表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
経緯通(いきさつストリート)  作者: さかがみ そぼろ
3/25

いきさつストリート#3


◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇


 岩野(いわの)「人は何故、働かなければならないのだろうな?働かずに生きていければそれに越した事はないだろうに。」

 

 日叡(にちえい)「おやおや。また怠け癖が出たんですか?でもまあ、そう疑問を持つ事もあながち間違いとも言えないですけどね。」

 

 岩野「住職。住職は何故仏門の道へ?」

 

 日叡「私ですか?私の場合は先祖代々仏教徒でしてね。村の年寄りが年老いて亡くなる度に供養を求められ、いわば自然にそういった役目を仰せつかった、と聞いております。あまり疑う事もなく私もその役目を先人から引き継ぎ担うのが自然な役割かと。」

 

 岩野「役目か。思えば色々な役目があるな。田畑を耕し、農作物を作る役目、人が住む家を建てる役目、病気や怪我をした者を治す役目、他の村や街での出来事を広める役目、船で海産物を捕ってくる役目、それらの総称を仕事として、全ての人がもしその役目とやらを放棄したら世はどうなるのか、故に疑問に思うのだよ。今、その役目に就いている者が、どうしてもその役目に固執せねばならぬのか、極論誰がその役目とやらを担っても構わないのではないか?そんな疑問が常に心の片隅に巣食っている。」


 日叡「何事にも始まりという物は存在します。世に八百万の生業があり、残念ながら必ずしも無くてはならないとは言えない職業とて無数に存在します。その中で私のように家系で引き継がれた生業という物もありまして、それには個別に振り分けられた名前という物があります。祖となる本家以外の方が、例えば岩野さん、あなたが私の寺院を引き継ぐ場合、もし私が存命ならば分家という名前をもらった形で新たに寺院を建立し同じ宗派を名乗る事とて可能です。ただ、どうしてもそれが必要か、と問われると、やはりそれには本家の判断を仰ぐ必要とてあるのです。」

 

 岩野「いやいや、何も坊さんになりたい、とはひと言も言ってはいないのだが、生きる上でどうしても全員が何かの役目を果たさねばならないのか、という疑問が常に付きまとう、そういった事を訊ねているのだ。」

 

 日叡「なるほど。ではこう考えてはいかがですかな?もし村に私のように亡くなった者を弔う存在が居なければ、村はどうなっていたか、を想像してみてはいかがか?」

 

 岩野「うむ。それは面白い思考実験でもあるな。もし村に住職が居なかったら………死んだ老人などは遺された家族単位で供養せねばなるまいな。独居老人ならば無縁仏になるだろうな。さて何処へ遺体を埋めようか?他の村人の迷惑にならぬよう、ひっそり離れた土地がいいな。」

 

 日叡「そう、そしてそれは岩野さんの家庭のみならず、他の村人達も同様に考える筈。」


 岩野「そして集合墓地のような場所が出来上がる。可能であれば毎日先祖の供養をしたい処だが、自分等にも他にやる仕事があり、やはり常に供養するのは難しいかも知れないな。」

 

 日叡「そう、そしてそれは他の村人達も同様に考える筈。」

 

 岩野「はっ?いつの間にか日叡さんのような住職が自分の代わりに供養を担っている!それも自分の祖先のみならず他の村人達の祖先の供養も!」

 

 日叡「お分かりになられましたか?必要に応じて生業とは自然に生み出されるモノなのですよ。自分のみならず誰かが必要である、と判断すればそれが仕事として成立する、世の中とはそんなモノなのですよ。ただし権力ある者がその生業は必要ない、認める訳にはいかない、と妨害すれば仕事としては成立しません。本来であれば仕事をするのに誰にも許可など求める必要などないのですが、そういった妨害をする者が居るお陰で成り立たない仕事とて世の中には無数にあるのです。」

 

 岩野「誰かが必要としている、だから他の誰かがその役目を担う、と仰る訳なのだな。言われてみれば確かに自分ひとりのチカラで全ての仕事はこなせない。故に他の誰かの手助けが必要となる。家を建てるにしても知識も材料もなくては無理だ。材料を作る役目、設計図を書く役目、実際に建設に携わる役目、どれひとつ欠けても家は建てられない、そういった事だな。需要があるから供給もまたあり、供給が断たれると何も消費出来ない。」


 日叡「そういう事になりますね。それにしても便利な世の中になったモノですよね。蛇口をひねれば何時でも水が出る、スイッチをつければ陽が沈んだ夜間でも明かりの下で本も読める。車さえあれば遠く離れた店で買い物だって可能です。」

 

 岩野「そう、それだよ。俺達は便利な世の中にするために仕事してるんじゃないのか?今までが不便極まりない生活を強いられてきた、水道がなければ遠く離れた川までバケツ持って何往復もしなきゃならない、そんな原始的な生活からの脱却、その為に仕事してるんじゃないのか?」

 

 日叡「いい事おっしゃいますね。それは的を得ていると思います。のちのち楽をするために苦労をする。人が一生懸命働く根底にある行動原理は正にそこに集約されているようにも思われますね。以前は仕事場へ行くのに何時間も歩いて行っていた。今は車で数10分で行く事も出来る。今はそのいづれも選ぶ事が出来る。利便性の追求、作業効率の短縮化、平等に分け与える為の大量生産、仕事の本来の目的、本質とはそういった事なのでしょうかね。」


 岩野「う~~~む、それで世の中がこの上なく便利になった、として、まだ働かねばならないのか?といった疑問もあるのだよ。後で楽したいから今苦労する………う~~~む、先人達の苦労が実り穂を結び、随分と便利な世の中になった。世の中を便利にした世代の人々は老衰でこの世を去る。遺された人々は更に後世の子孫に利便性を供給するために苦労する………んん?これ以上便利になるのか?もう充分便利な世の中にしたのではないのか?まだ苦労しなきゃならないのか?」

 

 日叡「やれやれ、また始まりましたか。しかし今の世の中、何ら苦労を強制する必要などありますまい。もし無理にでも『働け!働け!俺の為に働け!』などと声高に急き立てる者がいたとしたら、それは他人を奴隷としか思っていない極悪人と罵られても仕方ありますまい。」

 

 岩野「俺は今、与作爺さんの処で世話になっているのだが、仕事量は別段減ってなどおらぬのにもらえる賃金が減ってきているのだ。お陰で生活が一向に楽にはならない。必要とは思っていても買えずにやむ無く我慢している物とてあるのだ。利便性がUPしてても全然その恩恵にあやかれずにいる。」


 日叡「税金等も年々上昇の一途をたどっていますからね。先程も申し上げたでしょう?本来であれば皆が必要である、と判断すればその仕事は成立しますが、権力ある者が妨害すれば成り立たない、と。失なってみて始めてその重要性に気づく存在とて無数にあるのですよ。実は私の寺院もあちこち傷んできておりまして本来ならば大々的な修繕が必要なのですが、檀家さんもこの不景気のアオリで御布施も日々減って修繕費用を工面するまでには至らずほとんど手付かずになっているのですよ。お互い苦労は絶えないですね。」

 

 岩野「そうなるといったい誰の為の世の中なんだろうな。誰の為の利便性の追求なのか。少なくとも自分の為、なんて事は詭弁でしかないような気がするのだよ。俺達は働いているのか?それとも働かされているのか?少なくとも、俺個人は十分以上に働いてきた、と思っているがな。まだ足りない、とでも誰かが抜かすとしたら、そいつこそが『働け!働け!俺の為に働け!』と無用にけしかける極悪人なんじゃないのか?」

 

 日叡「さあ、どうなのでしょうね。皆さんはあなたの事を屁理屈ばかりこねてロクに働かない怠け者だとは言っていても、私はあなたが口先だけではなく実際に額に汗して懸命に働いているのを見てきて知っていますからね。見ている人は見ているものなのですよ。仕事をすれば結果が残る。まあ、それでいいじゃないですか。」


 岩野「しかし、納得の行く回答などいくら考えても得られまい。生真面目に働いても貧困にあえいでいる者も居れば、然程世の為になっているとも思えない者が優雅な生活をしたりしている。全くどうかしているよ今の世の中は。仕事に対しての金額設定に誤りがあるのではないのか?だいたい権力を持つ者とは何なのだ?いったい何者なのだそいつは?」

 

 日叡「また始まりましたか、困りましたねあなたも。もし誰も彼もが好き勝手に生きて御覧なさい。例えば村人全員が与作さんのように林業を営んでいたり家具職人や建具製作に従事していたら、誰が田畑を耕すのか、誰が漁業を営むのか、病気や怪我をしたら誰が治療してくれるのか。」

 

 岩野「それもそうだな。しかし仕事に対しての報酬は別だ。もし俺が医者になろう、と決めて猛勉強して知識や治療の技術も身につけた。しかし正当な学校を卒業していない、学費を工面出来ない、医師免許を持っていないブラックジャックのような立場であれば治療に応じた報酬を請求できない、というのはおかしい話ではないか?それどころか無資格で治療を施した、と難癖をつけられて身柄を拘束されたりもする。早い話がいくら能力を身につけても本来であればあってもなくてもどちらでも構わない紙切れ1枚や免許証を持ち合わせていない、という理由だけで違法行為と見なすのは狂気の沙汰ではないのか?」


 日叡「そう、それが法律でありルールなのですよ。能力の有無ではなく家柄や資産で決められる生業というのも確かに存在し、それが権力を持つ者なのですよ。彼等は自分の資産に固執しているので、誰も彼もが同じ立場になれぬように法律を設定し、門戸を狭めてふるいにかけているのですよ。しかしいくら資産を持っていても能力に欠ければ就けない職業とてありますがね。」

 

 岩野「やはり。金持ちの為の利便性か。それはなんとかせねばなるまいな。しかしだいたいここまで便利な世の中になったのであればカネなどこの世からなくしてしまえばいいのではないか?他人を全面的に無条件で信用できれば不必要に他人の分を奪い盗ってまで物資を蓄えたりはしないだろう?他人への不信感や支配欲から金持ちは富を蓄えるのではないか?」

 

 日叡「人の欲とは尽きないモノでしてね。隣の芝生は青く見える、とは良く言ったもので、他人と比較して不公平だ!と騒ぐ者があとを絶たなくなるのですよ。誰だって良い暮らしをしたい。しかしいくら働けど生活は楽にはならない。最初から出発点が違う。生まれてくる国や親はこどもは選べない。勉強したくとも労働時間が長すぎて家へ帰れば食事して寝るだけで精一杯。しかし逆にこうは考えられませんか?不満を持ちながらも、あなたも私も幸い大きな病気をする事もなく苦情や愚痴を言える程に元気に生きている。それだけで儲け物だと。そしてそれは不満があるから疑問もまた生じるのだと。」

 

 岩野「確かに!やはり住職、あなたに愚痴を聞いていただいてかなり気は楽にはなった。ただ、問題それ自体は全然解決してないけどな。」










◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇


 敢渡(かんと)「人は何故、生まれてくる時に両親の記憶を有して生まれては来ないのでしょうか?効率面で考察すると赤子の状態でこの世に生まれ、イチから覚え直さなければ何も分からない状態で覚え直すには実に手間がかかるのではないでしょうか?もし生まれた時から両親や祖先の記憶を有していさえすれば他に知らない情報を新たに付け足す事に専念出来る上に祖先からの物事の道理の記憶も持っている為に失敗は少なく、より精神的に発達した生物になれるのでは?との疑念がどうしても拭えません。世界には様々な言語や文化が存在し、それをイチから学び直さねばならない状態では時間的制約の面から考察しても非効率な感は否めない気もするのですが。」

 

 銅印(どういん)「うむ。言いたい事は痛い程によく分かる。要は言語情報や視覚感覚的な情報が両親の遺伝子を通じて何故DNAに刻まれないのか、との問い掛けだな?これも未解明な謎のひとつでもあり、科学技術が発達した現在でも宗教的側面も併せ持つ疑問のひとつなのだ。スピリチュアルを選択した者の見解では現世とはいわば修行の場のひとつと数えられ、前世での記憶は全て奪われてこの世に誕生する、という風に言われている。しかしその考えには少々疑問が残るのだ。君が先程言われた通り、赤子が両親の記憶や祖先の記憶を有して生まれていさえすれば、過去の経験則から失敗を避ける選択肢を導き出す事が可能であるからだ。本当にこの世界が単に試しの場の役割を有しているのであれば、わざわざ記憶を消去してわざと過ちを犯させる真似を創造主と呼ばれし存在が個々に課す、とも思い難い。故にその試練といった考えには常に疑問符がつきまとうのだ。」


 敢渡「その通りですよね。赤子の時から記憶を有し道徳心に富んでいれば世は今とは比較にならない程に平和を保てる筈ですよね?宗教的考察ならば主がわざと世の中を混沌に陥るべく仕向けるように記憶をデリートするとは考えづらいですからね。」

 

 銅印「頼みの綱である創造主も疑惑の対象から外れる、となると別に理由があるのではないのか?と考えるのが定石でもある。第イチ宗教とは人の預かり知らぬ事柄は全て神の仕業として、考える事を放棄し委ねる他力本願な側面を持つ御都合主義者の集団でもあるのだ。各々が考える事をやめ、自己の判断を全て預言者に委ね、戦争などという愚行に向かわせたのも各集団を形成している者達の思想の相違に拠るモノだ。何かをしくじった際、その原因を他になすりつけて責任を逃れようと画策するのが人類の本質と呼べなくもないのだ。その最も都合が良い存在というのが神であり創造主に他ならない。覆水不返の原理から、復元する技術を有しない限り責任など誰にもとりようがないのだがな。人とは愚かな生き物で何時の時代もそれを認めようともせず学ぼうともしない。実に嘆かわしい事だ。」

 

 敢渡「もし私にもこどもが生まれたとして、そのこどもは何も知らない状態で、私が経験した記憶を全く知らずに生まれてくる訳ですよね?そこがどうしても解せないのです。もしこどもが私と同等の記憶を手中に収める為には私が辿ってきた経験を再びトレースし直さなければならない、という人間とは極めて非効率な生物である事にふと気づいたのです。何故子孫を残す度にせっかく蓄えた記憶をいちいち抹消し、まっさらな状態から再度他のこどもと知識の習得を競わせるような真似をするのか、それがもし主の意思であるとするならばと、それが疑問でならないのです。ただ、赤子の時点で自分と同じ知識を有していて、親である自分と同等に会話し、自力で何でもこなすその様子を想像すると、なんか嫌だな………という思いはあるのですが………」


 銅印「全く以てその疑問符は正確無比だ。しかしこうは考えられないだろうか?我々が言語を有し世界を知覚するに至ったのはまだ歴史が浅く、遺伝子に情報が刻まれるには実はナンセンスで動機が脆弱である、もしくは言語情報によって世界を知覚するという手段を選択した事、それ自体が誤りであり、いわば逆に真理から遠ざける目眩ましの役割でしかない、と。」

 

 敢渡「!?で、では我々人間のように音声や文字といったシンボライズを駆使しての異なる個体同士の意志の伝達手段は誤った選択肢だとして、他にどのような思考の以心伝心が可能だと?まさかテレパシーのような情報伝達が選択肢としては適切だとでも?」

 

 銅印「それも未解明な謎のひとつなのだよ。君も知っての通り地球誕生から現在に至るまでの歴史は想像以上に古い。その間に我々のような知的生物が一切誕生していない、と考えるほうがどちらかと言えば不自然なのだ。そしてもしも過去、数10万年や数千万年以上に遡る遥か悠久の古代地球に生きた知的生物が我々人間のように言語を駆使しての伝達手段を用いていたのか?と問われればそれも返答のしようがないのだ。何しろタイムマシンでも存在しない限り過去の実況見聞は不可能であり、遺跡や発掘された化石からも当時使用されていたとおぼしき文字情報などは何も記されていないとすると………、我々人間以外の他の動物のような伝達手段では文明を築く以前の問題でもあり、てんで話にもならない。となると何か別の手段を用いて意志の疎通をはかっていたとしか思えないのだ。」


 敢渡「そう言われても言語に慣れ親しんだ者には想像がつきかねますね。テレパシー自体が魔法や超能力の分野になりますからね。イルカや鯨、コウモリといった超音波を使ったエコーロケーションですら人間である私達にはイメージが困難なのですから。」

 

 銅印「もうひとつの仮説が我々が言語を使用するようになってからの歴史の浅さだ。もしこれが更に数100万年や数千万年といった長期間に渡る継続期間が許されるのであれば、中には両親の記憶を有した個体が優性遺伝として突然変異的に発生しないとも限らない、という仮説だ。記憶や魂を共有する個体の子孫が繁栄すれば生物の種としてのエゴなどの自我は一切消え去る。全体を生かす為に個は何の躊躇(ためら)いもなく犠牲になる事すら厭わなくなる。自分と他人という区分が消滅する為だ。何故ならばひとつの個体の記憶や意思を子孫は全て共有しているからに他ならない。記憶や感受性を随時共有しているとなれば、他人というのは共通の1個体が分離しただけの複製に過ぎず、元をただせば何億人何兆人に分離しようとひとりなのだ。」

 

 敢渡「言われてみると我々人間には何らかのリミッターのような措置が施されているような気もしますね。情報の共有どころかすぐ隣にいる他人の考えすら覗き見る事が出来ないように、やはり超能力といった未知の分野になってしまうのでしょうか?」


 銅印「何らかの理由があって、言語などの外的情報は子孫には伝達できないような処置がなされている、そうとも見てとれるな。自我を持つように仕向けられている、とも見てとれる。しかしどうやらそれも不明瞭だからといって神の仕業とするのは早計だと考えねばなるまい。それは医者が匙を投げた時点で患者の死が確定するようなモノだ。」

 

 敢渡「やはり過去の文明解読にその謎を解く鍵が隠されているのでしょうか?」

 

 銅印「君もオーパーツと呼ばれる存在を知っているだろう?放射性年代測定器から有り得ない程の過去に見つかった人工遺物の総称だ。高度な知性がなければ到底作れはしない物の存在が何を物語っているのか?我々に可能なのは数少ない手掛かりからおぼろげな推測を、正確に計算された論理に基づいて紡ぎ出す事くらいしか出来ない。」

 

 銅印「サイコメトリングという能力についても君は知っているだろう?例えば亡くなった人物の遺品に接触すると生前の持ち主の状況や心情を読み取れる特殊な能力の事だ。どのような物体であれ固有の記憶を有しており、過去の情景を光であれ音波であれ1度は反射していると考えられるならば、その痕跡を読み解く事とて可能なのではないか?そしてそれを実践している能力を持つ存在がいれば或いは数億年以前の地球の様子とて視れるのかも知れない。」


 敢渡「やはり超知覚力がなければ解けない謎なのですか。私達に可能なのは数少ない手掛かりからおぼろげな推測を巡らす事のみ。その事が判明しただけでも多少の進歩なのですかね。」

 

 銅印「思いの他、断言できる事柄というのは少ないモノなのだよ。我々人間が祖先からの記憶を有していればどれほど真理に近づける事か。しかし決して弱音は吐くまい。個は全体の為に犠牲は厭わない。何故ならばルーツをたどればあらゆる生物はひとりなのだからな。個は全体にして、全体は個でもあるのだ。後の謎解きは、より優秀な個体に任せるとしようか。」

 

 敢渡「結局はお手上げという事ですね。」










◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ