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24、騒乱の森 2

「グルルルルゥゥ・・・・!!!」


俺、リョーマ、そして残ったハンター達を見て、虎の魔物は威嚇をしているようだった。

それだけデカけりゃ威嚇なんざ必要なかろうに・・・

そんなどうでもいいことを考えていると、虎の魔物が俺に向かって飛び込んできた。


「おっと・・・!!

デカい図体の割に存外すばしっこい・・・!!」


虎の魔物が振り下ろした腕を跳躍して躱し、そのまま空中で一回転し、右足を虎の脳天めがけて振り下ろした。

単純なかかと落としだが、もし相手が人間ならば頭蓋骨の陥没どころでは済まないだろう。

かかと落としは直撃し、ドゴッ!という鈍い音が辺りに響く。

虎は体の支えが崩れ、酷い土埃をまき散らして倒れた。


(感触は悪くなかったが・・・行ったか?)


蹴った反動で少し痺れる足を気にしながら、様子を伺う。

普通の獣であれば即死であろうが・・・

確認しようと土埃を風魔法で吹き飛ばそうとするが、俺が手を出すまでもなく、虎の方から怒りの咆哮の回答が返ってきた。随分とタフだな・・・


「今の一撃でまだ弱りもせんか・・・困ったな。

先程から俺の刀を突きたててみたりはしたのだが刃が通らなんだ・・・

何か弱点などが分かればいいのだが・・・」

「・・・では、二人で目を潰しましょう。

少なくとも隙はできるでしょうし」

「ふむ・・・悪くないが、却って暴れられるかもしれん。

他に出来ることもないが・・・」


次の瞬間、虎がリョーマに向かって飛び込んできた。

地面を抉るほどの威力を誇る腕の叩きつけをリョーマは最小限の動きで躱し、次に地面を蹴って自分の刀を思いきり虎の目を突き刺した。

虎は苦痛に身をよじり、鍔の辺りまで深く刺さった刀を抜くのに少し手間取ったリョーマに怒りの一撃を浴びせた。


「しまっ・・・ぐッ・・・!!??」

「リョーマさんっ!!」


刀を抜ききり、ギリギリでその一撃を防ぐも、体を支えることができず、その衝撃で吹き飛んで地面に叩きつけられた。致命傷は避けたが、いくらか骨は折れたろう。


(クソ・・・俺の判断ミスか・・・!?

とにかく、リョーマのフォローともう片方の目を・・・!!)


咄嗟に動けないリョーマに、虎の鋭利な牙が襲い掛かる。

俺は猛スピードでリョーマの前に出て、虎の顎を下から蹴り飛ばした。

虎の牙を数本折り、一瞬できた隙を逃さずに虎の目を狙ってつま先をめり込ませた。

柔らかいモノが潰れる嫌な感触に俺は顔をしかめたが、その後俺を狙ったであろう虎の一撃に気づき離れた。その一撃は空を切り、ブォンという音が聞こえた。


「両目は潰した・・・でもやはり・・・」

「死には至らん・・・か。マズいな。まともに動けん」

「・・・・・・」


思ったよりクールな反応に、実は効いてないんじゃと思ったが、直後血反吐を吐いたため、相当やせ我慢をしてるな、と察した。

サムライのプライドが高いというのは事実らしい。

ふぅ・・・という呆れと感心の混じったため息をつき、俺はさっきから傍観を決め込んでいるハンター達に声をあげた。


「・・・皆さん!!

私の事は構わないので、リョーマさんを連れて安全な場所へ!!」


「「「!!??」」」


ハンター達はひどく驚いた。

自分たちよりずっと強いとはいえ、女の子一人を残してこの場を去ることはできない。

何より、


「バカを言うな・・・!!

女子おなご一人にかばわれたとあっては恥だ!!

俺は死ぬまで退かん・・・!!」


と、リョーマが主張していた。

ハンター達もその意見に同調しようとした。しかし・・・


「・・・とう」

「がっ・・・!?」

「「「ええええええぇぇぇっ!?」」」


俺がリョーマの首の裏辺りを手刀で叩くと、小さなうめき声を出しながらリョーマは気絶した。

ハンター達は驚愕の表情を浮かべていたが、そんなことはお構いなしだ。


「さあ!早く安全な場所へ!!

・・・ここは私が抑えますので!!」

「・・・いや、しかし・・・!!」


「・・・行け・・・!!」


ハンター達を射殺さんばかりに睨み、脅すように命令した。

するとハンター達は言葉を失い、黙ってシャルロットの言葉に従った。

・・・前世での威圧の方法が役に立つとは。

暫くするとその姿は見えなくなり、聞こえるのは後ろで暴れまわる虎の発する衝撃音と咆哮だけになった。

・・・よし、これで目撃者は居ない。

惜しまず『本気』を出してみようじゃないか。


・・・普段、シャルロットは目立つのを避けるため、対人戦など、人前では本気を出すことは避ける。

だが、本当に自分や周囲に危険が及ぶとき、人が見ていない時ならば力を出すこともやぶさかではない。


手当たり次第に周囲の木をなぎ倒している虎を睨み、俺は握った拳に膨大な魔力を込める。

拳は紅く変色し、禍々しい見た目になっていた。

これが今の自分の拳だと思うと若干怖くなるが、確かな『パワー』をその拳から感じた。


「こっちに来てから初めての本気マジだ・・・!!

喰らいやがれ!!『大悪魔の拳デモンズ・フィスト』!!」


声か匂いでこちらの居場所を特定したのかこちらに突っ込んでくる虎の顔面をその拳で思いきり殴り飛ばした。

圧倒的な火力を前に虎は成すすべもなく胴と首から上が分かれ、頭部はまるでバレーボールのように数百メートル吹っ飛び、そして残った胴は血の雨をまき散らしながら、力なく倒れた。


「うわぁ・・・グロ注意じゃねぇか。

てかヤバいな・・・自分が怖いんだけど・・・」


目の前の惨状が俺自身の拳一つによって引き起こされたのだと思うと、俺はただただ怖かった。

刀の刃も通さなかった肉体が軽く分断された。

とりあえず、人には使えないな・・・トラウマになる。自分で。


その後、俺は千里眼を使用し、ファルム大森林全域を俯瞰した。

他の場所でも同じような魔物が出現していないか、そして他の班の生徒たちが巻き込まれていないかを確認するためだ。

結果、既にほとんどの班が遭遇していた。

一年の班だけでなく、二~四年の生徒もそれぞれ『凶暴化』した魔物と交戦・若しくは必死に逃亡していた。

一年・二年は大体逃亡していた。

それに対し、戦闘慣れしているのか三・四年は果敢に立ち向かう生徒が多かった。

リョーマを除く二人の学年長アカデミーも戦っていた。

彼らは善戦はしていたが、決定打に欠ける様子だった。

そして逃亡・戦闘班共に既にどの班も満身創痍の様子である。


「まだ犠牲は出てないな・・・

よし、さっさと片付けよう。俺がやったとは気づかれなけりゃ良い・・・!」


俺は天空に飛翔し、ファルム大森林に向かって手をかざした。

すると、巨大な光輝く魔法陣が現れ、その魔法陣から複数の光の槍が出現した。


「・・・『万物滅す光槍グングニル』ッ!!!」


光の槍は全て狂いなくファルム大森林に存在する『凶暴化』した魔物の心臓部を貫き、その活動を停止させた。

地上で魔物と相対していた生徒・ハンター達は突然の出来事に驚愕し、しばらく動きを止めるも、すぐに我に返り退却を始めた。


「・・・やりすぎたか・・・?

いやだが犠牲者を出さずに済んだんだ・・・悪い結果ではないだろう」


俺は地上に降り、若干やり過ぎた感のある行動を少し後悔していた。

明らかに説明のつかない現象だったが・・・そう、神様のご加護とかそういう認識をされると信じて、自分も帰路につこうとした瞬間。

・・・俺の全身を凄まじい衝撃が襲った。


「ぐあ・・・っ!?」


俺の身体は抵抗もできずに吹き飛ばされ、数本の大木をボキボキとへし折りながら尚も吹っ飛んだ。

十秒ほど飛ばされた後、俺は全身を襲う苦痛に耐え、立ち上がった。


(全身折れたな・・・これでも奇跡だ。普通即死だろうし)


自分に治癒魔法をかけダメージを消すと、俺が吹き飛ばされてきた方向から、圧倒的な気配が近づいてきた。

遠目からでも分かる巨大な体躯、鋭い瞳、威容のある翼、俺を吹き飛ばした尻尾、そして逆立つ鱗。


「・・・ドラゴン・・・!!!」


その威容に圧されるも、俺は戦闘態勢をとる。

やらなければ、やられるのだから。


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