勇者と聖女が救われる箱庭02(王女と●●視点)
ようやくシィル様たちが出てきます。
「失礼します、お兄様。お呼びと言うことですが」
「すまないな、わざわざ呼び出して」
「・・・すみません、お話中でしたか」
お兄様に呼ばれて執務室を訪ねると、そこには枢機卿がいらっしゃいました。
「いや、おまえを待っていたのだ」
そう言うとお兄様は扉の鍵をかけて、防諜用の魔道具を起動されました。
「・・・枢機卿がいらっしゃると言うことはセシルたちになにか?」
「話が早くて助かる」
お兄様はジーク殿から報告を受けた内容を話し出しました。
「聖女のご両親たちにそんなことが・・・」
「国王より巡礼の邪魔をしてはならないと勅命が下っているというのにやってくれたよ」
勇者と聖女が巡礼に集中できるように、直接間接を問わず邪魔をすることを禁ずると通知が出されているにもかかわらずそれを破るものが出ていたなんて。
「手を出したのどこのどなたなのですか?」
「それについては私が報告しよう」
お兄様のお話を聞いていた枢機卿が話を引き継いだ。
お兄様にジークから連絡があったころ、神殿内でとある貴族に脅された神官が聖女の両親たちと接触したことが発覚した。
脅されたとはいえ、聖女の両親たちを脅すことになってしまったことを悔やみ、どうしようかと悩んでいたところを神殿の視察に来ていた枢機卿の目にとまり、事態が動いた。
事情を聞いた枢機卿は懺悔した神官とその家族の保護を約束すると、彼を脅したものについて調べるために情報を収集して、ここにやってきたとのことでした。
「手を出したのは辺境伯の三男坊だ」
「・・・たしか、王城で聖女のお披露目をしたときに言い寄っていた人ですわね」
「その通りだ。聖女に求婚していたが婚約者がいると言って断ったが食い下がっていたのを君が追い払った彼だ」
セシルには幼馴染みの婚約者がいるため求婚の申し出を断ったのだが、平民が貴族の求婚を断るとは何事かとお披露目で大騒ぎをしたため、つまみ出されたのだ。
以前からいい噂は聞かない人物だったが、あそこまで馬鹿だとは思わなかったものです。
「勅命が出た意味をわかっていないのかしら」
過去にも平民出身の勇者や聖女がいたが、それを認められなかった貴族は彼らの気持ちを無視して振り回した結果、巡礼がうまくいかず国中に被害が出ることになった。
王族も貴族も元を正せば平民であり、国作りのため、そして国が出来てからは国のために尽くした功績からその地位を与えられただけに過ぎない。
それを忘れて神様にでもなったつもりなのかしら?
「まぁ、こういうことが起こらないように監視役などを置いておいたわけだが、神殿を巻き込んでくるとは思わなかった」
創造神に仕える神官が巡礼の邪魔になるようなことをするとは私も考えてませんでした。
「それに関してはもうしわけない。今のところ、他に問題があるものはいないが、巡礼が終わるまでは引き締めを強化するよう指示を出した」
「そちらは枢機卿におまかせする。こちらは国王に伝えた後、辺境伯と三男を呼び出すことになるだろう。聖女の家族たちにはおまえが話にいってくれるか?」
「それはかまわないですけれど、シルビアの方が大丈夫なのですか?」
「彼女の父親は男爵だがその寄親は公爵、しかも信頼が厚い。だから手を出せなかったようだ。すでに、公爵に使いは出したのでそっちはすぐに対応されるだろう」
すでに手を打っているので問題ない様子に安心しました。
「それでは、急ぎ準備に入ります」
さぁ、聖女のために働きますか。
「どうやら、大丈夫そうだ」
箱庭の様子を見ていたシィル様が安心したようにつぶやく。
「それはよかったです」
はじまりは神官の懺悔がきっかけでした。
家族を守るためとは言え、聖女を脅してしまったことを悔やむものでした。
調べてみれば、創造神を進行する宗教の聖地巡礼に従事する聖女の両親たちが心ない貴族の暴力にさらされていることがわかりました。
直接干渉することは出来ないため、神託という形で危機に気づくように誘導してみたのですがうまくいったようです。
「ですがよかったのですか? 個人的なことに関しては、あまり干渉してはいけないのでしょう?」
「その通りなのだけれど、一応今回は僕たちが選んだ勇者と聖女に関することだからね。真面目に頑張っているのに不幸になるとかかわいそうすぎるよ。まぁ、お役目を終えたときに与える加護のおまけみたいなものさ」
「頑張ったのに報われなかったら私たちの加護は疑われますものね」
「そういうことだよ。まぁ、この辺境伯の三男にはしっかり罰を受けてもらおうか」
こうして、神官の懺悔から始まった騒動は、三男が親に勘当されたことで収束に向かいました。
(設定)
セシルと王女様はお友達同士です。
貴族と違って平民であるセシルは王女としてではなく、友達として接してくれ、しかもその行動に下心のようなものがないためかなり親しくなっています。
最近、主人公が振られてから始まる話が増えている気がします。
しかも、振った理由が勘違いやすれ違いまたは周りがくず過ぎてはめられた結果だめになる話が多く、個人的には読んでいてツライ話が多くてぐんにょりです。
くずなヒロインが主人公を振った結果勝手にざまぁな展開になるのは気にならないのですが、いい子が不幸になっていく話を見ると疲れているときは精神的にきついです。
見なければいいという意見もありますが、そういう話に限っておもしろい展開だったりするので困ります。
個人的には現実がつらいので幸せな話を読んで癒やされたいのです。
なので、ちょっとうつな展開が多いので救われる話を作って見ました。
今度はもっといちゃラブした話を書きたいですね。