19、ファルム大森林へ
教師陣からの呼び出しの後、俺はファルム大森林への大遠足でどう立ち回るかを考えていた。
半ば嫌がらせかと思うほど雑に押し付けられた仕事ではあるが、万が一生徒の誰かにケガをされたりするのは後味が悪い。最悪の事態を避けねばならないのは言うまでもないが・・・
そもそも、この遠足に参加するということはそこそこ腕に自信があるということだから、そうそう森の魔物に苦戦することはない・・・ハズ。
凶暴化しているという話ではあったが、強さにそう差が出るとも思えない。
その上当日は学院側から依頼を受けたハンター達が一応護衛につくのだ。
普通に考えると心配することはなさそうなのだが・・・例によって嫌な予感がする。
この世界に来てから物事が平穏に済んだことがない気がする。
(えーと・・・一年の参加人数は・・・30人程度か。
そんなに大人数で行動もできない・・・一班6人程度に分けるか。
でもそれぞれの安全の確保が難しいか・・・うーん・・・)
珍しく悩む様子の俺に寮のメンバー達がそれとなく心配してくれていた。
そんな三人に大丈夫だと伝えながらも、俺はその日も、次の日も頭を悩ませていた。
・・・疲れた。
こんなに頭を使うのは久しぶりかもしれない。
ファルム大森林への遠征を翌日に控えた夜、何とか考えのまとまった俺は少し早めに床に就いた。
未だ消えない胸の中の不安はあったが、疲れもあって俺はすぐに深い眠りについた。
遠征当日、俺、カグラ、アルクは共に校外に集合した。
既に一年の他のメンバー達は揃っていた。
約三十人・・・内訳としては自分たちを含めて、男子20、女子10程度。
先日の宣伝での手応えからしたら少し少ないかな・・・と思ったが、元々今年の入学生に戦闘系の生徒が例年より少ないらしく、これでもまあまあ集まったほうなのである。
上限人数も決められているし、第一安全を守りやすくもなるため悪いことではないのだ。
俺は一年の参加メンバーの前に立ち、今日の方針を伝えた。
まず、大人数での行動は様々な対応が遅れるため、班を6つに分ける。
男女比は大体男子四人、女子二人。
基本的に男子の方が戦闘力が高く、参加人数の男女比からしても丁度いい。
その中に一人ずつ、メンバーの中で特に優れた生徒を入れる。
これは俺、カグラ、アルクのトップ組と、何気なく参加していたエル、剣に優れた男子グレイと、魔法に優れた女子リリーの六人。
残りは先に説明した男女比・戦闘力のバランスを考えて振り分けた。
日に一度の魔法・剣術の訓練を見学し、俺が決めたのである。
そこでエルが意外と剣・魔法両方に精通するオールラウンダーだと判明したのだ。
説明を終え、俺たちは馬車に乗ってファルム大森林へと向かった。
ファルム大森林は王都を出て南にずっと直進すると見えてくる。
近づくと、「大森林」と呼ばれる所以が良く分かる。
広大な面積もそうだが、木々の大きさも普通ではない。一本一本が軽く10メートル程ありそうな大樹ばかりである。いざ目の当たりにすると少し不気味ささえ感じる。
馬車を降りると、先回りしていた護衛のハンター達が迎えてくれた。
ガタイの良い男が中心だったが、女性もちまちま。
総勢15人・・・一班に3、4人というところか。
「・・・あなた方が今回護衛をしていただけるハンターの方々ですね?」
「ああ。あんた達はきちんと生かして帰してやるさ」
随分上から目線だな・・・まあいい。
ここの振り分けも肝心。ハンター側の戦力バランスも考えなければ。
「では、振り分けですが・・・」
「・・・何?アンタが決めるのか」
「はい。学年の代表として公正に、安全性が高まるように・・・」
「・・・お互いの戦力なら俺達同士の方が把握してる。
戦力バランスを考えるんなら俺達に組ませた方がいいんじゃないか?」
「それもそうですが、基準は他にもあるのです。どうか従ってください」
そう断った後、俺はハンターの振り分けを始めた。
俺たちの班には3人の男ハンターと1人の女ハンターを振り分けた。
その後、他の班にも振り分け、俺の独断で全て決まった。
ちゃんと考えがあってのことだが、説明はしない。
(・・・それに、分かる人は分かりそうだしな)
一連のやり取りを終えた後、俺たちは順番に大森林に入った。
俺たちの班が最初に入り、その後5分置きくらいで次の班が入る。
他の人たちに任せた班が心配じゃないと言うとウソになるが、カグラやアルクら5人を信じるしかあるまい。
それに、この世界に来てから初めて「魔物」という存在に出くわすのだ。
出会えば殺される危険性さえある存在だというのは分かっているが、ファンタジー世界の登場キャラクターを実際目にするいい機会だ。
驕りと言われればそうだが、俺は少なくともいわゆる「チュートリアル」レベルの魔物に遅れは取らない確信があったのだ。
そうして俺は、一抹の不安と期待を胸にファルム大森林を進んでいく。
・・・この考えが甘かったことに、この時のシャルロットは気づいていない。
この世界に来て初めて、『強大』な敵と相対することになるのだから。




