82 ローンウルフ4-21
新連載、開始しました!
『貧乏神をなすりつけられ追放されました しかしこの貧乏神、美少女でチートスキル持ち 今更返してくれと言っても遅いですよ』
美少女貧乏神とイチャイチャしながらざまぁするお話です。
こちらのお話が面白いと思った方なら楽しんでいただけると思いますので、ぜひ読んでみてください!
あとがきの下に、小説へのリンクがあります。
セブンルクスのゴージャスマートでは、ふたりの巨人がオロオロしていた。
「うっひゃっひゃっひゃっひゃっ!
ノータッチちゃんの肝いりで高級路線に変えた例の店、とんでもない赤字だねぇ!
ノータッチちゃんはデータに頼れば完璧だって言ってたのに、どういうことなのかなぁ?」
「で……データの上では完璧なプランだったんですよ。
でもまさか、直射日光などという予想外の要素があるだなんて……!」
「うっひゃっひゃっひゃっひゃっ! そうだったんだぁ!
でもいずれにしても、あの店はもう潰すしかないねぇ!
あの店のおかげでもう、シェアを4割も落としちゃってるんだからさぁ!」
「ちょ、ちょっと待ってください、潰すには早すぎます」
「あれあれぇ?
あの店はノータッチちゃんがいつも言ってる、『撤退ライン』をとっくに越しちゃってるんだよぉ?
いつもだったらいくら俺の部下たちが言っても、バッサリ切り捨ててたじゃない!」
「と、とにかく、潰すのは待ってください」
「うっひゃっひゃっひゃっひゃっ!
そんなに出店成功率100%が大切なんだぁ!
まぁいーけど、あの店のケツはノータッチちゃんのほうで持ってよね!」
「わ……わかっていますよ」
ノータッチは口癖である『ノータッチ』を封じられ、不本意そうに歯噛みをする。
「うっひゃっひゃっひゃっひゃっ! んじゃ、よろしくぅ!
で、挽回策はなにを考えてるのぉ?」
「あの店舗の運営にかかる費用は極力抑え、新規出店で補います」
「ええっ!? あの店を盛り返すんじゃなくて、別の店を出すつもりなのぉ!?
うっひゃっひゃっひゃっひゃっ!
赤字店舗をなんとかするためにテコ入れするんじゃなくて、別の店を出すだなんて聞いたことないよ!」
「しょうがないでしょう。それに私は『新規開拓』担当なのですから、開拓の失敗は、開拓で取り戻します。
次の新規店舗の目星はもう付けてあります」
「今からさっそくそこに視察に行こうってわけね、まぁがんばって!
うっひゃっひゃっひゃっひゃっ!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ノータッチが次に目を付けたのは中規模の店舗であった。
規模としては前回の3階建ての店舗には劣るものの、交通量調査によると同等以上の集客能力のある立地にある。
そして今回も近隣に2箇所の店舗候補があったのだが、またしても現れたのだ。
例の、野良犬どもがっ……!
まるでヘロインを嗅ぎつけた麻薬犬のようにっ……!
「あ! ノータッチ様、ご無沙汰しております!
この前は物件を譲っていただき、ありがとうございます!
さすがノータッチ様が選んでいた物件だけあって、お店のほうは連日大盛況です!」
出会って早々、人なつっこく話しかけてくるオーナーに、ノータッチは額の青筋を隠すのに必死であった。
「そ……そうですか。それはよかったです。
『のらいぬや』さんは今日も新規開店の提案に?」
「はい! ローン……いや、うちの社員がいい物件を見つけてきてくれたんです!
ノータッチ様も目を付けられたということは、ものすごくいい物件ようですね!」
『のらいぬや』のオーナーはニッコニコであった。
その無邪気な笑顔が、ノータッチの中でも燃え上がるライバル心に、さらに火を付ける。
――この私に勝ったつもりでいるようですが、甘いですね……!
前回は直射日光という予想外の要素に敗れたに過ぎません……!
そのような偶然は、二度は起きません……!
この出店対決で、前回の借りを倍にして返してあげましょう……!
ノータッチは、慢心にもほどがある佐々木小次郎のような思考をしていた。
計算ずくで陽光を背にした宮本武蔵に対し、あれは偶然だと思っていたのだ。
「もしかして狙っていたのかも」とふと思うことはあったが、認めるわけにはいなかった。
なぜならば奇跡的な偶然によって敗れたと思わなければ、正気を保てなかったからだ。
しかし彼は前回の敗北を糧とし、今回はさらなるデータを部下に収集させた。
交通量のデータに加え、道行く人の性別や年齢、職業などの詳細なものを。
さらには過去10年間の天候や日照、最高気温や最低気温。
地震などの天災から、火事や犯罪などの人災の発生履歴に至るまで、徹底的に。
今回のふたつの空き物件を、仮に最初に見たほうをA店、あとに見たほうをB店としよう。
それまでのノータッチのデータ分析としては、A店のほうがわずかに優位であった。
しかしさらに深く突っ込んだデータ分析では、B店のほうが圧倒的に優位であることがわかった。
店の前を通り過ぎる冒険者の数が、段違いであったのだ。
そうなればもうB店一択なのだが、念には念を入れて現地の視察へと赴く。
そして邂逅したのだ。
野良犬どもと……!
それからノータッチは、表面上は和やかに、野良犬どもとふたつの店舗の視察を行なった。
前回と同じくどちらも新築物件で、面積は同じ。
唯一の違いとしては、A店は店の入り口が右側にあるのに対し、B店は左側にあった。
あとは実際に店舗内を見てみた印象としては、これといった差は感じられない。
ノータッチは確信した。
――これは間違いなく、B店ですね……!
ここに出店すれば、絶対に成功する……!
失敗する要素など、なにひとつありませんっ……!
すべてはデータが証明してくれています……!
今まで以上のデータ分析を行なっていたので、ノータッチは自信満々。
もはや偶然の入り込む余地はないと、余裕を取り戻す。
「『のらいぬや』さんは、どっちの店が良いと思いましたか?」
するとオーナーは、ハツラツとした様子で答えた。
「はい! この店も前と同じで、見た瞬間に(ローンウルフさんが)A店しかないって!」
ノータッチは会心の笑みを浮かべる。
――データもなしで見た目の印象だけで決めるとは……!
やはり前回負けたのは、奇跡のような偶然だったのだ……!
今度こそ、勝った……!
嗚呼……!
またしても、またしても……!
彼は、一目すらくれていない……!
オーナーの後ろに立つ、背後霊のようなオッサンに……!
もしここがステージで、ノータッチがコメディアンだったなら……。
今頃はきっと、子供たちの絶叫に包まれていたに違いないっ……!
「うしろー! うしろー!」と……!
新連載、開始しました!
『貧乏神をなすりつけられ追放されました しかしこの貧乏神、美少女でチートスキル持ち 今更返してくれと言っても遅いですよ』
美少女貧乏神とイチャイチャしながらざまぁするお話です。
こちらのお話が面白いと思った方なら楽しんでいただけると思いますので、ぜひ読んでみてください!
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