第12話
「ゴッドクラスが四匹……」
夏樹は順番に四匹を見渡し深い溜息を吐く。
「この事を知っているの俺以外にいる?」
「いないよ。四匹同時に見せたのも信頼している夏樹だけだよ」
「そ、そうか……!」
そういうと夏樹は少し嬉しそうにしている。
そんな夏樹の足元にビャッコが近づき匂い嗅ぎ始める。
「兄貴、これ、どうすればいい?」
「気が済むまでやらせてあげて」
「わ、わかった」
ビャッコは夏樹の裾を咥え引っ張る。
夏樹は困惑しながら見守る。
「ガウ!」
ビャッコは夏樹の足に寄り掛かりながら夏樹を見上げる。
「夏樹、ビャッコが抱き上げて欲しいみたいだから――」
「えっ! 無理! 無理だから! 動物眺めるのは好きだけど触るのは無理!」
夏樹は頭と手を横に振り全力で断る。
昔、家族で動物園行った時ふれあい広場で触っていた動物が急に体調を崩したことがあった。その時から夏樹は動物を触らないよにしている。
勿論、夏樹のせいではない。たまたまだった。だが、夏樹にはちょっとしたトラウマになってしまったのだ。
――ガブっ!
「痛っ!」
なかなか抱き上げてくれない夏樹に少し怒ったビャッコは足に噛みついた。
僕はビャッコを引き剥がし抱える。
「兄貴、こいつ狂暴……!」
「夏樹がさっさとしないからだよ。大丈夫だから、ほれ?」
「…………」
夏樹は恐る恐る手を伸ばすがすぐ引っ込んでしまう。やっぱだめか。
「……兄貴、やっぱ――」
「ガウ!」
「おわっ!」
腕から抜け出したビャッコは夏樹に飛びかかり一緒にベットに倒れる。
目を見開いている夏樹の頬をビャッコは遠慮なく肉球でぷにぷにする。
僕はそんな二人――一人と一匹だけど――に近づき夏樹の手を持ちビャッコに触れさせる。
「どう? ビャッコの毛並み良いだろう?」
「うん……」
夏樹は優しくゆっくりビャッコを撫でビャッコの毛並みを実感する。
「チュン!」
スザクも肩から飛び去り夏樹にもとに。
ビャッコと一緒に夏樹の腹の上で遊び始める。
その光景を僕は優しい眼差しで見守る。
「ふぁ……」
眠くなってきた僕は時計を見ると時間は夜中の三時を表示していた。
「夏樹そろそろログアウトするよ」
「ええ! まだいいじゃん! 一徹とか余裕だからもう少しやろうよ兄貴!」
「徹夜なんか学生のとき以来してないんだから無理。眠い。今日もするんだから一旦寝てからしよう?」
「わかったよ……またな!」
そう言い夏樹は先にログアウトする。
僕も四匹を戻した後ログアウトした。
ヘッドギアを外し起き上がろうとしたときドアがノックされる。
「兄貴? まだ起きてる?」
ベットから下りドアを開ける。
「どうした?」
「えっと……さっきはありがとう、兄貴。それが言いたかっただけ。おやすみ!」
「お、おう。おやすみ」
夏樹は急いで部屋に戻っていく。
どこぞのツンデレキャラかよって思ったけど口には出さない。
それよりも夏樹のトラウマが少しでも克服できてればいいかな。
まぁ何より。
「眠い……」
眠すぎて風呂に入るのも面倒くさくなった僕は部屋に入り、ベットにダイブして眠りに就いた。




