第136話
アルナさんの一撃を食らいセイリュウから落とさ空中に放り出され地上に向かって落ちる。
追撃を加えようとアルナさんが僕に向かって拳を構え向かってくるのとセイリュウが怯んで動けなくなっているのが視界に入る。
何とかステータスを確認してみるとＨＰは半分まで減っていた。大分時間が経ったおかげでリングの効果でＭＰは半分まで回復している。急いで【四神の領域・爆風】を唱え、気流を操り上昇気流で生み出し、一気に上昇した。
「なにそれ！ 聞いていないよ～～～！」
僕とすれ違ったアルナさんの叫びが響く。
どうにかセイリュウがいる所まで戻ってくると、立ち直ったセイリュウが近づいて僕は背にしがみついた。
「大丈夫かセイリュウ？」
「グラァ」
セイリュウのステータスを見るとＨＰは殆ど減っていない。確実にアルナさんは僕だけを狙ったようだ。召喚士本体のＨＰも防御力は紙のように薄っぺらい。召喚獣を無視して本体を叩くのは当たり前だから仕方ない。
にしても、アルナさんの一撃もだが、脚力すごいな。かなりの高度にいたのに一瞬で来るんなんてびっくりした。
「ガオォオオオ！」
ビャッコはアルナさんを足止めするために色んな魔法で攻撃をしている。
アルナさんはギリギリで躱しているけども、躱し切れずに被弾して少しずつアルナさんのＨＰが減っていた。まぁそれよりも先にビャッコのＭＰが尽きるな。
「ゲイルアロー」
セイリュウの背の上で魔法を唱え無数の薄緑色の矢を生成する。セイリュウも同じ魔法を唱えてくれて空が埋め尽くされた。
そして、一斉に地上に向かって雨のように降り注ぐ。ビャッコに被弾しないように一旦戻して、空中でも動けるようにスザクを召喚。召喚されたスザクは上手く気流に乗って滞空している。
降り注ぐ矢が止むと土とか砂が舞い上がって地上が見えない。ビャッコを再召喚して僕のＭＰはもうないし、セイリュウもかなり消耗している。スザクはＭＰは全快だけど押し切れるか……
その時、急に風が吹き視界が晴れる。その中心でアルナさんが二つの拳を激しく光らせていた。
「これで終わりにするよ！ 【鬼神の怒哮】！」
アルナさんから極太の光線が放たれた。あの範囲は避け切れない。こっちも迎え撃つしかない。
「ウィルーーー！ がんばってーーー！」
色々な音が交わり騒音の中、ルキが応援している声がはっきり聞こえた。すると、僕の目の前に一時覚醒のウィンドウ画面が現れた。それも二つ。これを押せば勝てる気がするけど、僕は【ＮＯ】を選択して急いで少ないＭＰでファイアーボールを唱える。
スザクは体の前で翼を折り曲げ交差させ、一気に広げて青い炎を纏った衝撃波を放つ。僕の特大の火球とスザクの青い炎が混ざり青い火球へなり、アルナさんが放つ光線とぶつかる。
僕の青い火球とアルナさん光線はしばらく拮抗するも、光線は青い火球を吞み込み僕は白い光の中に消えた。
気が付いた僕はアルナさんにお姫様抱っこされていた。
「お、やっと起きたねウィル！ 今回は私の勝ちね！」
そう言うアルナさんの頭上には勝者の名前が特大のスクリーンに映し出され周りから拍手喝采が聞こえる。その時、僕は負けたんだと自覚した。
「あの……この状況は……？」
「ん？ ああ、これ？ ウィルが落ちてきたから受け止めただけだよ～」
アルナさんに降ろしてもらう。空を見ると、セイリュウとスザクの姿が無かった。
「ウィル！」
僕の名前を呼びながらルキが駆け寄ってくる。
「ルキ……負けちゃったけど、声聞こえてたよ。ありがとな」
そう言いながら僕はルキの優しく頭を撫でる。
「お疲れ。凄かったぜ二人とも！ お前も凄かったけど、アルナさんの最後の光線凄かったです！」
「そう？ えへへ、ありがとう。じゃあ先行くね？ またね、みんな」
アルナさんは観客席に手を振ってから去っていく。それに合わせてぞろぞろとプレイヤー達も闘技場を出ていく。
「疲れたから先にログアウトするね」
「おう、また会社でな」
僕達も闘技場を出ていき、先に屋敷に転移して、寝室に戻り召喚獣達を順番に召喚する。
小さくなったゲンブは頭の上に。スザクは右肩に止まり、セイリュウは左腕に巻き付く。
ビャッコは僕が胡坐組んでいる中で座るルキの抱かれている。
召喚獣達とルキと一緒に存分に遊んで僕はログアウトした。
ヘッドギアを外し僕は天井眺める。
「はぁー……なんか、悔しいなぁ。次は……いや、もう負けたくない。強くならなきゃ」
僕は誓いを立て瞼を閉じ眠りに就いた。
