2、目が覚めると美少女だった
「ん・・・」
大牙は見知らぬ部屋で目を覚ました。
清潔感のある白を基調とした個室にしては広すぎる部屋。
その部屋のベッドに大牙は横たわっていた。
(・・・死ななかった・・・のか?病室には見えないが・・・)
ベッドから上半身だけ起こして、状況を確認する。
まず、通り魔に刺されたはずの脇腹を触ってみる。
血が手にべっとりと付くようなこともなく、痛みもない
そして大牙は自身の体に目を落とす。
華奢な両腕。透き通るような白い肌。
かわいらしい服。
そして、そこそこに発達した両胸の果実・・・
ふむふむ。
なるほど?
えーっと・・・
「俺・・・女になってる・・・!?」
うわあああぁぁぁぁぁぁぁ・・・と、大牙の・・・いや、少女の悲鳴が屋敷中にこだましたのだった。
しばらくして、少し落ち着いた大牙は、頭の中に身に覚えのない記憶があることに気づいた。
俺・・・この少女の名前はシャルロット・フォン・オーガスタ。
この世界の有力貴族の娘。15歳である。妹と同い年になるのか・・・
現当主は子宝には恵まれたが女子には恵まれず、自分がようやく生まれたたった一人の娘、あるいは妹として両親や兄たちに可愛がられて育てられたこと。そして・・・
「・・・前世の俺、欠片も残ってないな・・・」
これは部屋に姿見を見つけて知ったことだが・・・超絶美少女である。
正直言って妹より可愛いと思う。許せ妹よ。
流れるような銀髪に白い肌。
まだ幼さの抜けない顔立ち、守ってあげたくなるような華奢な体。
決して激しい主張はしないが形の良い胸部。
・・・おっと、自分の身体を見て興奮するほど堕ちていないぞ俺は。
それから少しして。
シャルロットの部屋のドアがノックされた。
「シャル、居るかい?
何か悲鳴が聞こえたんだが、どうしたん・・・だ・・・」
「・・・あっ」
シャルロットの兄の一人、次男クリストが可愛い妹の部屋で見たもの、それは・・・
・・・姿見の前で下着姿になった妹であった。
・・・いや、シャルロット(大牙)が不用心にも下着姿になっていたのはそういう意味ではない。
本当にただ寝具の隣に置いてあった服に着替えてしまおうと苦戦していたのだ。
決して下心ではない。決して。・・・いや、マジで。
・・・とにかく、不用心だったシャルロットも悪かったかもしれない。
しかし返事も聞かずに妹とはいえ女子の部屋に入ってきたクリストが悪いと思う。
「す、すまない!!そういうつもりでは・・・!!」
「・・・最低だな」
シャルロットの一言にあからさまに精神的ダメージを受けた様子のクリスト。
クリストに限らず、シャルロットの兄たちはシスコンであった。
クリストが、シャルロットの口調がいつもの丁寧なそれでなかったのに気付くのはここから立ち直った後であった・・・