第147話
視界が暗転して気がつくとファルトリアの噴水広場にいた。てっきり知らない場所に転移するものと思っていたから意外だ。
「こっちだ」
「あ、はい!」
アレイアさんは人通りが少ない裏路地を進んでいく。しばらく歩くと暗い道を淡く照らす看板が見えてくる。その前でアレイヤさんが立ち止る。どうやら目的地の着いたようだ。看板を見ると瓶とワイングラスのようなのが描かれていて、その真ん中あたりに「癒しの宿り木」と書かれていた。ここは、酒場なのかな?
アレイヤさんの後に続いて僕もお店に入っていく。
「あら、レイちゃん。いらっしゃ~い」
「マスター、その呼び方は止めて欲しんだが……」
「ふふふ。あら、あらあらあら! まぁなんて可愛い子のなの!」
マスターと呼ばれている筋骨隆々でドレスを着た男性が。
「今失礼なこと思わなかったかしら?」
間近に迫った笑顔に僕は全力で首を横に振った。
「い、いえ……綺麗なお、お姉さん、だなって――」
「まぁ! 嬉しいわ~!」
易々と逞しい腕に抱き上げられた。せ、背骨が……!
「マスター、それぐらいにしておいてくれないか?」
「あら、ごめんなさいね」
アレイヤさんのおかげで床に降ろされた。そのままマスターと呼ばれているお姉さんはバーカウンターに戻っていきショットグラスを持ち腕を組む。
「この店のオーナー兼クラン《美神の誘惑》のリーダー、キャサリンよ。よ・ろ・し・く・ね」
わー言葉の最後にハートマークが見えるな~。
「えっと、クラン《ラグナロク》リーダーのウィリアムって言います。よろしくお願いします」
僕は頭を下げるとキャサリンさんの手が頭に乗せられ優しく撫でられた。
「あの……一応成人しているんで……恥ずかしいんですけど……」
「あら、そうなのね。ごめんなさい、つい……ね。皆なら奥の部屋に集まっているわよ」
「助かる」
キャサリンさんの後をついて行き奥の部屋に向かうとそこには奥の席から《疾風の刹那》クランリーダーレオルさん。その隣に《パワーオブジャスティス》クランリーダーグラさん。そして、《究極召喚師団》クランリーダーのフーディアさんの三名。このファルトリアで有名な人達だ。
「ウィル君~久しぶり~」
席を立ち上がり歩いてくるレオルさん。
「聞いてよウィル君。ソルがさ、また強くなってね」
ソルとはレオルさんの従魔の巨大ライオンだ。
「今度こそ優勝するから、前に渡せなかったプレゼント受け取ってよね!」
……要らないって断った筈なんだけどな。
「今の言葉は看過できない。優勝するのは我だ!」
「いいえ、今回も優勝は私が貰います」
三人の視線が交わり火花が散っている。
「はいはいーそこまで。席に座りなさいあなた達」
飲み物を運んできたキャサリンさんのおかげで三人は席に着く。
「アレイヤ、私達を集めた訳聞かせてくれる?」
「そうだな。ウィル頼む」
皆の視線が集まる中僕は今までの経緯を全て話す。
「ふーん、特殊なイベントね……ドロップ品は各々のものでいいの?」
「はい、僕の目的はルキの救出です。それ以外は皆さんにお譲りします」
これも夏樹との話し合いで決めたことだ。
「どんなにレアなアイテムが出ても?」
「はい、構いません」
「本気なんだね。いいよ俺も参加するよ。あんま人いてもあれだし、少数精鋭で行くとするよ。それと、条件付けてもいい?」
「条件ですか? 叶えれる範囲なら……」
そう言うと不敵に笑うレオルさん。
何言われるか僕は身構える。
「そう身構えなくていいよ。一緒にダンジョン攻略して欲しいだけだから、さ」
「それなら構いませんけど……」
「じゃあ決まり。楽しみだな~」
頭の後ろで腕を組み嬉しそうにするレオルさん。なんか怖いな
「ウィリアム! お主が戦ったバアルとやらとは戦えるのか!!」
急に立ち上がって大声で言うグラさん。
「それは保証できませんが、可能性はあると思います」
「そうか。強者と戦うことは我の生き甲斐! 現れたら我に譲れ!」
参加してくれるってことで良いのかな? 物凄く頼りになるな。
「アレイヤは参加するの?」
フーディアさんが尋ねる。
「ああ、もちろんだ。クランで参加予定だ」
「その週は忙しくて、申し訳ないけど辞退するわ。弟さんが募集を出すのでしょ? 何人かは参加すると思うからよろしくお願いしますね」
そう言ってフーディアさんは席を立って部屋を出ていく。
「それでは、当日よろしくお願いします」
グラさんとレオルさんとフレンド登録して解散となった。
「ちょっと待って」
キャサリンさんのお店を出ようとした時に呼び取られた。
「私も行ってもいいかしら?」
意外な申し出に少し驚いた。
「え、ええ。大丈夫です。ありがとうございますキャサリンさん」
「ふふふ。あ、そうそう。まだ時間あるかしら?」
就寝時間までにはまだあるな。
「はい、大丈夫――ってうわあ!」
「決まりね!」
ひょいっとキャサリンさんに担がれ店の中に入る。状況が呑み込めない中アレイヤさんの顔が目に入り、頑張れと言いたげな表情をしていた。




