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26、騒乱の森 4

時刻は少し遡り、ファルム大森林の入り口付近。

1~4年の生徒、ハンター達が同じ場所に集まっていた。

彼らの話題は彼らを救った謎の光の槍、そして突然響いてきた何かの咆哮についてである。


「一体何だったんだあれは・・・あれは人間の業じゃないぞ。

女神様の御加護だった・・・のか・・・?」

「そう考えねぇとありゃ説明できねぇよ・・・

魔法に詳しい訳でもないがあんなことは神とかそういう存在しかできねぇだろ」


「さ、さっきの大きな咆哮は何だったのでしょうか・・・

あの変な魔物のものでもなさそうでしたが・・・」

「知らねぇよ・・・少なくとも俺達が関わっていいことじゃない。

そもそも、この森は安全だったんじゃねぇのかよ!!」


あちらこちらで、似たり寄ったりの話題が展開されていた。

この世界では神格的存在が信じられているため女神発言を否定する者はおらず、シャルロットの望み通り、全くの同時に魔物を仕留めた光の槍は女神様の御加護だろうということで片付き始めていた。

しかし、咆哮がドラゴンのものだと主張する者はいなかった。

初心者の狩場として有名なこの場所に、そのような伝説的存在が居るとは思わないのだ。


「・・・あの、皆さん!!

シャルロットさん・・・銀髪のキレイな女の子を見かけてませんか!?」

「俺たちの班だったんだがあいつだけ居ないんだ!!」


そんな時に、シャルロットと同じ班だったセリアとケビンが声を上げた。

それによって、話題はシャルロットについてに変わっていった。


「シャルロットって・・・あのシャルロットか!?」

「俺たちのお嬢が居ない・・・!?

ま、まさか魔物に襲われてそのまま・・・」

「バ、バカ!!不吉なこと言うんじゃねぇ!!」


「しかしこの状況で戻らないんだ・・・

それに女の子だろ?残念だが魔物に襲われて死んだと考えるのが自然だろ」

「いや、あの嬢ちゃんは俺らなんぞよりずっと強かった。

瀕死だった俺のパーティーメンバーも彼女の治癒魔法ですっかり元通りだった・・・

いざとなれば自分にでもかけられるはず」

「魔力切れとか喰われちまったとかあるだろ・・・」


「シャルロットさん・・・大丈夫、ですよね・・・」

「・・・何弱気になってんの。アンタらしくもない。

きっとアイツは生きてる。皆助かって、アイツだけやられるなんてありえない」


アルクも珍しくカグラを励ましていた。

そう言うアルクも、シャルロットの生存は厳しいと内心では思っていたのであるが。


・・・しばらくすると、不自然に静かな時間が訪れた。

何故か誰もが言葉を失ったかのように、一瞬静寂がその場を包んだ。


「・・・大丈夫。彼女は生きているよ」


その声は決して大きくなかったが、その場の全員にはっきりと聞き取れた。

声のした方を見てみると、白いローブに身を包み、フードを被って目元を隠した青年が立っていた。

青年の口元には優し気な笑みが見えたが、それには何か人外じみた物があった。


「・・・誰だ?」

「誰・・・そうだなぁ・・・通りすがりの青年A、かな?

まあ、そう警戒しないで。君たちの敵じゃないよ」


怪しさ満点だったが、誰も文句は言わない・・・というより、言えなかった。

目の前の男は普通じゃない、と全員が感じていたからだ。


「彼女はね・・・試練を受けてるんだ。

君たちにも伝わっているだろう?『ドラゴンの試練』。

彼女は今、ドラゴンと戦っているんだ」


青年の言葉にその場の全員は驚愕した。

普通は疑うところなのだが、すぐに信じた。

何故だか青年の言葉は、すべて真実な気がするのだ。


ドラゴンと戦ってるって・・・そんなの勝てっこねぇ!!

ドラゴンと言やぁ、神の次の存在だろ!!」

「うん、君たちの間ではそうらしいね。

確かに、普通は人間が束になったところで灰すら残らずに消されるだけだ。

歴史上の英雄と呼ばれる存在も、封印をした者はいるが誰一人殺すことはできていない。

・・・だけど、彼女は特別さ。

それでも今は互角ってところかな・・・彼女とて不死じゃないから、負ければ死んじゃうね」


「シャルロットさんが・・・ドラゴンと・・・?」

「俄かには信じがたいけど、何か本当な気がするのよね・・・何者なの?あの男・・・」


「彼女が戦っているのは『豊穣』のドラゴン

名前はあるけど・・・きっと彼女は覚えてないね。色んな名前で呼ばれ過ぎた。

加勢に行くのは自由だけど、死ぬ覚悟をしてから行ってね?

・・・じゃ、僕はもう行くよ。今の僕の仕事は済んだからね。

お達者で。また会うこともあるかもしれない」


そう言い残し、青年はフッと消えた。

しばらく全員フリーズしていたが、その静寂を破ったのは駆け出したカグラの足音だった。


「・・・!!」

「・・・!?ちょっとアンタ!!待ちなさい!!」


駆け出したのはカグラ一人で、他はそれを呆然と見ていただけだった。

別に見捨てようとしたわけではない。突然の話で、全員思考が停止してしまっていたのだ。

追おうとした者が現れた時には、カグラは視界から消えてしまっていた。



「ハァ・・・ハァ・・・!!」


カグラは森の中を駆けていた。

断続的に聞こえる衝撃音をもとに、シャルロットを捜しながら。


(シャルロットさん・・・どうかご無事で・・・!!)


普段人付き合いは苦手なカグラにとって、シャルロットは何故だか初対面時から仲良くなれた大切な友人である。そしてシャルロットを通じて、周りとの距離も少しだが縮まった。

そんなシャルロットと、この数日はまともに話せていない。

自分が変なプライドにこだわって、距離を置いてしまったからだ。

謝りたいと思ってはいたが、謝るタイミングが掴めずにいた。

そんな状態でシャルロットと別れてしまうことになるのは耐えられなかったのだ。


そうして走っていると、近くで爆炎があがったのを見つけた。

その中心に、シャルロットと白いドラゴンが居た。


(・・・居た・・・!!ドラゴンも本当に・・・!!)


ようやく見つかり喜ぶのもつかの間、シャルロットに風の刃が襲い掛かろうとしていた。

シャルロットも慌てて何やらしようとしているが、間に合わないように思えた。

それに気づくと、カグラの身体は自然と動いてしまっていた。



「・・・・・・」


俺は倒れたカグラを見て、何も考えられなくなった。

いや、今すぐ治癒魔法をかけてやれば、恐らく死ぬことはない。

死にさえしていなければ、治せる。

しかし、できたとて目の前のコイツがそれを見逃すか?

いや、見逃さない。治癒魔法には少なからず隙が発生する。

そうなったら俺もカグラも共倒れだ。


『・・・邪魔が入ったが、続けるぞ。

友人を巻き込んだせめてもの詫びに我が最大の魔法を以て殺してやろう。

・・・『終焉之業火カオスフレイム』・・・!!』


ドラゴンの前に巨大な魔法陣が形成され、そこから極小の太陽ともいえる熱量を持つ炎弾が現れる。あらゆるものを跡形なく融解させる、地球の核エネルギーも凌駕する威力の魔法である。

その炎弾が、シャルロットに向けて猛スピードで放たれた。

普通ならば、防御魔法を張ろうと容易く貫通する。

・・・普通ならば。


「・・・『神之盾アイギス』」


シャルロットが手をかざすと半透明の壁が出現し、シャルロットとカグラを守るように展開した。

炎弾と壁が激突した瞬間、超高火力の炎弾は消滅し、壁は無傷のままであった。


『・・・は?』


ポカンとするドラゴン

そうなるのも当然であった。人間が防げるはずなどなかったのだから。


「・・・よぉし、決めたわ・・・」


神之盾アイギス』を解除し、改めて『竜滅剣バルムンク』を構え、ドラゴンに言い放った。


「テメェ即刻殺してこいつカグラ治療するわ・・・!!」

『・・・!?』


その表情は、ドラゴンでさえ怯える程の物であった。


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