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03 感動の再会

03 感動の再会


 グッドバッドがブタフトッタの邸宅に戻ったのは昼過ぎのこと。

 昼食用の屋敷で、ちょうどブタフトッタが昼食の『ぱいたん汁』を堪能しおえたタイミングで、馳せ参じた。


「グッドグッド、ブタフトッタ様、グッドバッド、ただいま戻りました」


 するとブタフトッタは食後だというのに、飢えた豚のような声を出す。


「ブヒイッ!?(ベチョオッ) 待ちかねたデュフ!(ビチョオッ)」

 それで、ぱいたんはどこにいるデュフーーーーっ!?(ネチョォォォォーーーーーッ)」


 興奮のあまり全身から、糸を引く脂汗を垂らし始める。

 グッドバッドはそのあまりの醜悪さに、面食らった。


「ファッ!? わ、私はゴルドウルフに頸飾を授けに……!

 ご安心ください、その任務は華麗に成功を果たし……!」


「ブヒィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーッ!(ドベチャァァァァッ)

 そんなわかりきった報告は、いらないデュフ!(グチョッ)

 どこの世界に、勇者になれるのを拒むバカがいるんデュフか!(ブチョッ)」


「ぐ……グッドグッド! おっしゃるとおりでございます!

 で、ではさっそく、ゴルドウルフをここに……!」


 グッドバッドは後ろに控えていた男を呼び寄せようとする。

 その人影の首筋には、たしかにダイヤモンドの頸飾が光っていた。


 呼ばれたゴルドウルフは、うやうやしくブタフトッタの前に出ようとしたが、


「オッサンなんてどうでもいいデュフ! 引っ込むデュフ!(ベチャッ)

 それよりも、ぱいたんはどこかと聞いているんデュフっ!(ネチャア)」


「へっ?」


 ブタフトッタとグッドバッド、ふたりの間には決定的な齟齬があった。


 ブタフトッタは、オッサンよりもホーリードール三姉妹、とりわけパインパックがメインであった。

 そしてオッサンを抱き込むことができれば、三姉妹も手に入れたも同然だと思っていたのだ。


 その読みは、勇者にしては鋭いといっていい。


 たしかにゴルドウルフと三姉妹は、パンとバターのような関係で、切っても切り離せない。

 パンのほうはどう思っているかどうかはわからないが、バターのほうはベッタリだからだ。


 ブタフトッタにとっては、ゴルドウルフと三姉妹は柿の種とピーナッツの関係。

 ピーナッツは単体で食することはあっても、ピーナッツなしの柿の種はありえない。


 そしてブタフトッタは、柿の種でピーナッツばかり食べるタイプの人間であった。


 しばらく噛み合わないやりとりをして、グッドバッドはようやくブタフトッタの真意を察する。


「ぐ……グッドグッド! もちろん、ホーリードールの聖女様たちのことも忘れてはおりません!

 勇者様に仕える執事でもっとも有能とされているこのグッドバッドに、ミスなどないのですから!

 もちろんゴルドウルフのあとに、この屋敷に移り住む手筈になっております!」


 グッドバッドは口からでまかせを言った。


「ブヒイッ!(ブチュッ) それで、いつになるんデュフ!?(ムチュッ)」


「は……はい! なにぶん高名な方々でですので、いろいろ準備がありまして……。

 えーっと、このグッドバッドの見立てでは、三ヶ月後くらいには……」


「ブヒィィィーーーッ!!(ドベシャアッ) 遅い、遅すぎるデュフ!!(ブチョオッ)」


 全身の脂肪をブヨブヨ波打たせ、ブチョブチョと音をたてつつ、ブタフトッタは命じる。


「1週間! 1週間デュフ! それまでに、ぱいたんをデュフの所まで連れてくるんデュフ!

 手を尽して、ぱいたんのお引っ越しを手伝ってあげるんデュフ!

 それ以上遅れるようなことがあったら、お前たちの一族は滅びるんデュフゥゥゥーーーーっ!!」


「はっ……ははぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 ゴルドウルフ問題を解決したばかりのグッドバッドに、新たなる難題が降りかかる。

 その解決手段は、彼の頭の中にはすでにあった。


 いや正確には、そうせざるを得ない、と言ったほうが正しいであろうか。


 なにはともあれ、『頸飾の授与』の任務報告を終えたグッドバッドの首は、皮一枚で繋がった。

 ブタフトッタの屋敷を後にした彼は、つぎにボンクラーノの屋敷へと向かう。


 屋敷の敷地内は広大なので、馬車を使って移動した。


 ボンクラーノのそばにはいつもシュル・ボンコスがいる。

 グッドバトラー家とボンコス家は、同じ勇者に仕える一族どうしで、ライバル関係にあった。


 そのため、グッドバッドがボンクラーノに近づこうとするたび、いつもシュルボンコスから嫌がらせを受けていたのだが……。

 今日にかぎっては、ボンクラーノの屋敷にシュル・ボンコスの姿はなかった。


 メイドに尋ねたところ、出掛けているという。


 千載一遇のチャンスとばかりに、グッドバッドはボンクラーノの部屋の扉を叩いた。


「失礼します、ボンクラーノ様、グッドバッドでございます」


 部屋の中から、今にも死にそうな声が返ってくる。


「……あっちいけボン……。

 今はオッサン以外とは、誰とも会いたくないボン……。オッサン……オッサン……」


「そのオッサン、ゴルドウルフを連れてまいりました」


 次の瞬間、部屋の中からガバッと飛び起きるような音がした。


「ほ……本当かボン!? なら、入っていいボン!」


 「失礼します」と部屋に入るグッドバッド。

 ボンクラーノは待ちきれない様子でベッドから飛び出し、グッドバッドを突き飛ばして廊下に飛び出した。


 そしてそこにいた人物に、歓喜の涙を浮かべる。


「おっ……オッサン! オッサンオッサンオッサン!

 会いたかったボォォーーーーーンッ!」


 ゴルドウルフは膝を折って両手を広げ、走り寄ってくるボンクラーノを迎え入れた。


「ボンクラーノ様、ご無沙汰しておりましたでゴルフ。

 ゴルドウルフ・スラムドッグ、ただいまあなた様の元に参上しましたでゴルフ」


「うわああああんっ! オッサァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!」


 ……ガシィィィィィィーーーーーーーーーーンッ!!


 生き別れた親子の再会のように、きつくきつく抱き合うふたり。

 それは、見る者すべてが涙するような光景であった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ……ブタフトッタさん、かわりにストロードール家の三女でどうでしょう? (;^ω^)
[良い点] どこのパチモンのオッサンを連れてきた!(笑) さてバッド まだ こんなところで こりずに うろちょろ油を売ってしてやがったか! いや もう こりたからパチモンを用意したのかな!(ニヤリ) …
[気になる点] 皆さんの予想通りの偽者なのでしょうが、実は、、、これも金狼の壮大な仕掛けの一部だったりすると、嬉しいなぁw
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