第102話
夏樹が皆を避難させている間、魔法を使って防ごうと思ったけどスザクの猛攻が凄すぎて僕が介入する隙が無い。
「なんなんだ! このクソ鳥はああ!」
相手は素早く動いているスザクに翻弄されて相当お怒りのご様子だ。
「焼き鳥して食ってやる!!」
相手は空間から鋭利な刃物が付いた鎖を出現させてスザクに向けて放つ。
「ピィイ!」
そりに対してスザクは炎を纏う鎖を生み出してぶつけ相殺している。
拘束魔法のはずなんだけど、ああいう使い方があるんだ。
ちらっとスザクを見ると、こんな程度かという見下している表情していた。
「あんの、クソ鳥がああああ!!」
あーあ、更に怒らせちゃったよ。もう……まぁ夏樹を傷つけられたんだ。少しだけスカッとした。
ちょうど避難も終わったようだし、セイリュウが一時覚醒している間に倒そう。
ルキがこっちに向かって手を振っているのが見え笑顔で軽く手を振り返す。
「セイリュウ、あいつを外に連れ出すぞ!」
「グルル!」
セイリュウは口を大きく開き鋭い牙を剥き出しに突撃する。
相手は鎖を使い止めに入るがセイリュウの力が強すぎて止めきれず、玉座の間のステンドグラスを割り外に出し、そのまま上空に連れて行く。
空中に放り投げた後セイリュウは前足?で掴む。
「離せ! クソトカゲがあ!」
振り解こうと暴れるがびくともしない。
「シャックス! いるんだろう! 俺様を助けろ!」
セイリュウの顔近くで空間が歪み執事服のコウノトリ頭のシャックスが現れ僕は目を見開く。
「私が生きていることに驚きを隠せていない様ですね。私を倒した褒美に教えて差し上げましょう。私達は浮遊城内でしか完全に倒せないのですよ」
「嘘……でもないのか?」
「ふふふ、信じるか信じないかは勇者次第……」
「おい! クソプレイヤーと喋ってないで俺様を助けろ!」
セイリュウの前足の中で大声をあげる。
「仕方ない……」
指を鳴らすとセイリュウの前足から姿が居なくなり、両手足を縛られてシャックスの隣でぷかぷかと浮かんでいた。
「鎖を外せシャックス! 何のつもりだあああ!」
「計画は続行不可能だダンタリオン。お主ではこ奴には勝てない」
「はぁああ!? 俺様がプレイヤーごときで負けるとでも言いたいのか!?」
シャックスはため息をつく。
「この開放的な空間だとお主の力は意味がない。それにここではお主は本気を出せないだろ?」
「くっ……クソが……」
シャックスがダンタリオンと呼ぶ奴はそれ以降口を閉ざす。
「では私達はこれで。浮遊城でお待ちしております勇者よ」
シャックスは一礼して身を翻すと空間が歪む。
「おいプレイヤー! この借りはぜってぇ返すから覚悟しとけ! クソが!」
ダンタリオンは悪態を吐いてシャックスと共に消えていく。ようやく終わって僕は深く息を吐いた。
それにしても最後まで口悪かったなあいつは。まぁ浮遊城は行く気はないし、もう会うことないでしょ!
「……っておいおい! このタイミングで時間切れかよ!!」
セイリュウの体が光りだし徐々に小さくなっていき遥か上空で僕は投げ出され落ちていく。
「ピィイイ!」
すると、下からスザクが飛んできて僕を受け止める。た、助かった……
「ありがとなスザク……重いよな……?」
「ピ、ピィイ!」
必死に翼を羽ばたかせ答えるスザク。ようやく元の大きさに戻ったセイリュウも合流して、セイリュウの体に掴まり、スザクは僕の両肩を足で挟み翼を動かし一緒に地上に降りていく。
「おー綺麗だな……」
雲も完全に晴れた茜色の空と夕焼けに照らされる街の風景が綺麗で思わず僕はスクショする。
「スザクもセイリュウも今日はお疲れさん、本当にありがとな」
「ピィイ!」
「グラァ!」
「よし、みんなの所に帰るよー」
ボロボロの城の庭でぴょんぴょんと跳ねるルキが見えその後ろで夏樹達が手を振っていた。僕達はそこを目指した。




