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新米創造神の箱庭創世記  作者: 月城みなも
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完璧(?)な箱庭

伝えたいことが表現できないというのはつらいですね。

言いたいこと、まとめたいことがあるのにまとまらないとイライラします。

「箱庭の管理は一段落したし、お茶にしようか。話はお茶を飲みながらでいいかい?」

「はい。自分もちょうど一休みするつもりでしたので」

 そう言って、箱庭の管理を終えると私たちはお茶の用意をして一服する。

「彼の作った箱庭だけどね、それは見事な出来だったよ」

 そのとき作った箱庭を思い出すようにシィル様は語り出した。

 それはシィル様が昇進試験を受けたときのお話でした。

 当時、シィル様は自身をライバル視している神様の二人が試験を受けておられたそうです。

「彼の作った世界は無駄がなく、住人も順調の自立をしていて手のかからないいい世界だった。でも、最後には住人が滅んでしまったんだ。僕も結果を聞いたときは驚いたものだよ」

 シィル様は本当に信じられないといった顔でそんなことを言いました。

「一体、何があったんでしょうか?」

「きっかけは異常気象だったね。雨が降らなくて、干ばつが起こったんだ。それ自体は自然なことなんだけど、起こった場所が悪かったのと期間が少し長くてね。放置するには危険だと判断して雨を降らせることにしたのだけれど、これが思わぬ事態を引き起こしたんだ」

 その箱庭の住人は優秀だった。

 災害に備えていろいろな対策を立てていて、当時起こっていた干ばつに対してもうまく対応をしていた。

 被害が徐々に大きくなっているものの、それでも諦めず抵抗していた。

 おそらく、何もせずにいれば乗り越えることが出来たであろう。

 しかし、被害が大きくなっていたが故に箱庭の創造神は干渉をしてしまった。

 創造神の干渉は、箱庭の法則をすべて無視するものであり、箱庭の住人に予測できるものではない。

「彼らは良くも悪くも彼らを作った創造神と同じ完璧主義者のような気質を持っていた。しかし、それ故に創造神の干渉によって引き起こされた想定外状況に対して、柔軟に対応することが出来なかったのさ」

「なるほど」

 創造神を敬うことはあっても頼ることがなかったが故に世界の法則すら曲げてしまうほどの力を創造神が持っていると彼らは思っていなかった。

 創造神の力だと思わなかった彼らは、これまで積み上げてきた知識では起こりえない現象に戸惑い、自らの知識を疑いだした。

 例外ともいえる創造神の干渉が、彼らの想定を狂わせることになった。

 完璧主義であるが故に遊びがなかった彼らの備えは想定外の事態にまともに機能せず、被害の拡大をもたらしていく。

 気づいたときにはもう手遅れになっていた。

「その点、僕の作った世界はそこまで細かく作り込んでいないから、出来映え的には良くも悪くも普通だった。大きな発展もなかったし、災害が起こるたびに大騒ぎだったよ。でも、できるだけ干渉しないようにしていたから想定外のことが起こっても柔軟出来る素養が住人たちに備わったみたいだ。世界を管理するにはきっとこういう曖昧な部分も必要なんだなって試験を受けて思ったよ」

 創造神の干渉というあり得ない事態に対して、あらがうのではなく受け入れることで災害を受け流して彼らは生き延びた。

「完璧すぎると、想定外の事態に対応できなくなって崩れてしまう。柔軟すぎるのも問題ですが、多少は遊びがあった方がいいと言うことでしょうか?」

「なんでもかんでも僕たちがやるんなら、知的生命体なんて箱庭には必要ないんだよ。僕たちはあくまでほんのちょっとだけ手助けをする程度が一番いいんだよ」

「では、先ほど滅んでしまった箱庭についてはどのような対応が正解だったんでしょうか?」

「んー、そうだね。僕個人の意見でいいかい?」

「はい」

「ボクの作った箱庭で同じことが起こったら、多分干ばつに関する助言を与えて住人に対応させるかな。あるいは必要な技術を研究者にひらめかせるなどして対策をとらせる感じかな。さっきも行ったけどあまり大規模な干渉はしない方が箱庭的には健全なんだ。だから対策も僕たちではなく、住人たちにやらせるの一番だと思う」

 正解はわからないけどね、とシィル様は付け加えられました。

 ちょうどお茶もなくなったので、休憩は終わりとなりました。

 

 そういえば、昇進試験に落ちてしまった神様はどうなったのでしょうか?

「ん? 彼もそのあと昇進試験に通って箱庭の管理をしているよ。時々いっしょに飲んでるし」

 どうやら、お二人の仲は悪くないようです。

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