そう」
『うん!』
僕とペシェは夜空に浮かぶ浮遊城を見上げて誓う。
そして、仕事で残りの平日はログイン出来ずに当日を迎えた。




