表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/41

11、学院入学試験 その1

王都オーレイアに到着して数十分後、俺はモルガナ学院の校舎前に来ていた。


・・・改めてモルガナ学院を説明すると、仕組みは日本の大学のようなものである。

四年制で、『座学』『剣術』『魔法』の三つの分野を主に学ぶ。

とはいえ人には得意・不得意がある。

試験にはそれを見極め、それぞれを重点的に学ぶ学科に編入させるという役割を持つ。

勿論、どの分野にも秀でない者は入学などできない。

その基準がこの世界においてはトップクラスの名門なのである。

後は高額な学費が特徴で、生徒のほとんどはお坊ちゃまかお嬢様。

しかし、平民の中に埋もれた才能にもこの学院は目を付けている。

平民の子で、尚且ついずれかの分野で才能を持つ者の学費は免除。

そして出自関係なく、各分野でトップの成績を持つ者も学費が免除される。


・・・その裏で貴族による賄賂が横行することも少なからずあるのだが・・・

シャルロットはその事実をまだ知らない。


「はー・・・デカいな。流石はエリート校って感じ・・・」


俺は校舎の大きさに目を見張った。

見た感じ中央の城と同じくらいか。全校生徒数ってどの位だろうか?

・・・ともかく、今は学生寮に行くのが先である。

身長の数倍の大きさを持つ豪華な装飾をされた門をくぐり、敷地内の寮に向かおうとしていると、


「はわわ・・・大きいです・・・流石は名門校・・・」


と、先程の俺と同じような感想を漏らす少女が門の前に立っていた。

何となくその少女が気になり、しばらく見ていた。


(・・・10分は経ったぞ)


少女は門の前に立ち尽くして動かなかった。

結構な荷物を持ってるし多分受験生だが・・・

そう思い、俺はその少女に話しかけた。


「え、えーっと、受験生・・・ですよね?

寮の場所が分からないなら一緒に・・・」


「・・・はっ!?

す、すみませんです・・・見とれてて・・・」


そう言って俺を見た少女は一瞬硬直して、


「はわわ・・・!

き、貴族の女の子から声をかけられました・・・ど、どうしよう・・・?」


・・・忙しい子だ。

衣服を見た感じ、平民の少女であった。

前世では一応一般人であったため、何となく親近感がわいた。


「私はシャルロット・フォン・オーガスタです。貴女は?」


「ひゃうっ!?

わ・・・わわ私の名前はエリスといいますですぅ!!」


いちいち反応がオーバーだな・・・と俺は思った。

実際、平民からしたら貴族とは雲の上の存在であり、普通貴族から話しかけるようなことはない。

まあオーガスタ家はその例に当てはまらない、領民とは良好な関係を築いている家で、大牙が転生する前のシャルロットは領地の子供たちにもよく話しかけていたのだが。


「とりあえず、学生寮に行きましょうか?」


「は、はいぃ!」


(・・・悪い子ではなさそうだな。

どんな人間が居るかと少々不安ではあったが、こんな子がいるなら大丈夫そうかな・・・)


と、俺はそんなことを考えながらエリスと学生寮に向かった。

エリスは始終、


「貴族さんに声掛けられちゃったですぅ・・・お、お友達になれるでしょうか・・・?」


といったことを呟いていた。

周りをキョロキョロしたり、周囲に気を取られ遅れた足取りを小走りで慌てて追いかけてきたりする一挙手一投足が何となく小動物みたいで内心ほっこりしていた。


学生寮にたどり着くと、魔法紙が貼られた看板が建物の前にあった。

俺が聞かされていたように紙に手をかざすと、数字が浮かび上がった。

モルガナ学院の受験生には、学生寮が解放される。

あらかじめ割り当てられた部屋の番号が、今浮かび上がった数字である。


「えっと・・・『103』・・・か」


元の世界の数字ではなかったが、問題なく読むことができた。

部屋の位置も把握していたし、余裕をもってエリスを待っていると、


「『103』・・・

はわわ・・・・シャルロット様と同じ部屋です・・・!」


なんと。まさか同じ部屋だったとは。

数多ある四人部屋のうちで一緒になるとは、偶然である。

・・・そういえば、難なく文字を読めていたな。

この世界の識字率は低く、平民は文字の読めない者が多いそうだし。


「偶然ですね!同じ部屋になるなんて。

エリスさんは文字が読めるのですね」


「は、はい!

父が学者をしていて、小さなころから勉強できたので・・・」


なるほど。そういうところもあるのか。

俺は納得して、エリスと共に『103』の部屋に向かった。


目的の部屋にたどり着くと、俺は少し緊張しながら扉を開けた。

そこには・・・


・・・誰もいなかった。

どうやら俺たちが一番乗りらしい。

若干肩透かしを食らったが、改めてすごい部屋だと思った。

とても学生四人が使う部屋とは思えない大きな部屋だった。

恐らく魔法で空間を弄っているのだろう。でないとこの建物にこのような部屋は作れない。


「はわわ・・・こんな広い部屋初めてですぅ・・・!」


「確かに広いですね・・・」


まあ、シャルロット一人の部屋と同じくらいの広さなのだが、それは黙っておく。

・・・エリスとしばらく談笑していると、突然大きな声が部屋に響いた。


「・・・たのもう!!」


「「!?」」


俺とエリスは同時に肩をビクッとさせた。

たのもうって・・・昔の日本かよ、と俺は思い、部屋に入ってくる人物を見て驚いた。

バリバリ着物を着た和風女子だったのだ。

しかも明らかな日本刀を携えていた。

青い髪と瞳がなければ完璧に日本人である。


和風の少女は俺たちの前で正座し、


「この度、共に試験を受けるカグラ・シノミヤと申します。

遠い東の国より馳せ参じた故不慣れなところもあると思いますがご容赦願いたく・・・」


・・・と、丁寧な自己紹介をされた。完全な日本式であるが・・・

おそらく、日本のような国がこの世界にもあるのだろう。


「はわわ・・・わ、私はエリスといいますぅ!」


「私はシャルロット・フォン・オーガスタです。よろしくお願いしますね」


「エリス様に・・・シャルロット様ですね。

すみません、故郷にはいないようなお名前ですので少し違和感が」


「・・・故郷とはどのような国でしょうか?」


「そうですね・・・我々にとっては普通ですが、独自の文化が発展しているようです。

この都ほどの華やかさはありませんが、過ごしやすい国ですよ。

・・・この衣服や刀も、こちらでは馴染み無いでしょう?」


「とっても綺麗な服です・・・見たことないですよ!」


「ふふ・・・そうでしょう?」


俺は若干戸惑ったが、やはり振る舞いからして日本人である。

その後また詳しく聞いたが、ますます日本っぽさが増した。

いつか行ってみたいな・・・



「・・・おや、最後の方が来たようですよ」


カグラが扉を指さして言うと、扉が開き最後の人物が現れた。


「・・・貴女たちが、今日一緒に過ごす人たち?」


金髪ロングで赤い目を持つ女性が入ってきた。

若干目つきがきついが、それを差し引いても相当な美人である。

・・・そして、胸が大きい。

俺は咄嗟に目をそらしてしまった。前世の俺は硬派だった。

・・・が、今は女なので堂々としていよう。

やはり他人の身体では反応なしではないようだ。


「・・・私は、アルク・フォン・ヴェルダンディよ」


「私は・・・」


「あぁ、いいわ。別に貴女達となれ合う気はないから」


「「「・・・」」」


「・・・な、何よ。何か文句でも?」


「・・・初対面にその態度は無礼では?」


「ちょ、カグラさん・・・」


俺はアルクを射るような目で睨むカグラを制止する。

こんな貴族同士の争いは不毛の一言に尽きるのである。


「・・・フン。貴女、命拾いしたわね。

そこの子が止めてなかったら死んでたわよ」


「何だと・・・?」


今にもカグラが日本刀を抜きそうになったので、俺はそれも止めた。


「あ、アルクさんももうこの辺りで・・・」


アルクにも俺は遠慮気味にそう言った。

俺が何か問題を起こすと、オーガスタ家に迷惑がかかるのだから。


「・・・そんなつもりなかったわよ」


アルクは俺から目をそらし、少し悲しそうに言った。

俺は何か引っかかるものを感じつつ、この世界の人々との交流を有意義に感じていた。

俺とアルクは貴族。恐らくカグラも苗字あるし貴族だ。

エリスは平民だが、人懐っこくて俺やカグラとよく話した。

アルクは・・・あまり喋らなかったが、多分根っからの悪人ではないだろう。


・・・そうしていつの間にか夜になり、俺たちは明日に備えて眠りについた。

ここにいる全員で、学院に入学できるよう俺は祈った。


・・・そして、試験の日がやってきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ