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バグから始まるVRMMO活動記  作者: 紙紙紙
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第127話

 壮大なBGMが流れる中、様々な音が重なり合う。金属がジャラジャラと擦れ合う音、カードをシャッフルする音、鉄の球がルーレットを回る音。そして、人々の歓喜と絶望の声が絶え間なく聞こえ耳が痛くなる。僕達は今、ナハルヴァラのカジノに来ている。

 夕食の後、ナハルヴァラにあるダンジョンに行くか、カジノに行くかで意見が分かれたけど、最終的に母親にあみだくじを作ってもらって公平に決まりカジノになったのだ。


「一攫千金狙うっすよ!」


「おうよ!」


 テンションバク上がりのヴェスナーとセゾンはスキップしながら人混みの中に消えていく。

 まぁ、あの二人はカジノ派だったし、浮かれるのも仕方ないか。


「……あっち行こう」


「う、うん」


 ヘストの手を引いたクシュ達もどこかに消えた。

 クシュの機嫌が悪いのは、まぁ、御察しで。頑張れヘスト!


「兄貴はどうすんの?」


「うーん、どうしようかなぁ~。夏樹は?」


「俺はもうすぐで始まる従魔と召喚獣によるレースを見に行く予定だよ」 


「そんなものまであるんだ。特に行きたいところもないしな……」


 ちらっとルキを見ると不安そうに辺りをきょろきょろと見ている。時折ビクッとなっている。大きい音は苦手のようだ。ここにいるよりかはいいか。

 視線をルキに合わせ僕は聞く。


「動物たちのレースがあるんだって、見に行く?」


「うん……」


 元気のないルキの頭を撫で僕達はレース会場に向かった。

 レース会場は意外と人が多かったけど、さっき居た所よりかは大分静かだ。扉一枚区切っただけでこれか。

 まぁ、それよりも人が多くてルキの身長的にまともにレースを見ることができないな。最前列には行けそうにないし、僕が肩車してもな……


「夏樹、肩車を頼んでもいい?」


「兄貴を?」


「なんでだよ! ルキのことだよ!」


「分かってるって。冗談だよ」


 夏樹はルキを肩に乗せ一気に立ち上がった。これで大分見晴らし良くなったと思うけど。


「ルキ、見える?」


「うん! みえる!」


 ちょっとは元気が出たルキは夏樹の肩の上ではしゃぐ。夏樹もしっかりとルキの足を固定してまったくふらふらしてない。


「そう言えばさ、このレース当日参加できるんだよね。兄貴出てみたら?」


「ゴッドクラスだけどいいの?」


「飛行するのはダメのとサイズ制限あるだけだし、いいんじゃね? それとルールなんだけど、プレイヤーを乗せて屋外のコースを走るんだけど、プレイヤーはスキル使用禁止。パートナーのみ使用可能。ちなみに勝ったら景品あるよ」


「景品って?」


「原理は分かんないけど、その人にとって今欲しいものがもらえるらしよ」


「そうなんだ……参加してみようかな」


「お、兄貴にしては珍しい。参加するなら受付あっちだよ」


「んじゃいってくる」


「「いってらっしゃい」」


 二人に後ろ向きで手を振り、夏樹が指差した方に僕は歩き出す。


「レース参加予定の方はエントリーする従魔もしくは召喚獣と共に受付までお越しくださいー」


 女性の係りの方がメガホンを使って誘導してる。

 言われた通りに僕はビャッコを召喚して受付に並ぶ。周りの視線が凄かったけど問題なく受付を済まして一人用の控室へ案内された。


「ビャッコ、頑張ろうな」


「ガオ!」


 ビャッコのモフモフを堪能しながら過ごしているとアナウンスがされ、僕とビャッコはコートに向かうと他の参加者達も姿を現しコート上に六人と六体が揃う。


『これよりレースを始めます。司会進行役のラウズと申します、以後お見知りおきを。それでは、参加者の方々の簡単に自己紹介させていただきます』


 会場が一気に盛り上がる。


『エントリーナンバー、一番ケレス選手。パートナーは純白の白馬の従魔ユニコーン!』


 ケレスさんは白銀の鎧を着ていてユニコーンに乗っていると神秘的な雰囲気を醸し出していた。


『エントリーナンバー、二番ベム選手。パートナーは相手を石化させることができるオオトカゲの従魔のバジリスク!』


 石化か……確か目を合わせるとダメなんだっけ? 気を付けよ


『エントリーナンバー、三番アスク選手。パートナーは召喚獣の中では上位に食い込む程の防御力の持ち主ダイヤモンドウルフ!』


 あれ、召喚獣なんだ。すっごい綺麗だな。


『エントリーナンバー、四番ユスティ選手。パートナーは弓の達人ケンタウロス! こちらは従魔だそうです』


 ファンタジー映画でよく見るケンタウロスか。あの弓の攻撃は要注意だな。


『エントリーナンバー、五番クロノ選手。パートナーは今回サイズ制限ギリギリの召喚獣、アースドラゴン!』


 アースドラゴンは翼がない代わりに地上での行動に特化したものとラウズさんが補足説明してくれた。


『最後のエントリーナンバー、六番ウィリアム選手。パートナーは白くてふさふさの毛並みを持つ召喚獣ホワイトタイガー!』


 なんか、説明が雑な気が……まぁ正体隠してるし別にいいけど。  


『以上六名によるレースになります! では、それぞれの指定されたゲートまで移動をお願いします』


 それぞれ背に乗りゲートに向かう。

 位置に着くとレース会場は静まり返る。

 そして、一番下の赤ランプが点灯。次にその上の赤ランプが点灯。しばらくして緑色のランプが点灯同時にゲートが開き、一斉に参加者達は駆け出した。




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