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22、ハンターギルドの闇

 俺の作った『ウサギ肉と野菜のスープ』を皆で食べた後、俺達はそれぞれのテントに戻り、床に就いた。

俺はそうでもなかったが、俺以外の5人は今日の戦闘でかなり疲れが溜まっていたらしく、すぐに深い眠りに落ちた。

一方俺は、やるべきことがあったのでテントで狸寝入りを決め込んでいた。


 俺以外の生徒たちが寝静まった頃、テントの外で騒ぎが起きた。

夜の見張り番をしていたハンター達は、近くの茂みからガサガサと音が立ったのに気付いた。

魔物か、あるいは動物かと警戒していると、別の班の護衛をしていたハンターの男が一人飛び出してきた。

そのハンターは慌てた様子で、体の所々が酷く汚れていた。


「た、助けてくれ!

俺達はここから東に行ったところに野宿してたんだが、見たことの無ぇデカい魔物に襲われたんだ!

寝てた生徒は逃がしたんだが、俺達だけじゃ手が足りねぇ!

皆こっちに来て加勢してくれ!!」


シャルロットの班の護衛ハンター達は驚きながらもそれを了承し、突然訪ねてきたハンターに連れられ駆け出して行った。

普通なら護衛を任された生徒たちを放置していくなど考えられないことだが、男ハンターの慌てた様子と見たことのない魔物に対する興味、またもしそれを討伐したときの自分の名誉への欲によって、生徒たちの置き去りという状態を起こしてしまったのだ。


 そんな状況だというのに、顔色一つ変えないシャルロット班の護衛ハンター一人は、目立たぬようにその場に残った。

そのハンターが合図をすると、周囲から他の班にいるはずのハンター達が4名現れた。

ハンター達はニヤニヤしながらシャルロットとセリアのいる女子テント近くに集まり、話し出した。


「クク・・・バカだなぁあいつ等。

そもそもこの小国程度の規模の大森林で『たまたま』他の班に出会う確率なんざ皆無なのになぁ!」

「まったくだ!しかも護衛対象を無視して行きやがる!」


・・・彼らは、悪徳ハンターパーティー『闇鴉やみがらす』のメンバーであった。

ハンターギルドには時たま、違法な依頼を受ける『裏の顔』を持つハンターパーティがいる。

そのメンバーも普段は普通の依頼を受け、悪事が中々露見しないため、ハンターの称号剥奪といった事態を避けているのである。


『闇鴉』は本来10人で活動をしているが、今回は大所帯でも仕方がないと半分だけである。

彼らの目的は女子生徒の誘拐・売り飛ばし。

誘拐された少女たちの行く末は下品な趣味を持つどこかの金持ちの玩具であろう。

彼らは金のためなら殺しもためらわない、特に悪質なパーティーだった。


・・・勿論、先程報告に来たハンターもメンバーである。

ハンターの性格を利用した『引き剥がし』と、事前に打ち合わせた野宿の場所。

計画的な犯罪行為であった。


「・・・で、今回の哀れな犠牲者ちゃんだが・・・やっぱ、あの銀髪のガキか?」

「ま、一択だなぁ。今回のガキの中で飛びぬけて上玉だよ、ありゃ!!」

「そうさな・・・だが俺ァ惜しいな」

「あ?何だ?勿論俺達で楽しんでから売り飛ばすんだぜ?」

「いやぁ、そうじゃねぇ。

あのガキ、容貌だけじゃなくて腕っぷしが強ぇのよ!

しかもあの伝説級の収納魔法が使えて、作った料理のうめぇのなんの!

ありゃ完璧だぜ。売っぱらうより裏奴隷か嫁に欲しいね!」


その話を聞き、男たちは驚き、悩んだ。

収納魔法が使えるとなると、長期的に見れば売り飛ばすより断然金が入る。

メンバーの一人が口にしたという絶品料理も気になる。

抵抗する気力を完全に削いで言いなりにする方がよっぽど得だった。

しかしこれは『裏』の依頼の一環であり、最良物件を自分たちの物にしたことが知れると、後々裏世界の人間たちからの信頼がなくなり、裏切りのギルドへの密告などが行われる恐れがある。


「・・・確かに惜しいが、リスクが高すぎるぜ。

見た目だけでもあのガキは頭一つ抜けてんだ。普通より高く売りつけりゃ、元は取れねえかもしれんがまとまった金は手に入り、信頼も勝ち取れる。

予定通り、攫って売り飛ばすぞ」


その意見に男たちは合意し、改めて女子テントの前に立った。

狙いはシャルロット。

・・・話には出なかったが、もう一人のセリアも攫うことは言うまでもなく全員が分かっていた。


「よし、入・・・」


「おっと・・・中でセリアが熟睡してるんだ・・・起こしてやるなよ」


「「「「何!?」」」」


突然背後から聞こえてきた声。

さっきまでは誰もいなかった筈、と背後を振り返った男たちは更に驚愕した。

そこにいたのはテントの中で寝ているはずのターゲット・・・シャルロットだったからだ。


「テメェ・・・何故そこにいる!!」

「何故・・・何故ねぇ。

お前らから変な気配がしたから・・・と言って信じるか?」


これは事実である。

前世の経験から、シャルロットには相対する人間の『悪意』に敏感であった。

初対面の時にその『悪意』に勘づき、対策をした。

まずその男たちの分断。これはリスクを他の生徒たちにも押し付けることになるが、最終的なターゲットは自分だろうと確信を持っていたためである。

夜中の犯行になるだろうとしばらく泳がせ、今に至る。

ほぼほぼ筋書き通り。賭けの部分もあったが、こうして引っかかってくれた。

まったく、悪人というのは頭がいいように見えて単純な場合が多い。


「・・・とにかく、お前らに捕まる気は毛頭無ぇな。

このまま警吏に突き出すのは簡単だが、ちゃんと『反省』してもらわねぇとな・・・!

お前らみたいなやつが増えちゃ迷惑だからな!」


そう言って俺は関節を鳴らそうとしたが、肉体が違うからか鳴らすことができなかった。

何か恥ずかしい。


「ハッ!テメェみたいなガキに何が出来んだよ!

お前ら、捕まえるぞ!!」


「「「オォ!!!」」」


リーダーらしき男の号令に3人が反応し、剣、短剣を手に4人同時にこちらに向かってくる。

前世の俺でも勝てるであろう4人相手だ。潰すのは容易だが、こんな輩でも人間。命までは奪いたくない。

よって、俺はかなりの手加減をしてやった。


「オラ!大人しくしやがれ!!」

「・・・ふっ!!」


俺の足を短剣で刺そうとした男は、パキン、という音で顔面蒼白になる。

俺の膝蹴りで短剣をポッキリと折ってやった。その後みぞおちに一発。大人しくなった。


「「この・・・!!」」

「遅ぇ!!」


今度は二人同時に剣で斬りかかってくる。

俺は剣が体に届く前に一人の腹に蹴りを入れ軽く吹っ飛ばし、次に迫るもう一人の振る剣を左手の指の力で受け止め、男の顎にハイキックを食らわせた。

男は少し宙に浮いて落下し、そのまま気絶した。


「ヒィッ・・・!!」

「・・・終わり、だな」


最後の一人が手にしていた剣を蹴り落とすと戦意を失い逃げようとした。

俺がそれを許そうハズがなく、足をかけて転ばせ、男が持っていた剣を首元近くの地面に深く刺した。

男はそのまま泡を吹いて気絶した。


「・・・ったく、張り合いの無ぇ奴らだこと・・・」


その後男たちを近くの木にきつく縛り付け動けないようにした後、俺はテントに戻った。

「むにゃむにゃ・・・シャルロットさん、もう食べられませんよぉ・・・」と気の抜けた寝言を言うセリアに苦笑いし、俺もあくびをしながら横になった。

元より夜更かしが苦手だった俺はすぐに眠りに落ちた。

・・・次の日起こる災難など知らずに。


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