39.容疑者
俺が啖呵を切った後、数秒のラグを挟んで里を襲撃してきた人間が一斉にこちらに向かってきた。
リーダーが一撃で吹っ飛ばされたのを見た後にそれができるのは誉めてやろう。
「ぎゃあああああ!!!」
「な、なんだこのガキ!? ていうかあの魔道具何だよ、反則だろ!!」
俺は迫ってくる男たちに対して、二丁拳銃と格闘を組み合わせるスタイルで戦った。
ん? あぁ、拳銃はあれだ。猟銃を改良したんだよ。
鉛弾を使う普通の銃は詳しい仕組みとか知らないと無理そうだったけど、この拳銃は使用者の魔力を込める限り弾が無限の魔法銃だ。
撃鉄も弾倉もいらない。
最低限銃の形をした「何か」。
もしこういうのが好きな人に見せたら激怒されること請け合いの適当設計なのだ。
戦闘が始まってから5分も経たずにカタはついた。圧勝である。
動けなくなった男たちを一か所に集め、拘束の魔法を打ち込んで動きを封じる。
この男たちから、情報を色々と集められればいいのだが。
「さて、貴方達は勝手にエルフの里に侵入して、暴れて、勝手に拘束されたわけですが……何か文句でも?」
「チッ……ねぇよ。何者だ、ガキ」
リーダーが悪態をつきながら言う。随分肝が据わってるな。
「だから通りすがりですって、ホント。ここを見つけたのだって偶然ですし。
今度はこちらの質問です。貴方達はどうやってここに? 私と同じ場所からではありませんね、あそこには私の仲間が待ってるはずですから」
「……依頼主に持たされた魔道具で結界を壊した。結界の場所は依頼主から聞いた」
「……依頼主が? 相当の使い手でないとこの結界は見つけられないと思うんですが。
高名な魔法使いか何かだったのですか?」
「いや、多分違う。どちらかというと肉弾戦するツラだよ、あのオッサンは」
「……で、その人の名前は?」
「そいつは言えねぇな。腐ってもハンターなんでね。そうそう依頼者サマの情報喋るわけにはいかないんだわ」
「なるほど、貴方達はハンターだったと」
俺が指摘した瞬間、リーダーの男がしまったという表情になった。
少しは頭がいいのかと思いきや、思ったより口は軽そうだ。もう一押し!
「……では、こうしましょう。
ハンターがこのような人攫い稼業じみたことをやっているなんて知れたら大変でしょう。
依頼主の名前を吐けば、貴方達のことをギルドに報告しないことにします。どうです?」
「……無駄だ。俺たちがここで死のうと次が送られるさ」
「……私は貴方達を通報しないと言っているのですが。
つまり、私がギルドに報告しようとしまいと、貴方達は危険にさらされる。
要するに、消される。それが死なのかギルドからの追放を意味するのか。
いや、情報が洩れたら困るから……貴方達は死ぬ」
リーダーの男が冷や汗をかき、目に見えて焦りだした。
「さて、誰も喋らないのに、どうして貴方達の行為は筒抜けになるのか。
それは貴方達がハンターを続ける限りその人物と関わりあわなきゃいけないから。
そのとき、貴方達の失敗が露呈するから。
つまりハンターギルドの関係者。
そしてハンターがギルドに依頼することはめったにない。
つまり、ギルドの『運営側』の人物」
「……」
リーダーの男の沈黙は、肯定の意思を暗示しているようだった。
「貴方達の証言、『ガテン系のオッサン』。
私には一人、思い当たる人物がいますよ」
さっきエルザと話したとき、亜人族への迫害が人為的なものではないのかという予想にたどり着いた際、違和感を感じた人物。
俺のように、高い魔法耐性を持っているわけでもなさそうなのに、エルフと獣人である三人に好意的に接していた、あのオッサン。
「……ギルドマスター、ガリウス。彼が依頼主なのでは?」
リーダーの男は、諦めたように首を縦に振った。
……参ったな。まさかギルドマスターが黒幕の可能性が出てきたとは。
ガリウスが洗脳の実行犯だというのは……なさそうか。実際ガテン系だ、あのオッサンは。
だとすると、誰かとグルか。
そもそも世界規模の洗脳なんて大それたこと、複数人いないと不可能だろう。
俺は、ルルにシンシア、ライムと一緒にエルザの家を訪れていた。
族長と仲間に、事の真相を伝えるためである。
「……つまり、ハンターギルドのギルドマスターが今回の黒幕、と?」
「少なくとも今回の襲撃に関しては、ですが。間違いないかと」
テーブルを挟んだ対面のエルザも、俺の隣に座っている三人も、驚きを隠せずにいた。
「ギルドマスターって……あの目つきの鋭いおじさんだよね、ホントなの?」
「ああ。リーダーの男に確認も取ったし、第一少し前から疑ってはいた。違和感があったからな」
「私たちへの接し方が普通と違ったから、ですか?
ですが、彼のあれは好意的なものでは……」
「多分、罠なんだろうな。いいカモとしての『歓迎』だったのかもしれん。
人身売買に関わりを持ってるとしたら、俺もその対象なんだろうな。
まったく、嫌になる。人間、悪いやつの方が表面上良いやつに見えてしまうんだよ」
俺の言葉に、皆黙りこくってしまった。
ふう、と深呼吸をして、俺は立ち上がった。
「……シャルロット殿。これからどうするのだ」
「さあ……私だけでどうにかできるかはわかりませんからね。確信をもって言うことはできませんが」
俺は決意を胸に、宣言した。
「私は、この問題を解決しようと思います。もし亜人族と人間が再び手を取り合えたら、それはきっと素晴らしいことです。難しいかもしれませんが……」
「……何故そこまで? 言い方は悪いが、そちらにメリットはないだろう?」
「私がやりたい、というだけです。それでは不十分ですか?」
「……すまない」
エルザは立ち上がり、頭を深々と下げた。
「我々エルフを、救っていただきたい……!!」




