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新米創造神の箱庭創世記  作者: 月城みなも
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お試しの箱庭

「シィル様? 一体なにを見ておられるのですか?」

 日課になっている箱庭の管理を終えて休憩に戻ってくると、主神であり主であるシィル様は一つの箱庭を見ておられた。

「あぁ、ジャンヌ。お疲れ様」

「お疲れ様です。その箱庭は?」

 私たち眷属神が管理する箱庭とは違うようで、管理する箱庭をすべて把握している私が知らないということは新しく作った箱庭でしょうか?

「これはぼくが創造神になるときに作った試験の箱庭だよ」

 シィル様は照れくさそうにしながらも愛おしそうに手の中にある箱庭を見つめる。

「シィル様が初めて作った箱庭ですか。ですが管理リストには入っていなかったような」

「これは昇神試験で作ったものだからね。未熟で恥ずかしいから管理リストには入れてないんだ。あとは現場の仕事を忘れないようにしようと思って自分で管理してるから」

「なるほど。・・・少し見せていただいても?」

「かまわないよ。管理は続けていたから大分よくなってるし」

 そう言って見せていただいた箱庭はシィル様が言うほどひどいものではなかった。

 確かにつたない部分はあるものの一つの世界としてちゃんと機能していたのだが・・・。

「なんというか、単純な世界ですね」

 そう、その箱には非常に単純な作りをしていた。

 知的生命体が存在するものの規模はそれほど大きくなく、開発も進んでいないため自然豊かな環境が維持されていた。

「昇進試験に合格するためにあまり複雑な世界にはしないようにしたんだ」

 なるほど、昇進試験の合格条件を満たすようにしつつ、管理がしやすい箱庭を作ったと言うことなのでしょう。

「後は、みんなの保養地として整備しているんだよ」

「保養地?」

「うん、一応作った世界には制限をつければみんなも入れるだろう? 世界の管理なんて大変なことをしているんだ。息抜きができるところを用意した方がいいと思ってね。それに、管理している世界で生まれた娯楽とかを気兼ねなく楽しめる場所があればと思ってね」

「それは確かにうれしいですね」

 箱庭を管理しているこの上位世界でも確かに同じことはできますが、どうしても味気ないものになってしまいます。

 露天風呂などもそっくりに作ることはできても違和感が生まれてしまうのです。

「人口が少ないことと各文明を分散させることで文化が異なる土地を作り出しているのですね」

「うん。気に入った文化が芽生えやすい土地にその文化の種をまいて育てたんだ」

「ですが、公益などでいろんな文化が混ざるとおかしくなるのではないでしょうか?」

「文化の生まれた土地の指導者はみんな僕たち神の存在を知っていてこの世界の存在理由も伝えてある。あくまで現状維持を前提に管理を委任してる感じかな? だから、過度には変化しないようになっている」

「なるほど。管理者を置いているのですね」

「別に支配しているわけじゃないよ? あくまでこういう方向にしてねって話。代わりに加護とか与えて統治がしやすいように配慮したりはしてる。元々、この世界の種族は温厚であまり変化を好まないから管理そのものが任せやすいというのもあるけど」

「それも含めて創造したと?」

「うん。その分評価は低めだったけど。変化が少ない分、成長速度も遅いからね」

「変化が大きくて、全滅してしまう世界よりはいいのではないでしょうか?」

「全滅しないのは前提条件だよ? 壊れてしまう世界を作ろうとする創造神はいないだろう」

 それは当たり前のことでしょう。

 昇進試験では作った箱庭が壊れるのは当然のことですが、壊れなくても不安定で殺伐としすぎた世界は失格の対象となります。

 生命を育み新しい可能性を作り出すことが創造神の役目の一つなのです。

 そういう意味では、変化が緩やかな世界というのは新人の創造神が作る世界としては合格できると言うことでしょう。

「そういえば、昇進試験に落ちたシィル様の同期だった方は合格されたのでしょうか?」

「彼かい? いや、この間の試験は落ちたと風の噂に聞いたけど確認はしてないね」

 シィル様の同期の方でシィル様をライバル視している方がいらっしゃいます。

 シィル様といっしょに昇進試験を受けておられたのですが、その方は昇進試験に落ちてしまいました。

 そのときシィル様が合格したことにかなり文句を言っていたというお話でした。

「昇進したシィル様に対して口の利き方がなっていないのはどうかと思うんですけどね」

 同期であろうと、昇進したシィル様は身分的には上になります。

 目上に対して失礼なことを言うのはどうかとも思うのですが、シィル様は本人が気にしていらっしゃらない以上、なにもいえないのですが。

「彼は真面目だから。大雑把な僕のやり方が気に入らないんじゃないかな? 世界とちゃんと向き合ってないように見えるのかもしれない」

 シィル様のおっしゃられることは理解できます。

 シィル様に文句を言っていたと先ほどは言いましたが、あれはなにがだめなのかわからないという感じでした。

 実際、作られた箱庭はとても良くできていました。

 だというのに、最後は全滅という結果に終わったのです。

 シィル様に言わせると完璧すぎたの理由だそうですが、どういうことなのでしょうか?

「あくまで僕の見解になるけど聞くかい?」

「お願いします」

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