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新米創造神の箱庭創世記  作者: 月城みなも
32/54

神を封印した英雄の箱庭

冬コミで配布したペーパーで書いた内容です。

誰も持って行かなかったので掲載しました。

若干改稿してます。

「ふぅ、助かったよ。ジャンヌ」

「どういたしまして、創造神様」

「なにか怒ってる?」

 名前ではなく役職で自分を呼ぶときは彼女が不機嫌なときだ。

「別に怒ってなんていませんよ? あの子に力を授けるのは危険ですから気をつけてくださいねって申し上げましたのにそれを無視して力を授けたあとあっさり裏切られて封印されたことなんて気にしてませんからね」

 あぁ、これは心配をかけたことを怒ってるんだな。

 手を伸ばして彼女の頭を撫でる。

「心配かけてごめんね。別にジャンヌの意見を無視した訳じゃないんだ。そんなことになっても大丈夫なようにしてあったから力を与えたんだよ。僕はこの通りなんともないから機嫌を直してよ」

「・・・心配かけた分の埋め合わせをシィル様がしてくれたら許します」

「わかったよ。甘いお菓子を用意して埋め合わせをしよう」

 頭を撫でながらそういうと彼女ははにかむように「はい」と答えた。

 彼女の機嫌がなおったところで僕は先程までいた世界の箱庭を僕は見つめる。

 創造神である僕を封印したことでようやく終わったはずの戦乱がふたたび始まろうとしていた。

 僕が力を授けた男は『力』が使えなくなったために敵対する勢力に討ち取られてしまったからだ。

 

「それよりも、いったいどうやって封印から出てきたんですか? 」

「どうやってもなにも、普通に封印の綻びからだけど?」

「綻び? あの封印は完璧でしたよ? 内側から綻びを作ったんですか?」

「そんなことしなくても、勝手に綻んでいたよ。すぐに壊れたでしょ、封印」

「・・・あれはシィル様が壊したんじゃないんですか?」

「そんなことはしていないよ。あれは自壊したんだよ、封印そのものが」

「?」

 僕のいっていることがわからないのか、彼女はこてんと首を傾ける。

「まず、当たり前のお話になるけど、箱庭の世界は創造神である僕の力で創造されている。だから箱庭で行使される力は僕の力の欠片ということになる。ここまでは問題ないようね?」

「はい」

「箱庭に満ちている力は僕と繋がっている。僕たち創造神が箱庭の存在に力を授けるっていうのは、この繋がりを強くして注がれる力を強くしているだけなんだよ」

「力を与えるというものの、実際は力を貸しているだけということですか?」

「能力自体は彼自身のものだよ。でもその能力を使うための力は僕から供給されている感じかな。そこで問題だが、なにかの理由で僕からの力の供給がなくなったりしたらどうなると思う?」

「あ」

「そう、与えられた能力そのものが使えなくなるよね」

 この箱庭の世界は長く戦乱が続いていた。

 僕はそんな中、戦乱をなくそうと頑張っている一人の青年に力を授けて戦乱を収めさせようと計画した。

 創造神である僕は箱庭には基本干渉できないため、見込みのある青年にその役目を担わせたわけだ。

 無事戦乱は彼の手によって終わりを告げ、新しい時代が訪れたのだが彼はそれまで協力や助言をしていた僕の力--正確には僕の影響力--が今度は脅威ダと思うようになった。

 そこで、僕を封印することで僕の影響力を押さえようとした。

 そしてそれは実際にうまくいった、いや、うまくいってしまった。

 結果、箱庭の世界へ注がれる僕の力が止まってしまい世界が崩壊し始めたのだ。

 もっとも、力の供給が止まったからといっていきなり崩壊するわけではない。

 しかし、僕から彼に与えられた能力は基本的に僕からの力の供給がないとまともに機能しない。

 僕を封印したことで、彼は能力を使うための力の供給がたたれたわけだが、彼の体に残っている力のおかげでしばらくは能力が使えてしまったことで彼は大丈夫だと勘違いをしてしまった。

 僕の封印にも力を使っていたために、彼の体に残っている力はすぐに尽きてしまうことになった。

 結果、能力が使えなくなった彼はあっさりの不満を持つものたちに殺されてしまい、せっかく収まった戦乱がふたたび箱庭に広がってしまった。

 ちなみ僕は彼の能力が停止した段階で綻び出した封印からあっさりと抜け出した。

「助言とかは何度もしていたんだけどね」

「あの子は育った環境の影響でまともに見えただけですよ」

「実際、途中までは本当にいい子だったんだけどね」

 力を授けた彼は本当に英雄になれる器だった。

 事実、彼は戦乱を収めることに成功した。

 しかし、彼はあまりに臆病すぎた。

 戦乱を収められるほどの力をもちながらも彼は常に怯えていた。

 そんな彼だからこそ力に驕ることなくやっていけるだろうと思っていたのだが、臆病すぎるがゆえに力を持つものを危険視し排除するようになってしまった。

 何度も諌めていたのだが、まさか力を授けた僕自身を封印するとは考えていなかった。

 今にして思えば、力を自分に授けた僕の能力に怯えた結果なのだろう。

 自分以外に力を授けられたらと考えたら怖くして仕方なかったというところか。

「臆病すぎるがために誰も信じられず、シィル様まで封印した結果の破滅ですか」

「僕たちは世界を創造するけれど、創造したあとは中に生きる存在の意思を尊重する。ときどき助言したりちょっとだけ力を貸すけど、基本は彼らの選択で世界が変化するように見守るだけさ」

「滅びもまた、ひとつの選択と?」

「別に国が滅んでも世界が本当の意味で壊れる訳じゃないからね。滅んだあと、そこからまた新しい世界に変化していくだけさ」

「この箱庭はどうしますか?」

「彼のおかげで一時的にとはいえ戦乱が収まった影響か以前の戦乱と違って大きな勢力がいくつかできてる。これなら手を出さなくても自然と落ち着くと思うよ」

 仮に統一ができなくてもお互いを牽制しあって大きな戦争に発展はしないだろう。

 最善の結果ではないが、しばらくは落ち着いた発展をするのではないだろうか。

「では、この箱庭への干渉はこれまでということで、定期観測するように指示を出します」

「それでいいよ。さて、次の箱庭を世話する前に埋め合わせをしようか。なにか要望はあるかい?」

「それでは、シィル様の誠意が見える埋め合わせでお願いします」

「相変わらず手厳しいね、ジャンヌは。では、頑張って用意しようか」

「期待しますね」

 箱庭の中とちがって、こちらは平穏そのものである。

ときどき、その世界の神様を封印してって話を聞きますが、普通その世界の神様っていろんなところに影響力を持っているはずなので、封印なんてしてしまったら影響が大きすぎると思うのです。

創造神の場合、世界そのものを司っているはずなので最悪、崩壊してしまうのではと思って書いたのがこのお話です。

実際、神の手を離れた力は神が居なくても存続すると思いますが、実際どうなんでしょうね?

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