第113話
部屋を出て階段を降りている時に玄関で靴を履いている母親を見かける。
「出かけるの?」
「亜樹、いたのね。 ちょっと買い物にね~。あ、そうだ! 亜樹暇でしょ? 買い物に付き合って?」
「え……ちょっと、忙しい……」
「ダメ?」
「はい……行きます……」
断ることが出来ない笑みに僕は渋々買い物に付き合うことにした。
急いで着替えて、パン一枚を食べ車に乗り――何故か僕が運転することになったけど――デパートに向かう。
母親の買い物に振り回され僕の両手には大量の紙袋が。
今は母親は女性モノの店に入ったので外の椅子に腰掛けて待っている。一時間も待っている。いつ出てくるんだろう……
「ねぇ、あれってウィルだよね?」
「え? あ、本当だ。外なんだから名前で呼びなよ楓。亜樹さんーー」
「ん?」
暇つぶしで本を読んでいると名前を呼ばれ顔を上げるとそこにはヘストとクシュが並んでいた。
「えっと、颯斗と楓だっけ? 名前違ったらごめん」
屋内ならゲーム名でもいいと思うけど流石に屋外だと本名で呼んだ方が良いと思い二人の名前を感で行ってみる。
「あってますよ。何してるんですか?」
「母親が出てくるの待ってるだけ」
僕は両手に持った大量の紙袋を二人に見せた。
「荷物持ち?」
「まぁ、そんなところ。二人は? もしかしてデート?とか」
冗談で言うとヘストは頬をボリボリと掻き、クシュは視線を逸らす。
「え……デート、なの? てか、付き合ってたんだ!」
「中学卒業式の時に告られました……」
「告りました! 颯斗ヘタレだから私から言った」
「ひっど! 俺だって言いたかったんだからな!」
「先手必勝ー」
「使い方間違ってるからな!」
なんか痴話げんかが始まった。思わず笑ってしまい、二人が見てくる。
「ごめんごめん。全然気付かなかったよ。お似合いだよ二人とも」
「あ、ありがとうございます」
「うん!」
「亜樹~お待たせ~。あら、この子達は亜樹の知り合い?」
二人と話していると母親が紙袋を持って戻ってきて二人の事を尋ねてくる。
「二人はゲーム仲間の」
「秋篠颯斗です!」
「冬賀楓、です!」
「二人とも、夏樹の高校の後輩」
「あらそうなの! まぁまぁこんな可愛い子達が夏樹の後輩なのね! もしかして、前に亜樹が送ってた後輩ってこの子達なの?」
「そうだよ。まぁ二人の邪魔しちゃ悪いから母さん行くよ」
「え、あー……なるほど。そうね」
二人を見た母親は察してくれたようだ。
「颯斗君に楓さん、また家に遊びに来ていいからね。それじゃ」
二人に軽くお辞儀して僕達は残りの買い物を済まして車に乗り帰宅した。
荷物を両親の寝室に持っていき、食材を冷蔵庫に入れると夏樹が部屋着のままソファーに倒れ込む。
「どうしたの?」
「眠い……」
「眠いって……今までやってたの?」
「……うん。どうにか、ナハルヴァラの手前の村まで行けた」
むくりと体を起こす夏樹はそのままトボトボと洗面所に向かっていく。
入れ替わりに両親が居間に来る。父親はソファーに座りテレビを見て、母親は台所に。
そのままの流れだ僕も夕飯作りを手伝うことになった。
ぱぱっと終わらせ、家族四人で食事をし、先に終わった僕は食器を流しに置き部屋に戻る。
「兄貴?」
ヘッドギアを付けようと横になる時に夏樹が部屋に入ってくる。
「ログインするの?」
「するって言ってもルキをちゃんと寝かせるだけだけど。夏樹は寝なよ?」
「分かってるって。あのさ、兄貴明日なんだけど……」
「行くんだろう?」
そう言うと夏樹は目を輝かせる。
「兄貴分かってる! んじゃ寝る。おやすみー」
夏樹を見送ってからヘッドギアを装着してログインする。
気が付くとログアウトした時と同じ状態だった。
ルキを起こさないようにそっと抱き上げ寝室に戻りベットに寝かせると、ルキが瞼が少し開く。
「ウィル?」
「ごめん、起こしちゃったね」
ルキの頭を優しく撫でる。
「明日新しい所へ行くから今日はもう寝ようね」
「あたらしところ? たのしみ……」
ルキはそれだけ言ってまたて眠ってしまった。
「おやすみ」
ルキに毛布を掛けてから僕はログアウトして早々に寝た。




