第144話
「ん……今、何時?」
枕元に置いてあるスマホに手を伸ばして画面をみると時間は昼の三時だった。
「結構寝たな……それに、お腹空いた……」
夜通しでゲームやってそのまま寝落ちしたからな。
何か食べようと部屋を出て居間に向かう。そこにはテレビを見ながら食事をしている夏樹がいた。
「兄貴、おはようー」
「おはよう。はぁ~……」
大きな欠伸をして冷蔵庫にある作り置きのを適当に皿に盛って温め夏樹の斜め横の椅子に座り食べる。
「母さん達は?」
「買い物。それ食べ終わったらログインするしょ?」
「うん、その予定」
急いで食事を済まして部屋に戻ってログインする。
「やっぱいない……」
ログインすればいつも通りにルキの寝顔が出迎えてくれていると淡い期待をしていたけど、そう都合よくないよな。寂しいな。
トントンと扉がノックされ、ベットから下り、扉を開けると夏樹とペペが立っていた。
『急いでいる所ごめんね、女王が呼んでるの』
「そうなんだ。わかった」
ペペの後を追って廊下を進み女王が待っている部屋に向かう。
アカネさんの事を聞いたらやることがあるからと先に戻ったそうだ。
部屋の前に着くと自動で扉が開き、ペペに入るよ促され進むと女王とツクヨミの二人が座っていた。他の女王達は帰ったのかな。
『急いでおるのに済まぬなお主ら』
「いえ、それは大丈夫です」
『そうか。ウィルよ。我が渡したリングをここに』
「はい」
左手人差し指に嵌めているリングを女王の前に言われた通りに置くと、女王は詠唱しだし、リングに色んな光が集まっていく。光が収まり女王がリングを手に持って観察する。
『ウィル、左手を出してくれ』
言われた通りに左手を差し出すと、女王は僕の手を掴み薬指にリングを嵌めた。
『おお、大胆じゃなティターニアよ』
ツクヨミは口元を扇で隠してニヤニヤしている。
「女王なにしてんの!? 兄貴の大事な薬指になにしてんの!?」
『いいではないか減るもんじゃあるまい』
「そう言うことじゃなくて」
話が進みそうになかったので夏樹の頭に軽くチョップする。
「なにすんだよ……」
「話が進まないから、少し黙って」
「そんな……!」
何故かしゅんとした夏樹は大人しくなった。
とりあえず薬指に嵌めた件は置いといてリングの事を尋ねる。
「このリングに何か施したんですか?」
『うぬ。我らはここから出ることが出来ない。女王同士のダンジョンの行き来は可能だが、浮遊城は別だ。助けに行きたくとも行けぬのが現状だ。それで、そのリングに我らの加護を付与したのだ。鑑定してみろ』
僕はリングを鑑定する。
勇者の指輪――五人の女王により加護が与えられた指輪。装備すると全ステータス上昇と全状態異常無効。それと一度だけ死をなかったことにする効果が付いていた。
ステータスみて上昇値をみて僕は絶句した。夏樹も横から顔を出し鑑定したのか苦笑いをした。
『これぐらいあれば大丈夫だと思うが油断するではないぞ』
「わ、わかっています。今更聞くのもなんですが、なんで薬指に……?」
『い、いいではないか! ほら、ジョブチェンジしに行くのだろう? さっさと行くがよい!』
女王に凄い勢いで部屋を追い出されてしまった。
「夏樹、これって……そう言う意味なのかな」
左手の薬指に嵌められた指輪を見て僕はそう呟いた。
「知らないよ! ほら行くよ!」
「う、うん」
インベントリから転移結晶のアイテムを取り出した夏樹は、僕の手を取りファルトリアに転移してギルドに向かった。




