第140話
夏樹視点です
いけ好かない金髪野郎の攻撃を防ぎ、兄貴がいる所からどんどん引き離す。すると、金髪野郎が動きを止める。
「貴方、先程王の前で仰っていたこと本当ですか?」
「対処出来るのが兄貴だけってことか? 誰がお前なんかに言うかよ! バーカ!」
「そうですか」
金髪野郎が再び剣を構えると、柄から炎が噴き出し、銀色だった剣が黒く歪な形に変わっていく。
「この姿になった剣の前では立っていた剣士はいない」
金髪野郎は一瞬で距離を詰めてくる。俺は刀で受け止めるが、金髪野郎の剣が刀身に触れた所から溶け出す。
「っ! 【霞桜】!」
体を霧状にして金髪野郎の後ろに回り斬り掛かるも、剣を構えられ無理矢理体を捻り、距離を離す。
刀に視線を落とすと溶けて削れていた。
「厄介な剣だな」
「お褒め頂きありがとうございます」
頭を軽く下げる金髪野郎。なんかムカつく。
ムカつくけどもやっぱり厄介な剣だ。このゲームにも武器破壊はある。武器が破壊されればスキルは発動出来るも威力は著しく低下する。直す方法はリアル時間で二十四時間経つか、鍛冶師のジョブを取得しているプレイヤーに直してもらうしかない。
「引くなら見逃してあげましょうプレイヤーよ」
不敵な笑みを浮かべ金髪野郎が変な事を言ってきた。
「誰が引くかよ。お前は俺が倒す」
「ふっ……後悔するがいい。冥府でな!」
剣を振り上げてくるのを俺は刀で受け止め徐々に溶け出す。
「諦めたかプレイヤーよ!」
勝利の笑みを溢す金髪野郎。俺の刀はそのまま根本が溶け、刀が折れる。
そのまま俺は体を回転させて折れた刀身から氷を刃にして斬りつける。
咄嗟の判断で金髪野郎は俺の攻撃は頬を掠めて距離を取られた。
「貴方……ただの剣士ではないのですね」
「お前には言わねーよ。あーあ、今のは決まったと思ったんだけどな……まぁいいさ【狂い咲け雪月花】」
俺の周りに火・水・風・土・雷・氷・光・闇の八つの属性から作られた刀が浮かぶ。
ジョブチェンジすると一部のスキルが変わり、俺がレベル50で使えるようになった【雪月花】も影響を受けて変わったのが【狂い咲け雪月花】だ。
「ふっ、面白いプレイヤーがいたもんだ。我が名はアモン。第七階層のダンジョンボスだ」
「……魔法刀士ナツキ」
「覚えておこう」
八つの属性の刀を操り金髪野郎――アモンに斬りかかる。アモンは剣で防ぐも俺の手数の多さに徐々に押され始め、畳み掛けてようやく倒せて、残ったのは悪魔の招待状だった。
「また要らない物を……兄貴、大丈夫かな……」
悪魔の招待状をインベントリに仕舞い、急いで兄貴達がいた部屋に戻る
「兄貴ーー! ルキーー! 女王ーー! ペペーー!」
部屋に戻ったけども兄貴達の姿な何処にもなかった。争った形跡もないってことは移動したのか?
「ナツキ! 無事だったのね!」
後ろからアカネさんの声がして振り向く。
「アカネさんも倒せたんだ。ちょっとびっくり」
「ひっどー! これでも私強いんだからね!」
「はいはい。あれ、フロストは?」
「ちょっとばかし無茶させちゃってね。今休ませているわよ。それよりも、ウィル達いないのね」
きょろきょろと部屋を見回すアカネさん。
その時、天まで伸びる強い光を発する柱が出現するのを窓から見えた。
「あの光はなんなの!?」
「わかんないけど、あそこに兄貴達がいると思う」
「急いで向かいましょう!」
俺とアカネさんは光の柱を目印に急いで向かった。
兄貴、無事でいてくれよ。




