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34.シャル’sキッチン~お手軽野菜炒め

ルル、シンシア、ライムの三人の正式なギルド登録を済ませると、俺達はギルドの建物から出た。

余程ギルド登録が叶ったのが嬉しかったのか、三人は興奮冷めやらぬと言った感じであった。

その様子を見て俺は安心をしていたのだが・・・

「またやっちゃった・・・アンタ、本当に悪人だったわけ? 面倒ごとを背負っちゃって・・・」

収納魔法から自力で脱出したティアが突然目の前に現れ、そんなことを言ってきた。

「別に悪人だったとは言ってないだろ。人情にあふれたおとこだっただけだ」

「なんか違うでしょ・・・って、そんなことよりこれからどうするのよ。

エルフと獣人の面倒まで見るつもり?」

「そのつもりだ。何だ、何か文句があるか? お前に行動を制限される謂れはないはずだが」

「別にいいけど・・・苦労すると思うわよ? 主に周囲からの視線とか」


俺とティアが二人して小声で話しているのを、今まで完全に空気だったハルカと三人が不思議そうに見ていた。

その視線に気づいた俺はひとまずティアとの口論に区切りをつけ、街に出た当初の目的を達成するため、四人に向けて向き直った。

「丁度いい時間帯ですし、一緒にお夕飯はいかがですか?」

俺の提案に、四人はきょとんとした。

「それは有難いんですが・・・私達を連れてでは何というか、不便なのでは・・・」

「あ、大丈夫ですよ。私の寮部屋のメンバーは私以外実家に帰ってますし、私がご馳走するので」

「で、でも、寮に行くまでに他の人に見られたら変な目で見られるよ?」

「私は気にしませんよ。そんな差別をするような人なんて、無視すればいいのです」

三人は互いに顔を合わせ少し考えると、

「「「お、お言葉に甘えて・・・」」」

・・・因みに、ハルカはついてくると即決していた。


学園の寮内。俺達の部屋。

ティア以外は部屋に入るなりその広さに驚いていたが、俺が適当に腰掛けるよう促すと、おずおずと床に正座した。

対してティアは俺のベッドに無遠慮に腰掛けていた。別に構わないのだが、日本人の血がもうちょっと行儀よくできないのか、と訴えかけている。無駄だろうけど。

「・・・さて、始めますか!!」

俺は収納魔法から予め作っておいた簡易キッチン(コンロなどは魔法で代用できるため、もはや木製の単なる台)と食材を取り出し、調理を始めた。


「そういえば、ティアさん・・・でしたか? 

貴女はいったい何者? シャルロットさんとどういう関係?」

「そういえばさっき、いきなり目の前に出てきたよね。どんな魔法を使ったの?」

最初は俺の調理に向いていた四人の関心がティアに切り替わっており、ルルとライムが色々と質問しだした。コイツが余計なことを漏らさないか気が気でない。

「どういう関係・・・ねえ、私達ってどういう関係なのかしら」

と、ティアが俺に聞いてきた。

・・・確かに、すぐには答えが思いつかないな。

「さあ・・・なんだかんだ半年ずっと一緒だし・・・感覚的には腐れ縁というか、悪友というか」

「お、何? 私の事友達とか思ってるの?」

「違うのか?」

俺が即答すると、ティアは少し赤くなり、「あ、そう・・・」と呟いた。

何故そのしおらしさが普段から出ないのか。


「・・・で、そこでシャルロットが・・・」

「はい、出来ましたよ!!」

俺は収納から取り出したテーブルに完成した料理を勢いよく置いた。

ティアや俺の事を漏らしたりはしなかったようだが、あることないこと脚色して余計なほら話を始めた様子なので、そうやって話を遮ったのだ。するとハルカが身を乗り出し、

「そ、それでシャルロットさんとお兄さんはどういうことに・・・!?」

「何の話してたんだテメェェ!!!」

「ヒッ、ご、ごめんなさいぃ!!」

この野郎、俺の妹・・・という確信はないが、ハルカが変な趣味に目覚めたかもしれないじゃないか。


「・・・まあいい。作ったから食べてくれ。残すなよ」

先程置いた大皿に盛られているのは、簡単な野菜炒め。

エルの店で買った野菜をふんだんに使っている。少し高かったが、肉や調味料も手に入った。

味噌汁なんかも作りたかったが、味噌がない。日本人としては味噌は欲しい所だが作り方など知らない。

前世では定番の家庭料理だったのだが・・・こちらの世界の人の舌に合うのだろうか。

俺達は思い思いの量を小皿によそい、この世界における「いただきます」にあたる食物への感謝の祈りを捧げると、それぞれ自分の分を口に運ぶ。

・・・うん、悪くない。腕は落ちてないようだ。皆の反応は・・・

「な、なにこれ・・・!! すっごい美味しい・・・」

「こ、これ、貴族の食事って言われても信じるわよ・・・って、シャルロットさんって貴族だったわね」

「野菜を加熱して少し手を加えただけでここまで・・・凄いですね」

「んーっ!! やっぱりシャルロットの料理って最高よね!! シンプルなのに美味しいんだもの」

概ね高評価のようだ。

・・・しかし、ティアってドラゴンなのに普通に人間の食べ物食うんだよな。

ドラゴンの味覚って人間と同じなのだろうか。

そんな事を思っていると、

「何だか懐かしい味・・・何だろ、何処かで食べたことあるのかな・・・」

というハルカの言葉に内心ドキッとした。やっぱりハルカは遥香なのか・・・?


「「「「「美味しかった・・・」」」」」

かなりの量あった大皿の野菜炒めは綺麗になくなり、皆満足そうであった。これでこそ作った甲斐があるというものだ。

皿でも洗おうと立ち上がった時、ふと気になったことを尋ねた。

「・・・ところで、あなた達はどこに滞在するのですか? 悲しい話ですが、宿をとるのも難しいでしょう?」

それを聞くと、三人はギクッという効果音が聞こえそうなほど硬直した。まさか・・・

「「「か、考えてなかった(です)・・・」」」

マジかよ・・・少なくともシンシア辺りはちゃんとしてそうだったのに、完全にノープラン・・・

勇気あるなこいつ等。むしろ褒めたいわ。

「・・・暫くここに滞在しても構いませんよ。流石に他人のベッドを使わせるわけにはいかないので寝るときは床に雑魚寝になりますが・・・」

「「「そ、それでいいです・・・」」」

「あの・・・私も行く当てがないんですが・・・」

「あぁ、ハルカ・・・さんも構いませんよ・・・というか、貴女に関してはそもそもそのつもりでしたし」

こうして、騒がしい夏休みが始まったのだった。

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