第106話
ログアウトしたヴェスナー達はヘッドギアを鞄にしまい、帰り支度を進める。
そんな四人に僕は尋ねる。
「皆、夕飯どうする?」
「食べるって母ちゃんに言ってるけど、ウィルの料理美味しいからなぁー」
「私は食べたい……!」
そう言うクシュの頭をヘストが軽く叩く。
「イタイ……」
「こら、真理子さんに言ってるんだから帰るよ」
クシュは頬を膨らませている。真理子さんって誰だろ……流れ的にクシュの母親かな?
「真理子さんは楓の母ちゃん。この二人の母ちゃんが学生時代から親友で、家も隣同士もあって家族ぐるみで仲いいんだよ」
ヴェスナーがボソッと教えてくれた。
「セゾンはどうする?」
「俺っちは……俺っちも帰って食べるっす」
「了解。あ、そうだ。皆、電車で帰るんだよね?」
そう言うと四人は頷く。
「じゃあ、車で送ってくよ。夏樹ガレージに連れてって」
「おう!」
四人は荷物を持って夏樹の後ろをついて行きガレージに向かう。
遅れてガレージに向かうと後部座席に四人が座り、助手席に夏樹が座っていた。
「夏樹も来るのか?」
「おう、暇だしな。兄貴それは?」
手に持っている袋に気づいた夏樹が尋ねる。
「気にしない、気にしない」
僕は軽くはぐらかして運転席に乗り、四人の住所を尋ね近い順に送ることにした。
家から近いのはクシュとヘスト、次にヴェスナー、最後にセゾンだ。
全員がシートベルトをしているのを確認してから出発した。
雑談しながらナビの通り進んでいき最初の目的地に着く。
「夏樹にお兄さん、お世話になりました!」
「お世話、なりました」
「こちらこそ楽しかったよ。はいこれ」
二人に袋を渡す。
「これって、さくらんぼ!?」
「美味しそう……!」
「親戚から送られてきてね。甘いから美味しいよ」
「ありがとうございます!」
ヘストはお礼を言いクシュは頭を激しく上下に振る。
二人が家に帰るのを見届けてから出発させ、数十分ぐらい走らせるとヴェスナーの家の前に着く。
「ヴェスナーもよかったら食べて」
「やった! 母ちゃんさくらんぼ好きだからありがたい! 色々とお世話になりました!」
ヴェスナーは頭を下げてからアパートの階段を上がっていき部屋に入っていく。
再び車を走らせしばらくすると最後の目的地に辿り着いた。
「セゾンにはさくらんぼの入った袋と、これ」
セゾンにはさくらんぼの他に昨夜食べたカレーをタッパーに入れたのを渡す。
「え! いいんすか! 嬉しいっす! ……陽っちから聞いたんすか?」
ガレージに向かう前にヴェスナーからメールが送られてきてセゾンが一人暮らしだということを知ったのだ。カレーを渡したのは今から夕飯を作るのも大変だと思ってのことだ。
特に何も言われたいから僕は正直に伝えた。
「まぁそうだけど。タッパーは返さなくていいからな」
「はいっす!」
セゾンと別れ僕達は帰路に就く。
家に着くと明かりがついており両親が帰ってきたようだ。
「亜樹、夏樹おかえり。二人して車でお出かけ?」
家に入るなり母親に尋ねれた。
「夏樹の後輩を送ってただけ」
「あら! 夏樹の後輩が来てたの? 見たかったわ~」
「いいって、そんなことよりもお腹空いた!」
「もう~亜樹、さっさと作りましょう」
「うん」
母親と一緒にあっという間に料理を作り夕飯を食べ、風呂に入って、眠りに就いた。
翌日、定時に退社した僕は寄り道することなく帰宅する。
「兄貴、おかえり~。兄貴、兄貴こっちきて」
部屋の前で夏樹に呼ばれ夏樹の部屋に入ると動画を流す。
そこには城の上空で戦っているセイリュウ&スザク対シャックスが決着するまで、ていうより僕が城に降りるまでが映っていた。
タイトルは大怪獣バトルとなっていてコメント数も再生数も凄いことになっていた。
幸い、僕に辿り着くようなコメントは無かったのがマシだ。まぁ時間の問題だろうと思うけど。
「凄いことやってたんだね。てか、セイリュウデカすぎ。屋敷入るの?」
「入らないと思うけど、スキルあるし問題ないよ。やっぱり動画上がるよな」
「そりゃねー」
「まぁいいか。しばらくはログインしても人前に姿を現さないようにするよ」
そう言い僕は部屋を出ていき、夕飯を食べた後、少しだけやろうと思いログインする。




