第122話
また同僚の仕事を手伝ってしまい帰りが遅くなってしまった。
電車の座席に座っているとスマホが震え、通知を見ると夏樹からだった。
無事にアカネさんはクランに加入したそうだ。これで《ラグナロク》は三人になるのか。
そう言えば、アカネさんにはハウジングを見せたのかな?
夏樹に尋ねると顎を外す程に驚いたそうだ。まぁ驚くよな~あの大きさは。
そうこうしているうちに降りる駅についていた慌ただしく降りて改札を出る。
「兄貴、おかえり~」
帰宅すると階段を上がっている夏樹とばったり会う。
「ただいま」
「帰り遅かったけど、残業?」
「まぁ、そんなもん。夏樹は休憩?」
「明日早いから今日はもうしないよ。兄貴は?」
「少しだけやるよ」
「そっか。んじゃお休み」
夏樹は手を振って階段を上って自室に戻っていく。
僕も自屋に入り部屋着に着替えぱぱっと夕食と風呂を終わらせてログインする。
目を開けるとルキの頭髪が目に入る。ルキは目を閉じて寝息を立てていた。僕は柔らかそうな頬を突っつく。
「……ウィル?」
「あ、ごめん。起こしちゃってね。今日は何処にも行かないからこのままでいよっか」
「うん」
ルキは僕の方に体を寄せて目を瞑る。
その時、廊下から爆発音が聞こえた。またアテムアさんかな?
「すごい、おとだね。アテ?」
「そうだね。確認してくる」
「ルキもいく」
僕とルキはベットから降り廊下に出てアテムアさんの工房になっている部屋に向かった。
「あら、二人共いたのね」
道中でアカネさんと出会う。相棒のフロストは召喚していないようだ。
「こんばんは。アカネさんも爆発音を聞いて?」
「ええ、そうよ。何だったのかしらあの爆発音は?」
「多分、アテムアさんだと思います。前にもあったんで」
「アテムアさん? …………それって機工学師アテムア・テーラーのこと?」
アカネさんは目を見開いてアテムアさんのフルネームを言った。
アテムアさんは確か機工士だったと思うけど、機工学師……きっとジョブチェンしたんだろうな。
「なんで、そんな有名な人がここにいるのよ?」
夏樹……説明していないないこれは。
「いつもお世話になっているから空いている部屋を貸して工房として使っているだけですよ」
また爆発音が響く。今度は何をしているんだあの人は。
「そんなことよりも早く行きましょう」
「え、そ、そうね」
僕達三人は急いでアテムアさんの部屋に向かう。
部屋の前に着くと少し扉は開いていたけど煙は出ていなかった。
ノックしてから入ると透明な箱を見つめているアテムアさんが佇んでいた。
「アテムアさん?」
「ん?」
声を変えるとゴーグルを装着していたアテムアさんが振り返る。
「おお、どうしたいんだいアンタたちこんな時間に。ん? それと見かけない顔だね……誰だい?」
「アテムアさんこんばんは。こちらは新しくクランに入ったアカネさんです」
「新メンバーかい。アタイはアテムアさ」
アテムアさんを左手を出すと、アカネさんは手汗を拭いてから握手をした。
「アカネ・シラヌイです! 機工学師のアテムアさんに会えて光栄です! アテムアさんの作ったアクセがどれも素晴らしくてファンなんです!」
「そ、そうかい……」
目を輝かせて握手をするアカネさんに若干引いているアテムアさん。
「アテムアさん、いつから機工学師にジョブチェンしたんですか?」
「そう言えばいってなかったね。大会が終わってアンタを助けた後、製作に没頭していたら、いつの間にかカンストしてたのさ」
「そうなんですね」
話もいい段落して僕は来た目的を尋ねる。
「あの、さっき爆発音が聞こえたんですけど……」
「音が漏れていたようだね。すまない」
「それはいいんですけど、また鉄巨人ですか?」
アテムアさんは首を横に振る。
「いんや。鉄巨人は古代竜の情報が見つかるまで止めているよ。アタイが使ってたのはこれさ」
アテムアさんから野球玉ぐらいの大きさで真ん中にはタイマーみたいのが取り付けられている黒い球体を渡された。
「これは……なんですか」
「詳しい事は秘密だけど、簡単に言えば爆弾さ」
「……返します」
僕は速攻でアテムアさんの手に返す。
「アタイの意思でしか起爆出来ないようにしてあるさ。これを弄りまくって今度の大会はアタイが勝つよ!」
爆弾を掲げてアテムアさんは高らかに宣言した。めっちゃやる気だな。
その後、アテムアさんは没頭するようで、僕とルキ、アカネさんは外に追い出された。
アカネさんはまだログインするようだったので、アカネさんと別れ寝室に戻りログアウトした。




