第100話
「ルキ、絶対に手を離さないで」
「うん……!」
ルキはぎゅっと腕に力を入れしがみ付く。
「先手はお譲りしよう」
シャックスは余裕そうな顔で言う。
ちょっとだけその表情にイラっとした。
「なら……ウィンドアップ! ファイアーアップ!」
攻撃力と敏捷力を上げる魔法を唱える。
「ゲイルアロー!」
「グラァ!」
僕は風の矢を唱えるとセイリュウも同じ魔法を唱え数え切れない程の矢がシャックスに飛翔する。
シャックスは身を翻して次々と躱していく。あの数を躱すか……だが!
風の矢は軌道を変えシャックスに再び襲い掛かる。
「ほう……オモシロイ」
シャックスは指を鳴らすと、シャックスを中心に黒い羽が降り出す。それに触れた風の矢は全て掻き消され僕は目を見開く。
「次は私の番……」
また指を鳴らすとシャックスの足元に魔法陣が現れ黒い鳥が無限に湧き襲ってくる。
僕を乗せたセイリュウは凄い勢いで天に昇っていくが黒い鳥は追いついてきた。
スザクを見ると、同じく黒い鳥に襲われ魔法で応対している。何より僕達と引き離されていた。
「まずいな……」
スザクを召喚した分のMPは……回復済み。スザクを一旦戻すことにした。
「セイリュウやるぞ!」
天高く昇ったセイリュウは太陽をバックにして黒い鳥の群れを見降ろす。
「【四神の領域・暴風】!」
「グラァアアアアアア!」
僕とセイリュウは気流を操り下降気流を作りだし黒い鳥を押し返す。更に、逃げれないように気流を操りシャックスの周りに纏める。
残ったMPを使ってスザクを再召喚する。
「全部燃やせスザク!」
「ピィイ!」
スザクは青い炎を纏った衝撃波を纏めた場所に撃ち放ち。青い炎が収まるとシャックス諸共いなくなっていた。周りを見回しても姿はなかった。
すると、手を叩く音が聞こえ視線を向けるとシャックスと……何故か隣でメフィストも握手をしていた。
「シャックス、どうだこ奴は?」
「メフィスト殿がご執心になるわけですね。ならば、私も本気を出しましょう」
「良いのか? お主が本気出すとあ奴の計画も台無しなってしまうぞ? 我はどちらでも良いけどな! ぶははは!」
メフィストは笑いながら消えて行くとシャックスの背に黒い翼が生えると姿が大きくなっていき、城を覆い隠す程の黒い三つ足の鳥に変化した。
「セイリュウ! スザク! 離れ――」
その時、シャックスが一回羽ばたくと強風が生まれ吹き飛ばされそうになる。
「きぁあっ!」
「っ! ルキっ!」
強風に耐えれずルキが飛ばされそうになり、僕は手を伸ばすが僅かに届かずルキは空中に投げ出された。
「グラァ!?」
僕はセイリュウの頭から飛びルキのもとに向かう。
風が邪魔して近づけない。あと少しで届くのに……!
「ルキーーー! 手を、伸ばしてーー!」
「ウィルっーー!」
ルキも必死に手を伸ばす。
あと少し……! あと少し……!
「届いたっ!」
ルキの手をガシッと掴み引き寄せる。
後ろからセイリュウも追いつてくる。スザクは時間稼ぎにシャックスに攻撃をしている。セイリュウに掴まって避難しよう。
「ガァアアアア!」
突然シャックスが羽ばたくと無数の黒い羽が放たれた。僕はルキを庇いダメージを受ける。
一発一発はダメージが少ないけど、食らい続けるとまずい。それに、今の羽ばたきのせいで地上に向かって急降下してしまい地面にぶつかってしまう。
【四神の領域】を発動するにはMPが微妙に足りない!ヤバイ!ヤバイ!
――そんなことを思っていると急に視界が暗くなり温かい息を感じた。
ゆっくりと何かが開きルキと一緒に出るとセイリュウが地面で横たわっていた。
落ちる瞬間にセイリュウが僕とルキを口の中に入れ守ってくれたようだ。
おかげで僕とルキは無事だったがセイリュウがその分をダメージを受けてしまい体力がレッドゾーンに入ってしまった。
「セイリュウ……いたい?」
「グラァ!」
セイリュウの傷ついた姿をみて涙を流しだそうとしているルキにセイリュウは元気な声で返事をする。
僕はそんなセイリュウを優しく撫でた。
「僕とルキを守ってくれてありがとなセイリュウ。後は他の召喚獣達がやるから――」
セイリュウを戻そうとすると、セイリュウは頭を起こし僕に顔を押し付ける。
「……そんなに戦いたいのか?」
「グラァ」
セイリュウはは力強く頷く。上空ではスザクがシャックスの攻撃を躱しながら攻撃を与えている。
「分かった。んじゃポーションで回復、してから……あ~いいや。セイリュウ、全力でやっちゃえ」
「グラァ!」
僕の言葉にセイリュウは目をキラキラさせる。
僕は目の前に現れたウィンドウ画面の一時覚醒を【YES】と選択するとセイリュウは激しい光を発し僕とルキを頭に乗せシャックスよりも高く天に昇っていく。光が収まると街がセイリュウの影で隠れるほどの大きさ……ていうより長さ?に成長してシャックスを見ろしている。シャックスが小さくみえるな……
セイリュウはシャックスに絡みつくと体から稲妻をを発生させシャックスにダメージを与えていく。
シャックスは逃げようと振り解こうとするも痺れて何も出来ないままHPが無くなりようやくシャックスは倒されドロップアイテムを空中にぶちまけ地上に落ちていく。
バサバサと羽ばたく音が聞こえるとスザクがルキの隣に降りてくる。
「おかえりスザク。スザクもありがと」
頭を撫でてやるとスザクは目を細める。
「あとは、夏樹達の援護を――」
地上の方で激しい爆発音が聞こえ下をみると、玉座の間があると思われるところから黒煙が舞い上げっていた。
「セイリュウ、急いで向かって!」
不安に駆られ僕はセイリュウに指示を出して地上に向かった。




