第131話
セゾンのおかげで罠の位置も事前に知っていたため罠にも引っかからず、敵モンスターにもほとんど遭遇することはなかった。遭遇してもスザクがいる状況でのファイアーアップで攻撃力を上げている為か難なく小型や中型のゴーレムを倒しているおかげでサクサク進んで、今僕達は五階層の敵モンスターが湧かない空間で小休止中だ。
「よしみんなー」
その一言で全員の視線がヴェスナーに集まる。
「こっから大型も出る。ウィルのバフがあるからって油断すんなよ!」
「「「了解!」」」
僕達は立ち上がってこの空間を後にしダンジョン内を進む。
遠くから戦闘音が聞こえ他のパーティーと接触しないように迂回しながら進んでいくと先頭を歩くセゾンから隠れるようにと合図がくる。僕達は倒れている石柱に身を潜めているとドシドシと重たい足音が聞こえてくる。
松明に照らさせ黄金に煌めく天井すれすれまでの巨体が露わになり僕は急いで鑑定した。
敵モンスターの名前はゴールデンゴーレム、HPと防御力が異常に高く魔法耐性もそこそこある。ごり押しが出来ない相手だ。
「ゴールデンゴーレムは六階層から低確率で湧くレアモンスターがなんでこんなところに?」
そう夏樹は呟きながら僕に視線を向ける。なんでこっち見るんだよ。
「あいつはパスだ。セゾン頼む」
「了解っす」
セゾンがまたも姿を消す。少し経つと小石がコロコロと音を鳴らしながら転がっていき、ゴールデンゴーレムはそれに反応して移動し始める。僕達は音を立てないように慎重に反対側の通路に向かった。
「どうにか抜けたな」
「そうだね。緊張したー」
「スリル満点、だね!」
「そう思っているのクシュだけだよ」
クシュの一言で一気に場が和み笑いが起きる。
少し休んだ後、僕達はダンジョンを進みようやく中ボス部屋に辿り着くと扉は開いていた。
「ここの中ボスはランダムだ。何が出てくるかわからねーけど、勝つぞ!」
気合の入ったヴェスナーの言葉に頷き、中ボス部屋に入ると扉が閉まり、部屋が明るくなっていくと部屋の中央には岩ようなモノを背負っている巨大な亀がこちらを睨んでいた。
鑑定してみると、名前はアダマンタイト。どのステータスもゴールデンゴーレムよりも大きく上回っていることしか分からなかった。
皆も鑑定しているのか嫌な顔をしている。
その時、アダマンタイトは咆哮をすると、地面から鋭い岩が生まれこちらに向かった襲ってくる。
「舐めんじゃねーよ!【ワイドセンチネル】」
ヴェスナーの盾が横に広がってそこから広範囲に光の障壁を展開して攻撃を防ぐ。
「防御はたけぇーけど攻撃はそこまでか……守りは任せろ! 全力で攻撃をしてくれ!」
「私がやる……!」
クシュは弓を構えると光の弦と現れ引くと、小さな光が集まり矢を形成していく。
「貫け……【シュピールアロー】」
クシュの周りに沢山の魔法陣が浮かび、クシュが矢を放つと同時に魔法陣から矢が放たれアダマンタイトに飛翔する。
だが、アダマンタイトは手足を引っ込めてクシュの攻撃は防がれダメージは無かった。
「ウィルのバフがあって通じないのか、どんだけ硬いんだよ。作戦変更セゾン!」
「了解っす!」
セゾンは懐から瓶を取り出しアダマンタイトに向けて放り投げる。瓶はアダマンタイトに当たると砕け散り中のどろっとした液体が零れ付着した瞬間、アダマンタイトは悲鳴を上げる。
アダマンタイトのステータスには猛毒のバフが付いて少しずつHPが減り始める。毒は効くようだけど、時間がかなり掛かってしまう。
「ヴェスナー! 準備できたよ!」
「了解! 【ワイドセンチネル】」
光の障壁が展開されたのを確認してヘストは魔法を唱える。
「……プロミネンス・ノヴァ」
アダマンタイトの頭上に黒い火球が出現しゆっくりと下降し始め、アダマンタイトに接触した途端この部屋を埋める程の大爆発が起きた。ヴェスナーのおかげでこちらの被害は一切出なかった。
「ウィリアムさんのおかげでかなり威力が上がったけど……」
「効くか、だな」
視界が晴れると、アダマンタイトは手足を引っ込めた状態だったがダメージが通ったようでHPもかなり減っていた。
「よし、効いている! 俺とクシュとナツキが引付け役。その隙にセゾンはありったけの劇毒薬をぶちまけろ。ヘストとウィルは最大力の魔法を放て!」
「「「了解!」」」
皆の連携によりアダマンタイトのHPがどんどん減っていき、長時間の戦闘の末、どうにか中ボスのアダマンタイトを倒すことができた。




