第141話
女王とルキが観覧席に移動している間に僕はバアルの事を鑑定するも名前以外文字化けしていて分からなかった。少しでも弱点がわかればと思ったけど仕方ない。
女王とルキが移動したのを見届けてから戦闘を始める。
「ファイアーアップ、ストーンアップ」
攻撃力と防御力を上げる魔法を唱えるとビャッコとスザクが駆け出す。
バアルが動くタイミングで火属性の拘束魔法フレイムロックを唱え炎の鎖でぐるぐる巻きにする。続けて土属性の拘束魔法サンドロックも唱えバアルの足場を砂にして沈める。これで完全に動きを止めた。
「ふん、ヌルいな」
バアルは女王が使った黒い鎖の壊した時のように僕の炎を鎖も簡単に壊し、砂に埋もれた足を引く抜く。
僕が目を見開いているとビャッコが前足を振り下ろしてした。
だけど、バアルは足元が砂になっているにも関わらず半歩足を下げて体を逸らし避けてから回し蹴りをビャッコに決め吹き飛ばす。
ビャッコは吹き飛ばされるも空中でくるっと回り着地し、バアルの追撃の拳も躱す。そこにすかさずスザクが炎の剣を上空から落とす。
「効かぬわ」
バアルは右手を空に翳し炎の剣を受け止めた。
スザクは一瞬驚くもすぐに切り替えて青い炎を放つ。
今度は黒い障壁でスザクの攻撃を防ぐバアル。その間にビャッコとスザクは僕の下に戻ってくる。
スザクが放った青い炎が消えると障壁も消えバアルが姿を現す。HPはわずかに減っていたけど、直ぐに回復した。再生スキル持ちかよ……MPはリングのおかげで全回復しているな。出し惜しみしてられないな。
「来い……ゲンブ、セイリュウ」
「ガメ!」
「グラァ!」
召喚されたゲンブは僕の前へ、セイリュウは僕の後ろに待機する。
「面白い……」
この光景を見ても余裕の表情を崩さないバアル。
「ガメっ!」
僕が指示を出す前にゲンブが動き出しホールを水浸しにする。セイリュウも上空に舞い上がっていく。
バアルがセイリュウに視線を向けている隙にスザクはもう一度青い炎を放った。
「小賢しい」
またしてもバアルは黒い障壁で防ぐ。スザクの炎を剣は素手で受け止めて、青い炎は障壁で防いでいるはなんでだ?
「ガオ!」
岩の拳と共にビャッコが駆けてバアルに突撃する。
バアルは岩の拳とビャッコの攻撃を躱して距離を取った。
バアルが移動した所の水が動き出し、バアルを捉えた。そこにセイリュウの稲妻が降り注ぐ。僕も直ぐにHMPポーションを使って回復させ【神獣の一撃・天嵐】を唱えた。
バアルのHPはようやく五分の一が減ったけども、このままじゃジリ貧だ。MPポーションは残り五個。HMPポーションは残り三個。どうにか大ダメージを与えないと。
その時、電気を纏った水が弾け飛んだ。
「我にダメージを与えたな!」
バアルから途轍もない瘴気が溢れ出し、目が血走っていた。思わず僕は竦んでしまった。
「ガオ!」
僕の股下にビャッコは頭を入れそのまま持ち上げられ駆け出す。後ろの方で大きな音がして視線を向けると僕がいた所には大きく抉れていた。
「逃がさん!」
走っているビャッコの頭上から拳を振りかざしているバアルの姿が視界に入り、僕とビャッコは吹き飛び何度かバウンドして地面に横たわる。
顔を上げると召喚獣達がバアルに立ち向かっていた。だけど、バアルには届かなく返り討ちにあっていた。
痛む体に鞭打って奮い立たせ、ふらふらにならながらも立ち上がる。バアルのHPをみるとほぼ全快していた。
「まだやるか、人間よ?」
横たわっている召喚獣達をみて僕に問いかけるバアル。
「あった、り前だ……! 召喚獣達が諦めていないのに僕が諦める訳ないだろうが!」
ゆっくりと立ち上がる召喚獣達。それぞれの目はまだ死んでいない。やる気に満ちていた。
「ルキは渡さないし、女王には手を出させない! だから僕は負ける訳にはいかないんだ!」
「ガオォオオオ!」
「ピィイイ!!」
「ガメェエエエ!」
「グラァアアア!」
召喚獣達が空に向けて咆えると体から強い光り放たれ僕の目の前にウィンドウ画面が四つ現れ、そしてウィンドウ画面は一つに集合していく。そこには【四神の共鳴・黄龍】と記載されていた。
僕は藁にも縋る思いでスキルを発動すると、スザクは赤い玉に、セイリュウは青い玉に、ゲンブは黒い玉に、ビャッコは白い玉に変わり僕の魔導書に吸い込まれていくと天井を突き抜ける程の光が発せられた。
「なんだ、その光は……!」
激しい光だけど、僕には優しく温かい光に感じた。無意識に魔導書を開き僕は召喚した。
「来い、黄龍!」
上空に途轍もなく巨体で黄金に煌めく鱗を纏い、四色の玉を携えた龍が召喚された。




