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9、策謀

・・・しまったな。

我慢が切れて爆発してしまった。

暫く調子に乗らさせてお巡りさんにでも引き渡してやろうとか思っていたが・・・

反射的にやってしまった。

やはりどうも身体は女みたいだ。

多分あれは男でも嫌悪感がヤバかっただろうが・・・

何というか全身がゾクゾクする感触。

肌が数倍敏感になっている。自分で触るのとこうも違うのか。

・・・まあ、もう少し遅かったら俺が『女の子に』されてた可能性も否定できん。

前向きに生きよう。前向きに。


脱ぎ捨てた衣服を手に取り、それらを再び着る。

汚れていたが魔法でちょちょいと奇麗にした。貴族令嬢に相応しい高級素材だったし汚れは見逃せない。魔法とは随分万能である。

気持ち的に服をパッパッと手で払い、乱れた髪を手櫛で軽くすいていると、


「あ・・・貴女は、一体・・・」


放心していたハンターの一人が尋ねてきた。

・・・そうだった。忘れてたわ。ハンターが居たんだった。

これは非常にまずい。何らかの形で今回の噂が世に広まってしまったら俺の平穏な生活がパーだ。

では殺すか?絶対だめだ。ただの殺人犯である。

脅す?それはポリシーに反する。俺は自分からは悪事はしないのだ。

彼らの記憶を弄るのも倫理的にマズい気がする。

・・・誤魔化すのももはや不可能。ならば・・・


俺は深々とハンター達に向けて頭を下げた。


「お願いします!今回の事はどうかご内密に・・・!」


懇願である。

驚くハンター達。

圧倒的な実力を持つ少女が自分たちに対して頭を下げているのだ。


「「「・・・・・・」」」


(ダメか・・・?気は進まんがかくなる上は・・・)


「だめ・・・ですか・・・?」


涙目+上目遣いのコンボである。バカならこれで落ちるが・・・


「「「分かりました!!!」」」


男ども、陥落。計画通り。

それを見て深いため息をつく女性陣。流石にこちらはダメだったな。


「・・・私たちは貴女に救われた身だし、お願いって言うならもちろん聞くわよ。

気になることは山ほどあるけど貴女にも色々と事情があるんでしょうし・・・」


「あ、ありがとうございます!」


「・・・でも、あんな危ない真似はダメ。

女の子・・・しかも貴族令嬢なんだからもっと気を付けないと」


「・・・それは身をもって体感しました」


・・・何とか大丈夫そうだな。

一時はどうなるかと思ったがギリギリ丸く収まったみたいだ。

しかし馬車はともかく騎手がいつの間にか逃げたのかいなくなってるし、どうしようか。

ハンター達も満身創痍でもう護衛どころではないだろう。

・・・いや、もはや護衛も必要ないのだが。


「えーと・・・皆さんはもう帰って休んでください。

ここからは私一人でも多分行けますので・・・」


「し、しかし、俺達もこれが仕事で・・・」


「そうは言われましても・・・皆さんもうお疲れでしょう?」


「・・・君一人では馬車を使えないだろう?」


「そうですが・・・正直移動するだけなら自力の方が早いですし」


「積み荷が・・・」


「収納魔法がありますから」


「「「・・・・・・」」」


ハンターたちはもはや諦めたような表情である。

そもそも収納魔法などというものはこの世界では一握りの魔法の天才しか扱えない魔法なのだ。

しかも馬車の積み荷全てを収納できるクラスになると更に希少である。

この時のシャルロットはそんな事知る由もなかったのだが。

ちょっと練習したら使えるようになった魔法だったのだから。


「・・・分かった。ギルドには適当に報告しておく。報酬は受け取れんだろうが・・・」


・・・そうだった。

レイマンが直接雇ったのならば察してもくれるのだが、これはギルド経由のものだった。

せっかく護衛に来てもらったのに報酬の一つもなしではかわいそうである。


「あ、それなら私から報酬を出しますよ。

本来の額通りには出せませんが・・・」


「え、いいのか!?

いやでも、結局護衛はできてないし・・・」


「私の話し相手になってくださった方もいましたし・・・

何よりせっかく受けていただいたのに手ぶらで返すのは・・・」


「「「天使だ・・・天使が居る・・・」」」


俺はハンター達に本来の報酬額の半分を払ってやった。

元々異常な量のお金を渡されていたのである。

残った分でも十分・・・いや十二分に生活は可能だったのである。


そうして俺はハンター達と別れ、王都への道を進み始めた。





「・・・以上が今回の顛末だ」


ハンター達はギルドマスターに今回の出来事を報告した。

もちろん、シャルロットの力の事は秘匿した。


「・・・そうか。ご苦労。

護衛対象は無事なんだな?それなら良かった」


ハンター達はホッとした様子でその場から立ち去る。

ギルドマスター一人の部屋で彼は思案する。


「シャルロット・・・ねぇ」


そう呟くと彼は少し口角を上げた。

シャルロットもハンター達も、彼の思惑を知りえなかった。


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