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新米創造神の箱庭創世記  作者: 月城みなも
11/54

崩壊する箱庭

ちょっと長くなりました。

いつもと違って箱庭の子供たちの会話があります。

「これは・・・ちょっとまずいかも」

 とある箱庭を前にシィル様が真剣な顔をしてみております。

 その箱庭は少し変わった形をしております。

 普通、箱庭は一つの世界で構成されていますが、その箱庭は複数の箱庭が惹かれ合うように集まって出来ています。

 箱庭群と我々は呼んでいますが、その名の通り複数の箱庭が群をなして一つの箱庭を形成しています。

 構造上、一つ一つの箱庭は従来の箱庭よりは小さいのですが、箱庭に生きる子供たちには認識できないので問題はありません。

 この箱庭の最大の特徴は、群の中にある箱庭であれば行き来が可能であるという特性があります。

 もっとも、箱庭の中の子供たちにそれだけの文明と技術があればと言う条件はありますが。

「どうかされたのですか?」

「うん、どうもこの箱庭群の箱庭の一つが崩壊しそうなんだ」

「崩壊? 一大事じゃないですか!」

 箱庭の崩壊。

 それは、その世界が完全になくなるということです。

 箱庭はめったなことでは崩壊しません。

 しかし、箱庭内の技術水準が一定を超えると箱庭そのものを崩壊させることが可能になります。

 普通は自分たちの世界が崩壊させるようなことを進んですることはないのですが、まれに実験の失敗や戦争などにより崩壊を誘発してしまうことがあります。

 また、箱庭群のように複数の箱庭から構成される場合、特定の箱庭を破壊しようとすることもありますが、その場合箱庭群自体が不安定になり連鎖的に壊れあることもあるので、これも普通は行われません。

「原因はなんですか?」

「直接の原因は今やっている実験の暴走が原因かな。このままだと間違いなく暴走して崩壊する」

「実験をしているものたちは気づいてないのですか?」

「現場の研究者たちでまともだった人間は排除されてようだ。上層部の無理な要求に対して、説得を試みていたようだけれどそれを疎んじてに現場から遠ざけたみたい。だから今どういう状況なのかまともにわかっていないようだ。上層部も彼らの意見を無視している。利益優先で進めているようだね」

 エネルギー開発のために大型炉を研究していた企業の上層部が研究者たちの意見を無視して作業を進めてしまっているのが原因らしい。

 当初研究に携わっていたものたちは危険を理解していたため安全装置や暴走時の対策などをいろいろと用意していたようだが、利益優先の上層部は勝手な判断でそれらを削ってしまっているらしい。

 専門家が危険だと言った内容を知識もない人間が勝手な判断で進めているのだから安全など皆無といえるでしょう。

「どうしますか? その様子だともう時間がないのですよね?」

「止められる可能性は極めて厳しいだろうね。あまり干渉はしたくないけれど、崩壊されても困るんだよね」

 基本的に世界がどうなろうと我々は基本干渉することはしません。

 ただし、それは箱庭内で収まっている場合に限ります。

 今回のように箱庭そのものが崩壊したり、他の箱庭に影響があるような場合は干渉して対応をします。

「では、神託を出した上で被害が少なくなるようにするしかないのでは?」

「・・・それが一番か。となると、反対していた現場の研究者たちをなんとかしないと。このままだと巻き込まれてしまうだろうし、助かったとしても責任を押しつけられてしまう」

 現場の研究者たちは現在大型炉に近づけず、上層部からの報告しか受けていない。

 正確な情報がないこの状況では危険だと思っていても対応はできないだろう。

「幸いこの箱庭は僕を祭る宗教が大きな勢力を持っているから神官経由で状況を神託として伝えた上で、まず研究者たちとその家族を保護。ついでに国家機関に働きかけて企業を調査させる。そうすれば圧力がかかるので上層部がまともなら実験を控えるだろうから時間が稼げるし、まともでなかったとしても暴走の前に事情聴取を理由に研究者たちと接触して保護することは出来るだろう」

「ついでに証拠になりそうなものもお土産につけましょうか」

「そうだね。少し干渉しすぎだと思わないでもないけれど、資料があれば研究者たちも納得しやすいだろう」

「では、そのように手配します」


「主任、ちょっと相談が」

 変な夢を見た日、出社した私に部下は真剣な顔をしてそんことを言ってきた。

 その後ろには他の部下たちもそろっている。

「どうした?」

「その、今日出社したらこんなものが届いていまして」

 そう言って、部下は大きめの封筒を差し出してきた。

 郵便物のようだが、宛名もなにもない。

 うちの部署に送られてきたもののようだが一体何だろうか。

「なっ!?」

 中を見た私は驚きのあまり言葉を失った。

 そこには私たちがつい先日まで手がけていた大型炉の資料が入っていた。

 しかし、問題なのはそこではない。

 その資料には、私たちが暴走したときに備えて設計した安全装置の類いが外され、代わりに出力をギリギリまで高める装置がつけられた危険極まりない状態であることが記されていた。

「この資料について、誰か知っているものはいないか?」

 部下たちに目を向けるが誰もが横に頭を振る。

 当然と言えば当然かもしれない。

 ここにいる部下たちはみんな上層部に嫌われてここに送られてきたものたちだ。

 大型炉の建造に当たり、利益重視で安全を無視する上層部を説得しようとして疎まれ、私共々現場から遠ざけられたものがこんな危険なものを設計するわけがない。

「どうしますか?確か、再来週には稼働実験をする予定になっています。この資料本当だったら・・・」

「上層部が知った上でやってるのであればなにを言っても聞かないだろう。それどころか、失敗の責任を私に押しつけるつもりだろう」

「それは・・・」

 名ばかりではあるが今でも現場の責任者は私になっている。

 なにかあったときの責任を押しつけるためだろう。

「みんな、会議室の掃除してくれ。終わったら緊急会議だ」


「掃除ご苦労だった。念のため、防虫剤もかけているな?」

「書類をかじられたら困りますからね」

 みんな笑いながら答えてくれる。

 会議室に仕掛けられた盗聴器の類いを掃除して、防諜対策を施したこの会議室は完全に密室になっている。

 左遷された私たちではあるが、上層部からは密告などされては困るため盗聴器などで監視されている。

 そのため、密談を部下たちとするときは監視の目を取り除くために掃除をしている。

 会議室に資料を集めているのはそのカモフラージュだ。

 また、機密保持を理由に会議室などのセキュリティーも強化してある。

「この資料についてだが、裏付けるような話に心当たりはないか?」

 私の言葉に部下たちは資料を見ながら考え込む。

 現場に近づけない私たちに直接確認することは出来ない。

 となると、別部署との会話などから推測するしかない。

「そういえば、別部署から出力に関する問い合わせが一度ありましたね。出力が強すぎるんじゃないかって」

「資材ののほうから搬入する物資について問い合わせもあったなぁ」

「搬入した物資のリストはあるか?」

「それは管理してありますので、すぐに出せると思います。うぼ覚えですが、この部分に使う部品とかあったと思います」

 部下たちの記憶から関連しそうな情報をまとめていく。

「・・・この資料の信憑性が増してきたな」

「どうしますか? こんなもの動かして暴走したらこの辺り一帯が消滅しかねません」

 暴走したときの被害が頭をよぎってたのだろう。

 部下たちは皆青い顔をしている。

 どうする?

 この資料を持って上層部に文句を言ってももみ消されるのが目に見えている。

 かといって手をこまねいていて暴走してしまったら被害は恐ろしいことになる。

「このままじゃ、夢みたいに家族が・・・」

 誰もが最悪の予想に沈黙する中、部下の一人がそんなことをつぶやく。

「夢?」

「その・・・昨晩変な夢を見たんです」

 つぶやいた部下は唐突にそんなことを言い出した。

 普段ならば寝ぼけているのかと叱るところではあるが、私自身昨晩最悪な夢を見ていた。

 それも、今話していたことをそのままなぞるような夢だ。

 なにより、なにか予感なようなものがあった。

 部下が話す内容に耳を傾ける。

 話が進みにつれて、他のものたちの様子が変わっていく。

「なんだよそれ、俺が見た夢と同じじゃないか」

 部下たちは口々に自分も見たと口にする。

 私も含め、この場にいるものは皆同じ夢を見ていたらしい。

 送られてきた資料といい、夢といい偶然なのだろうか。

「主任、これは虫の知らせというものかもしれません。資料について、調べた方がいいのではないでしょうか?」

 副主任はそう言ってこっちを見てくる。

 ただの偶然と言うにはできすぎている。

 調べて上層部を問い詰めるくらいはした方がいいかもしれない。

 だが、上層部が聞き入れる可能性は極めて低いだろう。

 ならばせめて家族を守らなければいけない。

 ただでさえ、今の事業を手がけてから苦労をかけている。

 幸い、左遷されたとはいえ報酬だけは十分に支払われていたので経済的にも困ることはないだろう。

 腹をくくり、部下たちに家族をうまく避難させるようにと指示を出しているところで来客を知らせる連絡が入る。

 その来客が事態を好転させるきっかけになることを、そのときの私は予測することが出来なかった。

 

「・・・どうやら、間に合ったようですね」

「本当にぎりぎりだったけどね」

 シィル様と二人で箱庭を監視していましたが、大型炉の稼働実験がまさに始まらんとするタイミングで止めることが出来ました。

 研究者たちに未来予測の夢を見せて資料を流したうえで、神官たちに神託を出して調査機関を動かすことに成功しました。

 此方が思っている以上に神官たちの力が強かったことと、我々が提供した資料が役に立ったこと、なにより研究者たちが調査に協力したため情報の精査が捗り、強制捜査の許可がすぐおりるなどいい方向に話が進みました。

「まさかスケープゴートにしようとしていた研究者たちに責任をなすりつけることが出来ないとは上層部も思わなかったのでしょうね」

 調査機関が研究者たちに接触したあと、研究者たちは別部署からの問い合わせなどについて上層部に問い合わせたり、稼働実験を行うに当たり安全装置を確認をしたいと申請をしたりするなど上層部が自分たちを現場に近づけさせないことや虚偽の報告を出していることの証拠をそろえていた。

 これらの証拠により研究者たちが実験に関与していないことが証明されたため、筋書き通りに話が進まなかった上層部の人間は窮地に追い込まれてしまった。

「自業自得なのだから知ったことではないさ。そもそも、調査機関が訪ねてきてる報告は受けていただろうに警戒しなかった方が悪い」

 稼働実験までそれほど期間がなかったからだろう。

 自分たちのところまで調査が及ぶとは考えていなかったのか、たいした妨害をすることもなかった。

「ま、こちらとしては箱庭が崩壊しなかったのだからそれで十分だ」

「それもそうですね」

思った以上に話が長くなってしまいました。

でも、箱庭の中の人たちもお話に参加するとまた世界が広がる感じがします。

あまり話を大きくするとまた投げ出すのでほどほどの量に収まるようにしたいと思います。

少しずつ文章量を増やしていければいいと思います。

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