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31、ハンターギルド

人さらいグループから助けた少女たちはエルフに獣人と、いわゆる人外であった。

確かにそれは驚くべきことであった。しかし・・・

「嘘だろ・・・遥香・・・なのか!?」

俺は小声で驚愕の声を漏らした。

最後に正体を明かした少女は、正に俺の前世での妹、遥香であった。

よくよく見たら服装もこの世界では異様な現代日本の洋服。

何故気づかなかったのか・・・


「・・・どうしたの?知り合いだった?」

ティアが俺に耳打ちしてくる。

そういえばコイツ、この部屋に入る前に俺と似た気配がするとか言ってたな・・・

「・・・確信はないが、あれは遥香・・・俺の妹だ、前世のな。顔といい服装と言い本人だ」

「まさかまた転生者・・・? いやでも、姿はそのままなのね・・・どういう・・・」


俺達がルル達そっちのけで小声で会話していると、

「あの・・・あなた達は・・・」

遥香と思しき少女が話しかけてきた。声まで同じだ・・・

「私はシャルロットです。・・・貴女達は?」

少女たちは順に自分の名前を言っていった。

赤髪のネコ獣人はライム、ポニーテールのエルフはシンシアと名乗った。そして、

「・・・貴女の名前は?」

俺は遥香と思しき少女に名前を尋ねた。

「えっと・・・すみません、記憶が、ありません」

「・・・・・・」

少女はたどたどしくそう言った。

「記憶が、無い・・・?」

「は、はい・・・気づいたらこの街で倒れてて、その後あてもなく歩いていたら人気のない道に出てしまって・・・あの男の人たちに連れ去られました」


「・・・参ったな・・・記憶がないのが本当だとしたら確かめようがない」

「そもそも、あれが本物だとして何で貴女の妹がここにいるのよ。異世界からの転生なんて普通有り得ないのに、それが貴女に引き続き二回も・・・また厄介ごとになりそうね」

「そういうのをフラグっていうんだよ・・・」

少女たちに背を向けてティアとコソコソ話していると、不審がったのか、少女たちが話しかけてきた。

「・・・どうしましたか? 何かあったのでしょうか」

「まさかまたアタシたちをどっかに売ろうと・・・」

「ちょっ、そういうことは・・・!!」

ライムとシンシアは随分こちらを疑っているようだ。

ルルも止めてはいるがまだ信用されてはいなさそうだな・・・先程の女神様発言は単に機嫌取りだったのか・・・?

・・・人間は何故迫害などしたのだろうか。

やりにくいったらありゃしない。


「・・・ひとまず、色々聞かせてください。貴女方は何故こんなところに?

この辺りに住んでいるわけでもないでしょう?」

そう、エルフや獣人といった亜人種は「隠れ里」でひっそりと暮らしているものなのだ。

時たま里から出てきて森を歩いている最中に人間に見つかることもあるが。

「・・・私たちはハンターギルドに登録に来たのです。

私たちがハンターとして活躍すれば、その分種族の差別も軽くなるかもしれないと」

シンシアが人外種三人を代弁して言った。どうやらこの三人は最初から仲間だったようだ。

・・・それで捕まったら元も子もないでしょーに。

それに、その程度で長年の種族差別が軽減されるとも思えない。


「そうは言っても、貴女方は戦えるのですか? そもそもこのような人たちに抵抗できずに捕まる程度なら今すぐ里に帰った方が良いかと思いますが」

俺としてもこうして会話をした以上、この街でまた捕まったり魔物と戦って死なれたりしたら後味が悪いし、正直に忠告しておいた。

「さ、里の人達に散々止められたのに今更大人しく戻れませんよ・・・

それに私達だって戦闘に関しては素人ではありませんよ」

「何やってるんですか・・・それに戦闘が可能なら何故あんな平凡な男たちに攫われたのですか」

「えっと、もうここには居ないのですが、一人異常に強い男がいまして・・・」

「強い男ね・・・まあそこは良いですよ。今居ない人の話をしても仕方がありません。

・・・ところで、私に一つ提案があるのですが・・・」


俺達は小部屋から出ると、裏路地を抜け、いかがわしい雰囲気の通りも抜け、学院の近くまで戻り少し道を逸れた場所にある建物の前に来ていた。

普通の民家より一回りも二回りも大きいドーム状のその建物は、この街のハンターギルドの集会所である。

「さて、着きましたよ。・・・何をしているのです?」

俺は連れてきた四人が扉の前でまごついているのを見て動きを止めた。

「あ、あの・・・本当にこのまま・・・?」

「はい、そうですよ。何か問題でも?」

俺はあの後、彼女たちにある提案をした。

それは、彼女たちの付き添いで自らもハンターギルドに行くという物であった。

だって心配だし。また捕まったりしたら大変だし。

あとハンターギルドにもちょっと興味あったし。

というのも、俺自身でハンターになって小遣い稼ぎがしたいというだけだ。

金に困ることはない・・・というか、むしろ金は有り余っているのだが。

とりあえずハルカと名乗らせておいた妹らしき少女の面倒も見たい。何も分からない女の子一人でこの先生きていくのは大変だろう。

俺との関係性は・・・まあ、黙っておく。そもそも彼女が本当に遥香だとして、本性が凶暴な俺が兄だという汚点を忘れたというのは良かったのかもしれないと思う。


「・・・えっと、それで、その・・・」

ライムがこちらから目を逸らしてまごまごしていた。

「・・・フードを取ってくれませんか。そういう約束だったでしょう」

ハルカは早々にフードを取ったが、他の三人はフードを目深に被ったままだ。

「亜人種であることを隠していては話にならないでしょう・・・

それにまさかとは思いますが、それで隠し通せるとでも思っていたのですか?」

三人が思いっきり目を逸らす。コイツら、マジか・・・


「失礼しまーす」

そう短く言うと、俺は集会所の扉を開け放った。

瞬間、建物内にいた人々の視線が俺と後ろの四人に向けられる。

最初は俺に向けられた男どもの視線も、すぐに後ろの亜人種三人に向けられた。

それは何か汚い物でも見るような目であった。

なるほど、迫害は事実のようだ。まったく気分の悪いことで・・・

ティアが大人しく剣の姿で俺の収納魔法に収まっているわけだ・・・


「あ、あの・・・」

ルルが俺に何か言おうとする前に、中にいたハンターらしき男が荒々しく声をかけてきた。

「・・・おい、どうしてこんなとこにエルフと獣人がいるんだよ?

ここはお前達の来るような場所じゃねぇんだよ!!」

ハンターの言葉にビクッと肩を震わせる亜人種の三人。

いきなりの罵声に驚くハルカ。

「・・・初対面でその言い草はないですね。謝罪をいただきましょうか」

「何も嬢ちゃんに言ったわけじゃねえ。俺はこの人外どもが気に食わねえだけよ。

嬢ちゃん二人も気をつけな、こんな連中と一緒にいたら変な目で見られるぜ」

・・・人が変わったかのように態度が軟化した。胸糞悪い。

一発ぶん殴ってやろうかと拳を握りかけるも、奥からの声によって止められた。


「そ、そこにいるのはシャルロットさんでは・・・?」

と、一人のハンターが声をかけてきた。

コイツは・・・あぁ、ファルム大森林で俺が撤退させたハンターか。名前は知らんが。

「お久しぶりですね。変わりありませんか?」

「え、ええ・・・それはもう。

ところで今日は何の用で? そこの三人と何か関係が?」

「まあ、そうですね。この三人がギルドに登録したいと仰っていたので付き添いです」

次の瞬間、ギルド内がざわついた。

まあ、普通の反応っちゃ普通の反応だな。人間と亜人種が協力するのは難しいのだろうし。


「・・・で、可能なんですか?」

俺は受付嬢の元へ行くと、そう聞いた。

「は、はあ・・・一応規約違反はしていませんが、その・・・」

受付嬢は俺の後ろにたむろするハンター達に視線を向けた。俺もつられてそちらを見る。

そこにはハルカを除く三人に絡む不躾な野郎どもが。

そして案の定オロオロしている三人。どうしてここに来たんだよ・・・

小さくため息をつくと、俺は受付嬢に向き直り言った。

「では、あの三人がこのハンターギルドにとって有益である・・・つまり、強さを示すことができれば登録の許可を頂けますか?」

「・・・そうですね・・・しかし、なぜそこまで?」

「放っておくのも忍びなかったからですよ・・・あぁ、それと、私もギルドに登録しても?」


・・・その言葉を聞いた先程のハンターが驚きと喜びの表情を浮かべていた。

それもそのはず、人類最強クラスの存在が味方に付くのだから・・・

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