第108話
しばらく帰宅してはルキと屋敷で全力で遊ぶのを休みの前日まで繰り返した。
その間、アテムアさんがちょいちょい屋敷に来ては部屋を魔改造していた。
夏樹は友人達と一緒に行動して拠点の街の人一つ――砂漠の街ナハルヴァラに向かっているというのを夕飯の時に聞いた。どおりで見かけないわけだ。
で、ようやくの金曜夜。いつもの時間にログインすると早速ルキに尋ねられる。
「もういく?」
「行くよ。今日まで我慢してくれてありがとなルキ」
ルキに目線を合わせ頭を撫でる。
「ううん。ウィルとあそべてたのしかったよ?」
「そっか。よし、じゃ――」
妖精の花園に転移をしようとした時、屋敷の中から爆発音が聞こえた。
爆発音の方向的にアテムアさんの工房の部屋かな?
「ごめんルキ。ちょっとだけ様子を見に行ってもいい?」
「うん、ルキも気になる!」
僕はルキの手を繋いで急いで向かった。
部屋の前に着くと扉の隙間から煙が少し漏れていた。ゆっくり扉を開け部屋の中を見回す。
「アテムアさーん。大丈夫ですか……?」
すると、奥から咳き込みながらアテムアさんが姿を現す。
「大丈夫ですか!? おっと、ルキはそこで待ってて!」
「うん!」
付いてきそうになるルキを部屋の前で待たせ僕はアテムアさんに駆けつける。
「大丈夫ですか? 何があったんですか……?」
「ちょっと……ごほごほっ……失敗しちゃってな。悪いけど、換気を頼めるかい?」
僕は頷き窓を全開にする。部屋の中を漂っていた煙が外に流れ出しクリアになる。
「え……これ、なんですか?」
すると、天井すれすれになる程の巨大なロボットが現れる。
「こいつは鉄巨人だ。後少しで完成なんだが……こいつに合うコアが作れなくてな……あれさえあれば……」
アテムアさんは悔しい表情になる。
「アテ! これさわっていい?」
部屋の前で待っていたルキがいつの間にか鉄巨人に近づいて目をキラキラさせている。
「危ないから触れちゃいけないよ」
「はーい」
アテムアさんに言われルキは触ること諦め周りをぐるぐると回りながら眺めている。
「鉄巨人が動いたらあの子は喜ぶと思うかい?」
「きっと喜ぶと思いますよ」
「そうかい……よし、頑張って作ろうかね!」
「あんま無理はしないでくださいね?」
「分かっているわよ!」
アテムアさんは笑みを浮かべた。
「じゃあ僕達は出かけてくるんで。ルキ行くよ」
「はーい」
鉄巨人から離れ僕のもとまでルキが駆け寄ってくる。
「今からなのかい?」
「はい。夜景も綺麗なんで見せようかって。敵モンスターもいないんで安全です」
「安全なら、まぁとやかく言うつもりはないけど。どこに行くんだい?」
「妖精の花園に――」
「ウィル、はーやーくー!」
我慢の限界なのかルキが催促する。
「はいはい。じゃあ僕達は――」
今度こそ転移をしようとするとアテムアさんに両肩を掴まれた。
「妖精の花園に行けるか!?」
すごい迫力のアテムアさんの顔が目の前に。それよりも、肩が痛い!
「あ、アテムアさん……肩……痛いです……」
「あ、す、すまない……」
ちょっと気まずい空気が流れる。
すると、急にアテムアさんが頭を下げた。
「頼む! アタイを連れってて欲しい! どうしても欲しい鉱石があるんだ!」
「鉱石ですか?」
アテムアさんが教えてくれた。
妖精の花園でしか取れない黒くて丸い鉱石――妖石というのが鉄巨人に必要らしい。
妖石はマーケットで数回しか出品されたことないとても貴重な鉱石だそうだ。
「うーん、連れて行くのはいいんですが……勝手に鉱石採取するのは……女王に聞いてみないとわかんないです」
「女王とも面識あるのかい!?」
「えぇ、まぁ……」
「よし、準備してくるから少し待っててくれ!」
そう言ってアテムアさんは必要なものを搔き集めインベントリにしまいあっという間に準備を終える。
「そ、それじゃ行きます」
女王から貰ったリングを使いアテムアさんも連れて妖精の花園にようやく転移をした。




