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新米創造神の箱庭創世記  作者: 月城みなも
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交わり重なる箱庭

「ジャンヌ様。少しよろしいでしょうか?」

「シェラザード? 少し待ってちょうだい」

 いつものように箱庭の管理をしていると、見習いのシェラザードがいつもとは違う雰囲気で話しかけてきた。

 緊急というわけではなさそうなので、私は目の前の箱庭の調整を先に進めることにします。

「これでよし。なにかあったの、シェラザード」

「あの、この箱庭群を見てほしいのですが」

 そういうと彼女は両手を差し出してきた。

 そこには二つの箱庭が惹かれ合うように並んだ箱庭群があった。

 見たところ、特に壊れかけているような兆候は見られない。

 中がどうにかなっているかと少し覗いてみるが、特に荒れている様子もない。

「見たところ、特に変なところは見られないようだけどこの箱庭群がどうかしたの?」

 箱庭群の様子を見ながら彼女の言葉を待ちますが、なかなか言葉が返ってきません。

「えぇっと、なんと言っていいのかわからないのですが」

 そんな前置きしてからシェラザードは話し始めました。

 彼女が言うには、この箱庭群の箱庭が最近見たことのない挙動をすることがあるというのです。

 箱庭と箱庭の間に光の筋のようなものが現れ、お互いを引っ張り合っているように見えるそうです。

 そして、その光の筋は数を増やしており、箱庭間の距離が目に見えて近づいているそうです。

「このままだと、箱庭同士がぶつかってしまうと思うのですが、問題があるのかないのかがわからなくて」

「なるほど」

 見たことがない現象が発生しているから対応に困ったということかしら?

「大丈夫よ。箱庭が壊れることはないから安心しなさい。ただ、箱庭内が混乱する可能性はあるからしばらく監視する必要はあるけれど」

「混乱、ですか?」

「二つの箱庭が交わり重なることで一つの箱庭になろうとしているの」

「えぇ!?」

「箱庭群ではたまにあることなの。といっても、まだ一つになるかはわからないわ。あくまでその兆候があるってだけだから」

 複数の箱庭が一つになるには、いくつかの段階がある。

 見たところこれらの箱庭はお互いに引き合ってはいるものの境界が接触しているわけではない。

「影響が出始めるのは箱庭の境界が接し始めてからだから準監視リストに入れて、観察を続けてください。境界が接触し始めたら要監視リストに入れて常時観察に移行、状況次第では干渉するので連絡をあげるようにしてください」

 箱庭の融合が始まっても、そのまま融合するとはかぎりません。

 融合しそうになっても、途中でまた分離することも普通にあります。

 これらの箱庭は確かに融合しようとしていますが、まだ互いの境界が触れる前なのであくまで兆しがあるといったところです。

「干渉・・・ですか?」

「えぇ。箱庭が一つにならなくても、箱庭の境界が接するとお互いの箱庭の境界が曖昧になって、お互いの箱庭を意図せず行き来してしまうと言った現象が発生するの。それ以外にも様々な現象が発生するから箱庭の中は不安定な状態になるわ」

 それだけでも十分混乱が発生してしまうが、実際に一つになれば箱庭にすむ子供同士の問題に発展します。

 融合する箱庭の技術や文化の水準に差があれば、水準の低い方が淘汰されるといったこともありえます。

 無論、手を取りうまくやることもあるでしょうが、こればかりは実際に融合するまでわかりません。

「成長を促すという意味ではよい変化と言えますが、同時に劇薬と同じなので慎重な対応が必要になります。なので、監視を怠らないでください」

「なるほど。では、箱庭が接触を始めるまでは箱庭内の情報を集めて、実際に接触が始まった時の対応について検討します」

「えぇ、その箱庭については、あなたに対応を任せてあるから好きにしていいわ。ただし、困ったりしたときは遠慮なく聞いてちょうだい。学ぶために任せているのだから、変に気を遣わないように」

「承知しています」

 この子は箱庭にいた頃もわからないことは仲間たちに聞いてうまく回していた子だから言わなくてもわかっているだろう。

 見習いたちの中では一番優秀な分、手間がかからないので助かってはいる。

 これで失敗したときのネガティブ差がなければすぐにでも眷属神になれるのだけれども。

「さて、他に質問はありますか? なければちょうどお茶の時間です。シィル様にお茶を持って行くのでいっしょに休憩しましょう」

「よろしいのですか? もちろん、ご一緒させていただきます」

 シィル様とのお茶会と聞いてシェラザードはうれしそうに答える。

 この子の素直さがうらやましいといつも思う。


 これらの箱庭が一つになったかどうかはまた別のお話。

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