いきさつストリート#2
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勇悟「お前、そんな具合い悪いんだったら病院行けば?あんなヤブ医者でも風邪薬くらいはまともな薬出してくれるだろう?」
岩野「心配など無用だ。多少の風邪くらいほうっておけばすぐに直るだろう。ゴホッ!ゲホッ!」
勇悟「風邪は万病の元、って諺すら知らないのかお前?あんまナメないほうがいいとオレは思うけどなあ。」
岩野「だいたい俺はゴホッ!医者なんてゴホッ!者は信用出来ぬのだ!第一患者が頼んでもいなグホッ!いのに薬出しておきますね、とは何事だ?誰が薬などよこせと言った?」
勇悟「馬っ鹿お前、そこは病院だってボランティアじゃないんだから診察料と薬代くらいはカネ払え、って事だろう?普通はそんなトコ疑問に思うヤツなんて居ないよ?お前くらいなモンだよ岩野。」
岩野「ゲボッ!勇悟、お前は見ず知らずの他人の家で出されたメシは毒ゴホッ!味もせずがっつくのか?同じよゲハッ!うに病院で出された薬だって何故そこまで信用出来る?万人に効ギョホッ!く薬なのかどうかも分からんではないか?ガヒョッ!ゴヘアッ!」
勇悟「それは全然同じじゃねえよ。だいたい病院だって信用問題ってのがあるだろ?その病院から出された薬飲んだら余計に症状が悪化した、って風評が出たらあっという間にその病院なんて廃業しちまうだろ?お前そういう考えは持てないのか?」
岩野「オレ以外の全員ガハッ!に効く薬だって、オレにとっては毒かも知れん。お前そういう考えは持てないのゴヘッ!か?」
勇悟「ひねくれ過ぎじゃねそれ?ま、お前の身体なんだからお前の好きにすりゃいいんだろうがな。ともかく早く直せよな。オレに風邪うつすんじゃねえぞ。」
岩野「まあな。それに他人グヒャッ!に風邪をうつすと早ゴホッ!く直る、というウワサだしな。ゲヘッ!グボハッ!」
勇悟「だからお前!なんで病院の薬は信用しねえのにそういう信憑性のない下らねえ迷信はしっかり信じてるんだよっ!?他人に風邪うつしたからって早く直る訳ねえだろ!迷惑なだけなんだよっ!!」
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日叡「不老不死、という言葉を聞いた事がありませんか?思えば私やあなたも年老いてしまった。最早いつ死んでも悔いのない人生を歩んできた自負はあるのですが、それでもあと数年、とは言わず1年でも寿命を延ばせればこれ幸い、と思う時がしばしばあるのです。そこで年老いたとは言え未だ御聡明な貴方に質問します。人とはいづれ不老不死などという幻想、願望を獲得できるようになる、と考えられますか?」
宗蔵「ワシもそろそろ何時お迎えが来てもおかしくない歳だからのう、それはあんたもお互い様かぁ。思えば若い頃は訳も分かんねえで必死で生きてきたよなぁ。んで何だってぇ?このまんま老化が止まって永遠の命だぁ?真っ平御免だなぁ。罰当たりな坊主の癖してまだ長生きしてぇだぁ?心残り有りまくりじゃねぇかぁ。」
日叡「いえいえ、心残りなどさほどないのですよ。ただ村に残された若い者にまだまだ色んな事を伝えておけば良かった、とは思いますけどね。自分の死の間際になってから、あ!あの事を伝えておくのを忘れていた!なんて事があったりすると何か申し訳ない気持ちになるのですよ。私も年のせいか物忘れがひどくなって何を伝えたいかも中々思い出せなくなってしまいましてね。何も私が懸念する事でもないのですけどね。」
宗蔵「そういうのは、確かにあるなぁ。でも寿命なんてものぁ自分で何時お迎えに来てください、なんて易々と決められるもんでもねぇだろう?だいたい和尚ってのぁ亡くなってこの世を去ってく人があの世で迷い子になんねぇように見送る役目じゃねぇかぁ。それが不老不死なんて誰も死ななくなったら商売上がったりなんじゃねぇのかぁ?」
日叡「そう、ですよね。人が亡くなるからこそ、私は必要とされ、糧を得ているのですよね。因果な商売ですとも。人が不老不死を獲得して誰も亡くなる事がなければ私もまたお役御免となる訳なんですよね。」
宗蔵「まぁそういうこったなぁ。しかし少しばかり寿命が延びたってどうにもなんねぇんじゃねぇかぁ?若い頃に戻れる、ちゅうならまだ面白れぇとは思うがのう。」
日叡「お互いもうこんなに年取っちゃいましたからねえ。だからこそ、思い残す事もさほど無いのですけどね。」
宗蔵「だいたい不老不死、ったってよぉ、自分が不老不死になった、てのをどうやって判断すりゃいいんだぁ?ワシ他の人よか多少長生きしてるなぁ、ぐらいにしか感じないんじゃないかぁ?自分が不老不死になったかどうかを調べるにゃ、いっぺん自分が死んでみる以外に分かりようがないんじゃないのかぁ?んでもし自分が死ねたら、それはやっぱり不老不死でもなんでもなく他の人よかホンのちょっと長生きしてた、ちゅうだけの話であって、どうやっても何やっても死ねない、となっても疑いは無くなんねぇんじゃねぇのぉ?自分が試してみたやり方じゃあ死ねないだけであって、何か別の思いもよらない手段をとれば自分はやっぱり死ねるんじゃないのぉ?ってな具合いでよぉ。」
日叡「面白い事おっしゃいますよね。やっぱり宗蔵さん、貴方に訊ねてみて良かった。そう、不死じゃなくてもいいのですよ。人より多少長生き出来る、それだけでも獲得できれば少しは救われるんじゃないでしょうかね?」
宗蔵「まぁ、逆に言えば、死ねなくなったら今度は今までとは逆に死ぬ方法を探すようになってくるんじゃねぇのぉ?人、ってのぁそういった生き物だろう?生まれてきたもんは死ぬ宿命にあるのがこの世の摂理ってもんだろう?それがホンのちょっと早いか遅いかの違い、たったそれだけの事なんだろうさぁ。」
日叡「そう、ですね。いくら平和な世の中になって技術が進歩しようとも運命とは避けられないのですよね。人は必ず死ぬ、それが早いか遅いかの違いだけなのですよね。」
宗蔵「まぁなぁ。でもワシだってこんだけ生きたって簡単にゃくたばりたかぁねぇやなぁ。ありゃりゃあ?気がついたら死んでたのかワシ!?てのが最も理想だぁな。それだけに下手に不老不死なんざ欲しくもなんともねぇやなぁ。」
日叡「ごもっとも。だからこそ、残り少ない日々を大事に生きるのが人としての役目なんでしょうね。村長も達者で何よりですとも。結局お互い長生きできればそれに越した事はないですね。」
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風子「シュレーディンガーの猫の話は御存知?箱の蓋を開けるまで猫の生死は分からない。しかし猫が箱に閉じ込められた時点で猫の死は確定している?」
偉影逸「有名な量子力学の不確定性原理の話だね。確率は1/2。猫が生きているのか死んでいるのかは箱の蓋を開けるまでは誰にも分からない。しかし蓋を開けずに閉じ込めた猫をいつまでも放置し続けると、待っているのは確実な衰弱死、そういう事を言いたいのかい?」
風子「フフフ。不確定性原理を題材としているのに、何故猫のような気まぐれな生き物を譬えに使おうと思ったのかしらね?この世に偶然なんてモノは存在しない?それともこの世が存在する事それ自体が偶然?」
偉影逸「幸運とは必然的に訪れるモノだよ。神に頼み込んで、ねだって受け取るモノじゃない。私と君が出逢ったのも偶然と見なすのか、それとも運命か。奇跡は諦めた者には決して訪れない。それがたとえみっともなくても諦めが悪い者にしか訪れてはくれないモノなのさ。」
風子「やっぱり。女性を口説き慣れているわね。いったい今までそうやって何人の女性を虜にしてきたのかしらね?」
偉影逸「私が他の女性と出逢ったのは偶然、君に出逢えたのは必然だとしたら?心の何処かで私を呼ぶ声が聞こえた気がした。他の女性からはその声は聞こえなかった。その声に導かれてその結果、今君の目の前に私がいるとしたら?」
風子「ウフフ。お上手ね。貴方の舌は何枚あるのかしら?1枚くらいなら引っこ抜いても宜しくて?」
偉影逸「特別だって事には変わりはないさ。何時だって私は自分の心に正直に生きてきた。もし聞こえた声に欺かれて目の前に君が居なかったとしても、私は決してそれを認めようとはしなかっただろうね。さっきも言っただろう?奇跡は諦めが悪い者にしか微笑まない、とね。」
風子「知ってる?女って待たせるのは当然と考えるけど待たされるのが他の何よりも嫌いなのよ。箱の中に閉じ込めたからって何時までも黙っておとなしくいいコで待っているとは限らないわ。マジシャンが魅せる安っぽい手品のように、箱の蓋を開けたら居なくなってるかも、なんて考えた事はなくて?不確定性原理とは良く言ったモノね。あらゆる可能性を考えとかなくちゃね。」
偉影逸「ははは。降参だ。待たせて悪かったよ。謝罪は何をお望みで?」
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度数都営府「作業手順をしばしば忘れる事があるのです。たとえばベーコンエッグを作る場合、油を引いてベーコンを焼き、卵を割って器に入れておくまでは良いのですが肝心の卵を焼くのを忘れてしまう、そういった事です。この前などは洗剤を入れ忘れて水洗いと柔軟剤のみで洗濯してしまいました。それが迷惑がかからない場合ならば仕方ないで済むのでしょうが、その内取り返しのつかない事態を招く事になるのでは?と考えると居ても立ってもいられないのです!嗚呼!神よ!」
風呂板「ああそれ、典型的な痴ほう症の症状ですよ。ってそんな年齢でもないでしょうあなた?単にそそっかしいだけなんじゃないんですか?とりあえず助言できるとしたらあんまり慌てない事ですよ。」
度数都営府「確かに慌てる必要などないのですが、いろいろな作業に追われて早く終わらせなければ次の作業が間に合わない、という強迫観念に苛まれているようなのですYO!神よ!」
風呂板「引き受けてる仕事量が多すぎるだけなんじゃないですか?家事なんかは家族に任せてしまえばいいのに。」
度数都営府「実はお恥ずかしい事に、妻には逃げられてしまいました!おそらく自分のこの性格が原因だと思われます!LOST!神よ!」
風呂板「はあ、とりあえず精神安定剤でも出しておきますか?性格ばっかりはいくら私でも面倒見きれませんよ。」
度数都営府「私が本当に出して欲しいのは精神安定剤などではなく、新しい嫁さんなのです!HEY!COME ON!よ!」
風呂板「やれやれ。あなたが通ったほうがいいのは病院じゃなくて結婚相談所なんじゃないんですか?」
度数都営府「冗談はここら辺にしておきます!実はここへ来る前、年老いた女性に道を訪ねられ、曲がり角をひとつ言い忘れて教えてしまったのです!親切で教えたつもりが逆に間違えた道順を教えてしまい、悪い事をしてしまったと猛反省しているのです!他にも店で買い物したまではいいのですが、レジでおかねを払うのをド忘れしていたのを家に品物を持ち帰ってから気づいた事も何度かあるのです!GET!神よ!」
風呂板「ああ悪い、さっきは言い間違えたよ。あなたが行ったほうが良いのは結婚相談所じゃなくて真っ先に警察だなそりゃ。おかね払わずに店出て良く捕まらなかったね。世間ではそういった行為の事を万引きと言って歴とした軽犯罪だからねそれ。作業手順をひとつ忘れた、なんて言い訳は通用しないからね。思い出したんだったら後日ちゃんと商品の代金を支払っていると信じたいけどね。全然悪気も悪意も無さそうなのが余計にタチ悪いよねそれ。天然って怖いよね。」
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弟刈兎「僧侶である貴方の立場としては、死刑制度というのは本当に世の中には必要なのでしょうか?過失を犯したとは言え、全く無関係な第三者が法律の名の下に人の命を奪う、それは果たして人の道に背いた行ないではないでしょうか?」
日叡「そういうのは法律決めてる政治家にでも言って下さいよ。いちお坊さんに過ぎない私が死刑反対を声高に叫んだところで世の中なんかどうにもならないでしょ?」
弟刈兎「しかし人の道を説く僧侶である貴方の意見を是非聞きたいのですよ。過去には魔女狩りなどの特に魔女でもなんでもないごく普通の女性が魔女の疑いがある、という一切根拠のない不確かな通報のみで容易く処刑されたり、ユダヤ人であるという理由だけで虐殺された犠牲者もいるのです。人が人を法によって裁く、という行為は本当に世の中には必要なのかどうか?」
日叡「困りましたねぇ。私の役目とは亡くなった方の御冥福を祈り、死後に道に迷わぬように経を詠む事くらいしか出来ない無力な立場なのですよ。生きている間は決して人を恨まず恨まれず、仏の御心を持ってそんな分からず屋なんかほっとけ、なんつってね!まあ冗談はさておいて、問題は過失を許せるかどうか、事件などで残された遺族の心情如何によるのではないですか?」
弟刈兎「あくまでも人が亡くなった後の話ですか。しかし無差別テロなどで巻き添えを食って負傷したり亡くなっている人々が無数にいる現実を鑑みるとそういった危険因子はイレギュラー的な存在としてこの世から抹消すべき、凶悪犯罪に手を染めるような者は何らかの手違いでこの世に生を受けたので速やかに彼等が元々いた地獄界へ還してやるべきだ、との意見もあり、私個人では決断しきれずにいるのですよ。何らかのお知恵をお貸しいただけませんか?」
日叡「そうは言われてもねぇ。人、ってモノは実に不思議なモノでしてね。たとえば落雷の直撃を受けたり台風で家屋が崩れたりして命を失なったとしても、決してカミナリ様や風神様を死刑にしよう、とは言い出さないモノなのですよ。自然災害に対しては運が悪かった、と簡単に諦めるくせに、これが人災だと徹底的に責任追求するという、ある意味大自然と比較したちっぽけな人間のような弱者には容赦なく鬱憤を晴らそうとする傾向があるようなのですよ。人災も天災も結果としては人の命を奪い去る猛威には変わりありません。死人に口なしとは良く言ったモノで、亡くなった者は決して自分の不幸を嘆いたり悲しんだりはしません。したくとも出来ないんですけどね。人が不慮の事故などで亡くなった時、騒ぐのは決まって残された遺族の方々なのですよ。対岸の火事を気取った無責任な野次馬は、もし自分等が同様の災いにさらされたらたまったものじゃない!と言ってまた悪戯に大袈裟に騒ぎ立てるのですよ。」
弟刈兎「なるほど面白い事をおっしゃいます。やはり貴方に聞いて正解でした。命を奪った相手が自分と同等程度の力量しかない、だからこそ復讐可能と判断する、と。対して自然の猛威にはどうやら歯が立ちそうもない、だから運が悪かった、と簡単に諦められる、と。しかし人が人を意図的に殺害したり不具にした場合、自然災害とは別に悪意を追及するのは当然とは思われるのですが。」
日叡「だいたい人災、つまり犯罪を犯す者と言ってもあなた方が住んでいる街にあなた方と同じように暮らしている者の一部の者が悪さする訳ですからね。人が複数居れば何かにつけて否定したり反対意見を言ってくる者だっている訳だし不幸な事故を除いては確率的に言えば人災は必然的に発生するのではないですか?たとえば理想論ばかり押し付けてそれに従わない者を社会から排斥し、有識者の身勝手な都合とやらで悪者に仕立てあげたりしてませんか?社会の落ちこぼれだってあなた方と同じように息をして生きて生活している訳なのですよ。受験競争やスポーツでの対戦などで徹底的に敗れた者、一流企業の入社試験に落ちてやむ無く不本意な企業に入社した者などの不満や不公平感、劣等感はますます増幅して、それが犯罪に繋がっている、と考えられるのであれば、あなた方がみずから望んで街に犯罪者を生み出している、とも見てとれませんか?」
弟刈兎「!!ま、まさしくその通りです!犯罪者は生み出されるべくして生み出されている!競争社会に於いて敗れた敗者もまた生存を繋ぐべく生き延びねばならない!それに手を差しのべる寛容な心を持つ、という事が犯罪者を減らす唯一の道である、と仰る訳なのですね!目から鱗が落ちたような心境です!」
日叡「いやいやいや、そこまでは言ってないんだけどね。でも政治家を気取るような人も自分の理想論ばかり主張してその実、末端までは目端が届いてないような気もしますがね。上から目線でチカラずくで言う事聞かせよう、ったってなかなか上手くはいかないと思いますよ。押しても引いてもダメな人もいますしね。」
弟刈兎「実は私も順位付けや格付の格差社会が劣等感を増幅させ、それを面白くないと考える敗者が問題を起こすのではないか、との見解を持っていたのですよ。優等生ばかりが持て囃され贔屓され、そうでない者は向上心如何では一生スポットライトを浴びる事なく誰にも相手にもされないような世の中です。よしんば自分の長所を活かして知名度を上げて成功している稀有な者も中にはいますが、それもレアなケースですからね。誰しもが人生とは順風満帆とは行かず、思い通りに生きている者などホンのひと握り。やはり教育面から見直す必要性がある、という事でしょうか?死刑制度とはだいぶ質問がかけ離れてしまいましたが。」
日叡「私のところにいる信者の中にもいますよ。貧乏な家庭に生まれたがために学力は人並み以上にあるのに進学させてもらえずに必死で寝る間も惜しんで働いて家族を養って慎ましやかに暮らしているような人達が。社会への貢献の面でみるとそれがどれほど可能性を否定している事になるのやら。そのかたが順調に進学して、より一層勉学に専念して励める環境にさえ身を置けていさえすれば、今まで以上に社会貢献出来たのではないのか?と思わずにはいられないのですよ。実に勿体ない話です。豚に真珠とは良く言ったモノで、どれほど高価な財宝、ここでは個人の才能や能力の可能性を無下にドブに捨てさせてきたのか。チカラある者が一切の手加減抜きで富をかき集め、貧しき者をより一層貧しき者に仕立て上げて知識すら与えず奴隷のように扱ってきたツケを支払わされているのが過去から連面と続く人類の歴史、贖罪せねばならない大罪というモノなのかも知れません。」
弟刈兎「確かに、本人の自己責任、と身勝手に押し付けて言い分などは封殺してきた感は否めないですね。貧富の差は大昔からありますからね。生まれてくる場所や生まれてくる親はこども達は選べませんし。僧侶である貴方がおっしゃりたい事は、死刑制度云々以前に取り返しのつかない犯罪者というのは社会という法で雁字搦めの集団において、人が人を蔑ろにしてきた結果、吹きだまりのように凝り固まった悪意によって必然的に生み出される人災であり、早い話がルールを強要してきた立場の人々が作り上げた自業自得の大罪でもある、と。理想にそぐわないと排斥されたアウトローが思い通りにいかない社会に対して報復措置に出るのは半ば必然である、との見解で間違いないですか?人が人を意にそぐわぬからと言って排斥する事、その事それ自体がみずからの手で敢えて不必要な悪意を生み出し脅威を作り出す結果となり、即ち人災とは確率的に見て半ば必然的に生み出されるべくして生み出されるものである、と?」
日叡「う、うん、良くまとめたね。もしかしてそれ私に聞かなくても自分でもなんとなく分かってたんじゃないの?で、貴方は立場的にはどういった人物なのですか?」
弟刈兎「私ですか?私は税務署職員です。善良な市民の皆様方の納税によって支えられている身分なのです。そういった訳で、脱税は許しません!」
日叡「オメェこそ社会のダニじゃねぇか!何だよ偽善者の癖しやがって!分かっててそういう立場に立ってんなら無差別で刺し殺されたって文句言えねぇだろ!今からでもお経詠んでやるからとっととくたばっとけ!」
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