35.魔道具
俺達が無事ハンター登録を終えた翌日、俺は皆を引き連れてハンターギルドに来ていた。
ハンターはギルドを介して魔物の討伐、旅の護衛などの仕事を斡旋してもらい、その報酬として金銭を稼ぐ稼業である。
腕っぷしに自信のある者を基本として、他の仕事を続けられない荒くれ者やスラム出身の者、果ては暇を持て余した貴族まで、様々な人種がいる。
その中でも、成人している(この世界では15歳で成人するらしい)とはいえ年若い貴族の少女とエルフ、獣人の登録は前代未聞らしい。
また、ハンターにはE~Sのランクがあり、Eが一番下、Sが一番上。
俺達は昨日の試験の結果もあり、Cランクからの出発である。
基本的にBランクから一流ハンターと言われるので、それを考えると大分好条件である。
・・・さて、今日俺達がここに来た理由は、初仕事をするためだ。
とはいっても、誰かに斡旋される仕事ではなく、ギルドから常時受け付けられている魔物の肉や薬草と言った素材の採集依頼を受けるつもりだ。
こういった常時依頼の報酬は獲ってきたものをギルドに買い取ってもらうことで獲得できる。
通常は事前にわざわざこちらに立ち寄る必要もないのだが、普通の依頼にどのようなものがあるのか確かめたかったのだ。
もともと小遣い稼ぎのようなもの・・・だと思っていたが、命の危険もある稼業だからなのか、意外と一つ一つの依頼の報酬が高い。大半は魔物の討伐・護衛だが、ちまちまと危険地帯の調査の依頼もある。
今度一人で受けてみようかな・・・暇なときにでも。
しばらく依頼が張り出されている掲示板の前にいたが、周囲からの目を避けるためさっさとギルドを後にした。ルル達と一緒にいると、予想はしていたが酷く注目される。ティアが面倒なことになると言ったのも間違ってはいないな・・・
「すみません・・・私がギルドに寄りたいと言ったばかりに・・・
気分が悪かったのではないですか?」
「確かに気分は悪かったけど・・・シャルロットさんのせいじゃ・・・」
「シャルロットでいいですよ。あまり畏まられるのは慣れてませんし」
「そういうシャルロットだって、素の自分隠してるでしょー?
アタシたちの前でくらい砕けた言葉遣いでもいいんじゃない?」
・・・ライムに言われてしまった。
ティアとの会話では普通に話してしまっているし、まあ隠すものでもないが・・・
「そう・・・だな。貴族令嬢としては褒められたものじゃないけど・・・気楽でいいかもな」
三人とも人間から差別を受けており、俺やハルカとの間に壁を感じてるんじゃないかと思っていたが、ハルカとも仲良くしているようだし、俺の杞憂だったようだな。
「な、何ですか今の・・・!?」
シンシアが驚愕に目を見開いてこちらを見つめてくる。
俺が四人を巻き込んで、王都から馬車で数時間の場所にある森に瞬間移動したのだ。
「何って・・・瞬間移動?」
「「「そんな魔法使える人なんていない!!」」」
やっぱりそうなのか・・・王都に来るときに瞬間移動を使わないで正解だったな。
「・・・ハルカは驚かないの?」
「うーん・・・何だか見たことがあるような・・・」
その後、ハルカは少し考えた後、五十メートルくらい前方を指さすと、
「・・・『瞬間移動』」
「「「「!?」」」」
次の瞬間、ハルカの身体はその場から消え、指さしていた場所へ瞬間移動した。
・・・何故ハルカが使える? 俺と同じように転生して力を手に入れたのか・・・?
いや、だとしても「見たことがある」というのは一体・・・謎が深まるばかりだ。
そんなハルカと俺の様子を、いつの間にか人化していたティアが顎に手を当てながら見ていた。
気を取り直した俺達は、当初の目的である素材の収集に取り掛かった。
俺には薬草などの知識はほとんどなかったが、エルフや獣人は森に棲んでいるだけあってそういったものには非常に詳しかった。薬草採集に関しては俺はほとんど見ているだけだった。
俺も何かしないと、と周囲をキョロキョロしていると、頭上十メートル程の高さで鳥が輪を描いて群れで飛んでいるのに気付いた。
「・・・あれを獲るか」
「シャルロットさん、弓も使うんですか?」
俺が呟くと、元々の性格なのか敬語のままのシンシアが俺に聞いてきた。
「弓か・・・弓も良いな。だけどやっぱここは・・・!」
俺は手元に魔力を集めると、可能な限り精密に、前世でも狩猟で使われていたアレを再現した。
「・・・急に物が現れたことにはもう突っ込みませんよ。何ですか?その細長い筒は」
「これはな・・・こう使うんだ!」
俺が鳥の群れに向けて引き金を引くと、周囲の空気を揺らす轟音と共に、魔力で生成した鉛玉もどきが猛スピードで発射される。
続けて数発撃つと、モロに銃撃を喰らった鳥が三羽落ちてきた。
「・・・やっぱり音で逃げるな・・・でも魔法を使うと多分品質落ちるよなぁ・・・
学院で魔力制御の授業をもっと真面目に受けるべきだったか・・・どうした?」
ふと横を見ると、小刻みに震えながらうずくまるシンシアの姿が見えた。
俺が空になった弾倉に弾を補充しながらシンシアを見ていると、慌てた様子でルルとライム、ハルカが駆けつけてきた。
「い、今凄い音したんだけど何!?」
「明らかに魔法の音じゃなかったんだけど・・・って、それ何?」
ライムが俺の作った猟銃を指さして言ってきた。
さっきのシンシアの様子で察してはいたがやはり・・・
「・・・アンタ遂に技術チートやらかしたわね・・・この世界に銃なんてないわよ」
「何でそんな言葉を知ってんのか問い詰めたいんだが」
やはりか・・・これはやらかした。
目の前でいきなり発砲するのはまずかったか。
「これは何というか・・・武器の一種だよ。
細かい機構は省くが、要するにメチャクチャ早くて持ち運びが容易な弓と思ってくれれば・・・」
「「「「いや、それはおかしい」」」」
今度はハルカからも含めてツッコミを喰らった。
「ま、まあ、どのみち魔法で再現したまがい物に過ぎないし・・・多分魔法の方が強い」
「じゃあ何で使ってるのさ」
「俺の魔法じゃ強すぎて獲物を跡形もなく消しちゃうだろうからな」
「「「何それ怖い」」」
「魔法の制御は当分の目標だな。料理のための火とかは高火力の圧縮した火魔法に氷魔法を混ぜる感じで使ってるが、狩りではそうもいかないからな」
俺の発言に、ティアまで若干引いていたのに、俺は気づかなかった。
「・・・機構とか言ってたけど、それって魔道具とは違うの?」
と、ルルが俺に聞いてきた。
「魔道具・・・ではないのかな? 魔力を凝縮して作ったけど構造自体は趣味で知ってて再現しただけだから魔法を使う訳ではないし・・・」
そこまで言って、俺はあることに気づいた。
「・・・待てよ? 魔道具?
コイツを魔道具にすれば俺も丁度いい魔法を打てるんじゃ・・・?」
俺に魔道具作成の知識はないが、やってみる価値はあるだろう。
弾倉を改造して、発砲するための機構は・・・取っ払っていいだろう。
代わりに自分で魔力を込めて銃を介して魔法を放つイメージで・・・
魔法で作られたものだし、銃身はそのままでも十分魔法の使用に耐えられるだろう。
弾倉に込められた魔力は小分けにされて発射されて・・・弾速はそのままで・・・
「・・・!
皆、魔物の臭いがする!!」
俺が銃の改造に集中していると、鼻の利くライムが魔物の臭いを嗅ぎ取った。
「さっきの音に反応しちまったかな? だが良い実験相手ができたぜ」
皆がそれぞれ戦闘態勢をとる中、俺は自作の魔法銃を構えた。
「ショウタイムだ!!」




