第138話
「なぁ明日も手伝って欲しんだけど」
電車の中、隣の同僚に頼まれる。その時、丁度降りる駅に到着した。
「ごめん。明日から土日は予定あるから手伝えない。それじゃ、月曜日~」
「え~~!」
同僚に手を振って僕は電車を降りて家に向かった。
「あら、おかえりさない亜樹。もうご飯出来てるからね」
帰宅すると母親と廊下でばったり会う。
「うん。あ、夏樹部屋にいる?」
「居ると思うわよ」
「わかった」
階段を上って夏樹の部屋に向かい扉をノックするも返事は返ってこなかった。扉を開けてみると部屋の中は真っ暗で誰もいなかった。あれ、いない。靴はあったし、トイレかな?
僕は自室に向かい扉を開くとベットの上で夏樹が寝ていた。
「ん……兄貴、おかえり……」
照明を点けたことで夏樹が起きる。
「ただいま。なんで僕の部屋で寝てんだよ」
「なんとなく? はぁ~……」
大きな欠伸をする夏樹。その間に僕はさっさと着替えを済ます。
その後、夏樹と居間に行き、夕飯を食べてからログインした。
「さて、何処がいいかな~。《王家の墓所》にする?」
「あそこはみんなで攻略したいからな」
絶賛ヴェスナー達は来週のテストに備えて、親にゲームを制限されている。まぁ制限されているのはヴェスナーとセゾンの二人だけど。ヘストとクシュは二人に合わせているだけだ。
「まぁ六階層以降行かなきゃいいだけだし、そこでもいいと思うよ」
「それもそうだね。そこに……どうしたルキ」
僕の膝の上で座っていたルキが立ち上がり窓から庭を眺め始める。僕と夏樹はルキの隣に移動して一緒に見ると光る物体がプカプカ浮いていた。
僕はテラスを通って庭に出ると光る物体が急に近づいてくる。
『ウィルいた!』
光る物体の正体は妖精のペペだった。
「え、なんでペペがここに?」
『そんなことはいいから! ウィルお願い! 女王様を助けて!』
今にも泣きそうになるペペを落ち着かせ詳しく話を聞くと、どうやら女王の下に四人組が訪れ、何かに協力しろと迫っているらしい。それに協力しないと壊すと聞いたペペは僕が埋めた木を媒体にして転移してきたそうだ。
「ペペ。急いで妖精の花園へ行こう。夏樹もいいよね?」
「おう。女王には世話になったしな」
「ルキもいく!」
『ありがとうみんな……』
涙を流しているペペの頭を僕は優しく撫でる。
「アカネさんー。俺達の話聞いていたんだろう?」
急に夏樹が名前を呼ぶと屋根からアカネさんが飛び降りてくる。
「いつから気づいていたのよ」
「割かし最初から。で、アカネさんの答えは?」
「もちろん、イエスよ! ついて行くわ」
ペペはルキの後ろに隠れじっとアカネさんを見る。そんなペペに僕は優しい声で言う。
「大丈夫、この人は僕達のクランの人だから安心して」
『ウィルがそういうなら信じる』
ペペはルキの後ろから出てアカネさんの目の前に飛んでいき挨拶をする。
『私はペペ。よろしくお願いします人の子よ』
「あら可愛い妖精さんだこと。私に任せてちょうだい!」
自信満々に告げるアカネさん。
僕と夏樹、アカネさんはパーティーを組み順番万端。
『では、皆さん。お城に転移します』
光に包まれ景色が変わり、見知らぬ部屋に居た。
『ここはお城の一室、女王は自室にいます』
「分かった。案内頼むよペペ」
『任せて!』
部屋を出て廊下を進むと大きな蠅が徘徊していた。
身を潜めて鑑定するとソルジャーフライと出る。攻撃力はそんな高くないけど敏捷力が高い敵モンスターだ。ここでは敵モンスターは湧かないはず。なのにどうして湧いた?
「ペペ、なんで敵モンスターがいるの?」
『分からない。秘密の抜け道使うわ。こっちよ』
敵モンスターに見つからないように調理場のようなところに来た僕達。ペペが壁を触り仕掛けを動かすと壁がスライドして通路が現れる。松明の灯りのみの通路を進んでいき、女王がいる部屋に着いて様子を伺った。




